住宅ローンの審査
持病があると住宅ローンを組めない?健康状態は影響する?

持病があると住宅ローンを組めない?健康状態は影響する?

住宅ローンを組むためには、団体信用生命保険(団信)への加入が必須条件となっていることが一般的です。団信に入れるかどうかには、健康状態が影響します。そのため持病などがあると、住宅ローンを組めない場合があります。

このページでは、団信とはなんなのか、どんな病気だと団信に加入できず住宅ローンを組めないのかについて解説します。また、団信に入れない場合にも利用可能な住宅ローンについても説明します。

団体信用生命保険ってどんなものなの?

団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が「死亡」したときや「高度障害」を負ったときに使える保険です。ただし団信の種類によっては、死亡と高度障害だけではなく、がんなどの3大疾病までカバーしている団信や、さらに広い範囲の病気に対応しているものもあります。

「高度障害」とは、怪我や病気によって、体の機能が極度に低下した状態をあらわします。具体的には、両目の視力や言語機能などを完全に失ったり、寝たきりになったりした場合に高度障害と認定されます。

ほとんどの金融機関で、住宅ローンと団信はセットになっています。そのため、団信に加入できなければ、ローン契約も難しくなります。

団信に加入していれば、契約者が死亡した時などに残っている債務は、保険金によって全額支払われます。そのため、遺族が住宅ローンで苦しむようなことはありません。

団信さえあれば、万が一のときも安心なのかしら?
いえ、団信が適用されるのは、あくまで死亡・高度障害状態になった場合だけです。怪我や病気で働けなくなったとしても補償は受けられませんから、団信さえあれば絶対に安心とは言えませんね。

ちなみに団信の保険料については、住宅ローンの金利に含まれているのが普通です。そのため、別途料金がかかるということはありません。

団信についてもっと詳しく知りたい方はコチラの記事へ

団信の加入条件は?

団信に入るためには、健康状態が重要になります。そのため、持病がある場合など、団信に加入できない事があります。

団信への加入の申込みをする場合、「告知書」を提出することになっています。

「告知書」は保険会社が用意する書類で、現在の健康状態や、過去の病歴などについての質問が記載されています。告知書に虚偽の記載をすると、保険金がおりない場合がありますので、病気などを隠さず、正確に事実を書かなければいけません。

告知書の質問内容は?うつ病だと住宅ローンは無理?

告知書の内容は、保険会社によって異なりますが、概ね以下の3点について質問されます。

  • 3ヶ月以内に医師の治療、投薬を受けた事があるかどうか。
  • 3年以内に指定された病気で、手術または2周間以上の治療、投薬を受けた事があるかどうか。
  • 視力、聴力、言語機能、四肢、背骨に障害や欠損があるかどうか。

「指定された病気」については、保険会社ごとに細かい違いがあります。主に以下のような病気が問題になります。

  • 狭心症、心筋梗塞、心筋症、不整脈、心臓弁膜症、先天性心臓病。
  • 脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血、脳動脈硬化症。
  • 高血圧症、糖尿病、膠原病、リウマチ、貧血症、紫斑病。
  • 慢性気管支炎、ぜんそく、肺結核、気管支拡張症、肺気腫。
  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、膵臓炎、クローン病。
  • 肝炎、肝硬変、肝機能障害。
  • 腎炎、ネフローゼ、腎不全。
  • 緑内障、網膜の病気、角膜の病気。
  • ガン、肉腫、白血病、腫瘍、ポリープ。
  • 精神病、神経症、統合失調症、てんかん、うつ病、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症。
  • 子宮筋腫、子宮内膜症、乳腺症、卵巣嚢腫。

ただし、3年以内にこれらの病気の手術歴や治療歴があったとしても、必ずしも団信加入が断られるとは限りません。告知書の内容をもとに保険会社が判断し、問題ないとされれば、たとえ持病があっても団信に加入できます。

現在も治療や投薬続けている場合でも、仕事に支障がなければ審査に通る可能性がありますので、その点をアピールしておきましょう。

また質問されているのは3年以内の病気についてだけですので、それ以前に手術などをしていたとしても、その事について告知する必要はありません。

場合によっては健康診断証明書が必要

通常は告知書だけを提出すればよいのですが、場合によっては「健康診断証明書」が必要になる事があります。

一つはローンが高額(5000万円以上)の時です。普通の保険でも、保険額が高くなると、より正確な情報が求められ健康診断書が必要になります。団信の場合も同様に、保険金が高額になると簡単な告知書だけでは足りなくなるわけです。

他に特約がある団信に加入する場合も、健康診断書が求められるケースがあります。

団信には、死亡、高度障害以外に、3大疾病(ガン、急性心筋梗塞、脳卒中)まで補償するものや、7大疾病(3大疾病+高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変)まで補償するものなどがあります。

オプションが多い団信ほど審査も厳しくなりますので、健康診断書の提出が必要になる事もあります。もちろん特約付きの団信すべてで健康診断書が必要なわけではなく、保険会社ごとに違いがあります。

※団信の特約について詳しく解説した記事がコチラにあります。


団信がなくても住宅ローン契約をする方法もある!

住宅ローンと団信はセットが基本ですが、団信に加入できなくても住宅ローンを組む方法もあります。

住宅金融支援機構のフラット35なら、団信加入が義務付けられていません。

ただしフラット35だと団信が使えない、というわけではありません。任意で機構団体信用生命保険に加入することが可能です。

以前は団信に加入すると、別途保険料が発生していましたが、平成29年10月1日以後の契約については、団信特約料が不要になりました。

これはフラット35で団信に入らない人が損をする、ということではありません。健康上の理由などにより団信加入を選ばなかった場合は、金利が0.2%ダウンします。

※フラット35の特集記事はコチラになります。

団信に加入しないで金利が安くなるなら、フラット35を選んだほうがお得ですね!
う~ん、万が一の事を考えると保険無しはおすすめできませんよ。団信に入らないなら、代わりの保険に加入しておくべきでしょうね。
じゃあ、フラット35で団信無しを選ぶのは、病気で仕方ない時だけってことですね……。
あ、それはそうともいい切れません。一般住宅ローン+団信よりも、フラット35+一般生命保険の方が得になる場合も考えられますから。

団信と生命保険のどっちが得?

団信は、死亡時と高度障害時にしか保険金がおりません。その点、生命保険なら、病気や怪我などにも対応することが可能です。

団信にも3大疾病などの特約を追加した商品がありますが、細かい対応力では一般の生命保険の方が上です。

また団信の場合は、残ったローンの額をゼロにするだけです。生命保険なら、ローン残高以上の保険金を受け取れる可能性もあります。

ローンを払い始めてすぐに団信を使う場合は、ローン残高に比例して高額な保険金になりますが、ローンの終わり間際では少ない保険金しか支払われない事になります。

単純化して言えば、ローン期間の前半に保険が下りる場合は団信が有利、ローン期間の後半に保険が下りる場合は一般生命保険が有利ということになります。

通常、若いときよりも年を取ってからのほうが問題が起こる可能性が高いため、団信より一般生命保険の方がメリットが大きい事も多いでしょう。
なるほど~。まだ若いから生命保険にしようかなぁ~。
注意点としては団信に相当する額の生命保険を選んだ場合、普通は団信よりも生命保険の方が保険料が高くなります。保険金だけでなく、保険料などの条件も考えて考慮する必要があるでしょう。

ワイド団信を使えば糖尿病でも住宅ローンを組める事も

「ワイド団信」とは、健康状態の問題で通常の団信に入れない人に向けた団信です。

糖尿病や心筋梗塞、脳卒中、うつ病などだと団信加入が困難ですが、ワイド団信なら加入できる可能性があります。もちろん、保険会社による審査がありますので、必ず加入できるというわけではありません。

便利なワイド団信ですが、保険料が通常の団信よりも高くなります。ですから、たとえ持病があったとしても、重病でない限りは、普通の団信に入れないか、先に試したほうが良いでしょう。ワイド団信を頼むのは、その後でも遅くはありません。

持病があると住宅ローン契約に不利だが方法はある

住宅ローンを組むには団信が必須のため、持病があるとローン契約ができない事があります。

病気によって団信に加入できない時は、フラット35を検討してみましょう。団信加入が任意のため、持病があってもローンを組める可能性があります。

また、保険料は高くなってしまいますが、加入条件がゆるいワイド団信に入るという選択肢もあります。いずれにせよ、なんらかの保険には入っておいたほうが無難です。

監修者メッセージ

生命保険の加入ができず住宅ローンの審査がとおらないのはよくあることです。

その場合、団信が任意加入のフラット35などを検討するのですが、持病によっては団信以外の通常の生命保険の加入もできないことがあります。

万一のことを考えると、住宅購入を検討するもっと前の時期に、生命保険に加入しておくことが大切なようです。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。