自営業者でも住宅ローン審査に通る5つのコツ
自営業だからといって、住宅ローンが組めないわけではありません。所得が少ない個人事業主の方でも、住宅ローンを組めている人は大勢います。
しかしサラリーマンとくらべると、自営業者の住宅ローン審査の方が厳しくなるというのは事実です。住宅ローンは返済が長期に渡るため、銀行はなによりも収入の安定性を求めるためです。
このページでは、自営業者の方が審査で注意したいポイントについて説明していきます。また、住宅ローン審査を通すためにやっておきたい事についても解説します。
自営業者の住宅ローン審査で注意したい4点
自営業の方が住宅ローンに挑む場合、以下の4点について注意が必要です。
- 年収ではなく、「所得」で審査される。
- 事務所兼住宅の場合には条件がある。
- 過去3年分の確定申告書が必要。
- 減価償却などを経費とみなさない銀行もある。
自営業の住宅ローン審査は年収ではなく所得で行われる
会社員が住宅ローン審査に挑む場合、「額面年収(手当や残業代、賞与などを含んだ金額)」が審査材料になります。
しかし自営業者の場合、年収(売上)から経費を引いた「所得」が審査材料になってしまいます。
さまざまな出費を経費として計上できるのが、自営業者の大きなメリットです。
しかし経費の分だけ所得が減ってしまうため、会社員よりも借りられる住宅ローンの金額が少なくなり、審査も厳しくなってしまいます。
赤字がある場合の自営業者の住宅ローン審査はどうなる?
会社員の場合は「継続的な収入」という面で安定した返済が見込まれるため、直近の源泉徴収票だけが審査基準になります。しかし自営業者の場合は業績が収入に直結するため、過去3年分の確定申告書の提出が求められるのが普通です。
確定申告書の情報の取扱いについては、銀行ごとに差がありますが、以下のどちらかの方法で審査をしている銀行が大多数です。
- 過去3年間のうち、最も所得が低い年を審査材料とする。
- 3年間の平均と直近の所得を比べ、低い方を審査材料とする。
3年間のうち、最も収入が低い年を審査材料にする銀行の場合、「1期でも赤字がある」「税金や保険金の滞納がある」と即アウトになります。
設備投資などで赤字になっている場合なら、うまく説明できればローンに通る可能性もなくはありません。しかし基本的には、理由にかかわらず、赤字があると審査で落ちると考えておいてください。
平均所得で判断してくれる銀行の場合は、赤字があっても審査に通る可能性はあります。しかしこちらも、他の条件が相当良くない限りは、かなり厳しいというのが現実です。
事務所兼住宅は面積割合がポイント
自営業者の場合、事務所や店舗と住宅を併用するケースがよくあります。しかし事務所兼住宅で住宅ローンに申し込む場合は注意が必要です。
家の床面積のうち、住宅部分が「50%以上」はないといけません。これより床面積が狭いと、住宅ローンの融資対象として認めてもらえません。
ただし住宅部分が50%未満でも、住宅部分の費用だけを住宅ローンでまかなうことは可能です。
ちなみに、住宅部分の床面積50%以上は、住宅ローン控除(ローン残高の1%が所得税から控除される制度)の条件のひとつのため、必ず守りましょう。
減価償却は経費としない場合も
「減価償却」は毎年費用として計上されますが、じっさいにお金が出ていくわけではありません。
そのため銀行によっては、減価償却を経費とみなさず、収入から減らさないで審査してくれることもあります。
同様に、「青色申告特別控除」や「家族への専従者給与」なども、住宅ローンを使うため経費として差し引かずに、所得の計算をしてくれる銀行もあります。
この場合、所得が増えるために、住宅ローンで借りられる上限額も増加します。ただし、こうした計算をしてくれる銀行はごく一部で、大多数の銀行では普通に経費として計算されます。
自営業者の住宅ローン審査の5つの攻略法
自営業者が住宅ローン審査に挑む場合、以下のような5つの攻略法があります。
- 経費を減らし所得を増やす。
- 修正申告をする。
- 他の借り入れを完済する。
- 頭金を増やす。
- フラット35を利用する。
経費を減らし所得を増やす
自営業の場合、ある程度は経費を自分でコントロールできるはずです。それを利用して、住宅ローン審査に通りやすくする方法があります。
経費をできるだけ減らして、所得を増やすのです。所得が増えれば、借り入れ上限額が増え、住宅ローン審査にも通りやすくなります。
もちろん、経費が減ればその分だけ、払わなくてはいけない税金も増えてしまいます。
しかしずっと経費を減らさなくてはいけないわけではありません。住宅ローン審査で見られる「3年間の分」だけ経費を抑えれば良いわけです。
家を買うのを3年後に設定し、それに向けて経費の設定をおこなうのが賢い方法でしょう。この場合、購入する物件価格も想定し、必要になるローンの額に合わせて経費を設定するとより効果的です。
所得が多いほうが住宅ローン審査で有利だとはいえ、必要以上に経費を減らして納税額を増やすのは損です。
修正申告をするという手段もある
税金対策で売上や所得を低く申告している場合は、「修正申告」をするという手もあります。修正申告で所得が増えれば、借り入れ上限額も増え、審査で有利になります。
しかし修正申告は、それほどオススメの方法というわけではありません。修正申告をしたという事実は、金融機関側に把握されてしまいますので、怪しまれる危険性があります。
特に3年分すべてで修正申告をおこなったりしてしまうと、逆効果になる可能性が高いでしょう。
他の借り入れを完済する
他の借り入れがあると、住宅ローンで借りられる上限額が減り、審査落ちしやすくなります。そのため、可能なら他のローンを完済してから住宅ローンを申し込んだほうが良いでしょう。
自営業者の場合、事業用に借りたお金も、個人用の借り入れと同様に審査でのマイナス材料になります。
住宅ローンを借りようと考えているなら、新たに事業用の借り入れをするのは控えるべきです。
住宅ローンの申し込みを受けた金融機関はこうした信用情報機関に借り入れ状況の照会をするため、借金をしていることを隠すことはできません。
頭金が増えれば審査に通りやすい
返済負担率が高いほど、住宅ローン審査に落ちる可能性が高まります。収入が多いほど、返済負担率が高くても審査に通りやすくなりますが、それでも限界があります。
頭金を増やせば、その分だけ借り入れる額が減り、ローンの返済負担率が低下します。そのため、頭金を増やすというのは審査を有利に進めるために有効な手段となります。
また、多額の頭金を用意できるということは、それだけ貯蓄があるということでもあります。そのため、無駄遣いをせずにお金を貯められる人だとみなされ、心証が良くなります。
自営業の味方フラット35
3年間も準備するのは面倒だ、という人には「フラット35」が心強い味方となります。
フラット35で提出する確定申告書は、直近の1年分だけでオーケーです。ですから、その年だけ調整して所得を増やしておけば、審査を有利に進められます。
住宅ローンの返済は経費に含められるの?
自営業の方の場合、住宅ローンを借りた後の返済について気になっている人も多いのではないでしょうか。住宅ローンの返済を経費にできるなら、大いに助かります。
住宅ローンの元本の返済については、経費として計上できません。もともと借入金は経費にできませんので、当然だと言えます。
しかし、住宅ローンの利息分については経費として計上可能です。
ただし、購入した物件を業務で使用していることが条件になります。
また、利息のすべてを経費として計上可能なわけではなく、仕事で使っている比率に応じた分だけを経費にできます。使用比率は、床面積をもとに計算します。
自営業者の住宅ローンは計画性を持って取り組もう
自営業者は経費を差し引いた「所得」が審査基準になりますから、住宅ローンを借りる前に経費を減らして所得を増やしておくのが重要です。
「自営業ではローンは組めない」という噂を耳にしますが、ローンを組む目的でしっかりと準備をすれば十分に可能です。
ただ経費・所得などの調整に気を配る必要があるため、正社員に比べるとハードルが高くなることは事実です。
一度専門家に相談して、借り入れのための上手な計画を立てることをおすすめします。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。