国民年金

国民年金だと扶養に入ることは無理って本当?扶養に入る条件を解説

「結婚を機に配偶者の扶養に入ろうかなと思っている」このように考える方は実に多いです。

扶養には、「税法上」と「社会保険」の2種類があるのはご存知でしょうか?

扶養に関して「103万円の壁」や「130万円の壁」などを、聞いたことがある人もいるでしょう。これらは扶養の種類によって変わります。

さらに社会保険の扶養では、国民年金と厚生年金で大きく制度が異なっている点も、話を複雑でわかりにくくしているかもしれません。

そこで今回は配偶者の扶養に入るかどうかを悩んでいるあなたのために、扶養と年金の兼ね合いや必要な手続きについて、わかりやすくお伝えしたいと思います。

こんなにも違うの?国民年金と厚生年金のシステムの違いを解説

国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人は、全員国民年金に加入しなければいけません。

国民年金には、次のような加入者の違いがあります。

加入者の違い
第1号被保険者 自営業・フリーター・無職・学生など
第2号被保険者 会社員・公務員など
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養されている配偶者

おおまかに説明すると、第1号被保険者は国民年金に、第2号被保険者は国民年金に加えて厚生年金に加入することになります。

ということで、まずは国民年金と厚生年金の違いについて見ていきましょう。

国民年金は自営業者やフリーター・無職・学生などが加入する年金

第1号被保険者となる自営業者やフリーター・無職・学生などの方は、国民年金にのみ加入することになります。

国民年金の特徴はこちらです。

国民年金の特徴
  • 将来は老齢基礎年金のみもらえる(1階建て)
  • 国民年金保険料は一律
  • 保険料は本人もしくは世帯主(や配偶者)が払う
つまり、オイラのような自営業者が対象ってことですね!国民年金、ちゃんと払っていますよー!
ダイプーさんは国民年金の第1号被保険者でしたね!これからも保険料の納付は忘れずに行ってください。

そう、日本では皆保険の制度をとっているため年金保険料を払うのは義務。たとえ無職となっても脱退することはできません。

収入がなくて保険料を払うのが厳しいという場合には、免除や猶予の申請が可能です。

決して延滞することがないよう、忘れずに申請するようにしましょう。

次の記事では、保険料の納付が厳しい場合の対処法や、将来もらえる年金を増やす方法などについて解説しています。よろしければご覧ください。

厚生年金は会社員や公務員・パートの一部の方が加入する年金

第2号被保険者となる会社員や公務員の方は、国民年金に加えて厚生年金にも加入することになります。

厚生年金の特徴はこちらです。

厚生年金の特徴
  • 将来は老齢基礎年金+老齢厚生年金をもらえる(2階建て)
  • 厚生年金保険料は給料に比例して決まる
  • 保険料は給料から差し引かれる形で払う

なお公務員の共済年金は、2015年10月1日より厚生年金に一元化されています。

また2016年10月1日より、一定の条件を満たしたパート・アルバイトの方は厚生年金に加入できるようになりました。

そのため、今までは配偶者の扶養でいた方も厚生年金の加入対象者となる可能性があります。

このまま扶養でいた方がいいのか?それとも自分で厚生年金に加入した方がいいのか?で悩んでいる方は、ぜひこちらの記事をお読みください。

国民年金には扶養の制度が存在しない?配偶者の扶養に入るための条件

自分で年金に入った方が将来もらえる年金は増えるけど、毎月の手取り額が減るなら扶養に入った方がお得なのでは?と考える方もいるはず。

そこで、年金制度における「配偶者の扶養に入る条件」について解説したいと思います。

国民年金の場合:扶養の制度が存在しない

配偶者の扶養に入る条件を考える前に、知っておかねばならないことがあります。

実は国民年金の場合、扶養の制度が存在しません。

そのため配偶者が第1被保険者で国民年金に加入している場合、その妻(夫)は自分で国民年金(または厚生年金)に加入しなければいけません。

うちの嫁さんも国民年金に加入しているぞ。サラリーマンの奥さんで扶養に入っている人は保険料納めなくてもいいらしいから、正直うらやましいなぁ。
そうだったのね。てっきり国民年金でも扶養に入れるものだと、思っていました・・・

配偶者が国民年金の第1号被保険者である場合、自分も国民年金の第1号被保険者となるか、もしくは第2号被保険者となって厚生年金に加入する必要があります。

ちなみに、子供なら扶養に入ることができるのか?と思うかもしれませんが、配偶者の場合と同様に国民年金の扶養に入ることはできません。

もし子供が学生等で収入がなく、国民年金の保険料を払うのが困難な状況な場合。

「学生納付特例制度」によって保険料の猶予を申請できます。

もしこの制度を利用する場合は、保険料の未納期間を作らないために必ず手続きするようにしましょう。

厚生年金の場合:条件を満たせば配偶者の扶養に入ることは可能

配偶者が厚生年金に加入している(第2号被保険者)場合、条件を満たせば扶養に入ることが可能です。

扶養に入ると国民年金の第3号被保険者となり、保険料を個別に負担することなく国民年金に加入できます。

ただし、被扶養者の認定を受ける必要があるのでご注意ください。

扶養に入るための条件(厚生年金)
  • 配偶者と生計維持関係にあること
  • 収入要件を満たしていること

まず、被保険者である配偶者により生計を維持されていることの証明が必要です。

ちなみに内縁関係にある場合でも、住民票等により証明できれば生計維持関係にあると証明することが可能です。

また、一定の収入以下であることの証明も必要です。

いわゆる103万の壁よね?あ、あれ?130万の壁?分からなくなってきてしまいました。
年金の場合は「130万円の壁」の方ですね!

この130万円というのは、過去の収入ではありません。被扶養者としての認定を受ける日における年間の見込み額です。

例えば被扶養者としての認定を受ける方がパートなどの給与所得者である場合、月額108,333円以下であることが条件となります。

この金額を超えた給与が続くと、130万円を超える「見込み」ということで認定が取り消しとなる場合がありますのでご注意ください。

扶養から外れる?第2号被保険者が65歳以上になった場合

国民年金の加入期間は原則、20歳以上60歳未満です。支給は65歳から始まります。

では、第2号被保険者である厚生年金の加入者が65歳を超えると、扶養に入っていた配偶者(第3号被保険者)はどうなるのでしょうか?

答えは「配偶者自身が60歳になるまで、第1被保険者として国民年金保険料を収める必要がある」です。

第1号被保険者への切り替えには手続きが必要です。詳しくは最寄りの年金事務所へ問い合わせてみてください。

【年金】配偶者の扶養に入る場合に必要な手続きや書類を解説します

それでは、配偶者の扶養に入る場合の必要な手続きや用意すべき書類についてみてみましょう。

厚生年金の加入者(第2号被保険者)である夫(または妻)の扶養に入る場合、まずは「被扶養者」としての認定を受ける必要があります。

ちなみに認定を受けるタイミングってどんな時があるんスかね?
結婚したタイミングや、仕事を退職した場合などが当てはまります。

被扶養者としての認定申請は、扶養者の事業主(会社など)へ必要な書類を提出するだけで完了します。

なんだ!楽勝ッスね!手続きとかってもっと難しいのかと思いましたよ。
年金の扶養とともに健康保険の扶養の手続きも同時に行うこともあるので、忘れずに手続きするようにしたいものですね。

また、扶養に入る場合の手続きは忘れないとしても、その後、被扶養者の収入が上がるなどの理由により扶養を外れる手続きをしなければならない場合もあります。

こちらは特に忘れやすいケースとなりますので注意しましょう。

必要書類を解説!被扶養者によっては必要な書類が異なることも

扶養の認定を受ける際に扶養者の事業主へ提出する書類は次のとおりです。

扶養に申請に必要な書類リスト
  • 国民年金第3号被保険者関係届
  • 続柄を証明するための書類
  • 収入要件を確認するための書類

健康保険の扶養も同時に申請する場合、「国民年金第3号被保険者関係届」ではなく「被扶養者異動届」を兼ねている書類を提出します。

ただし健康保険は、以前加入していた健康保険を任意継続するために扶養の申請をしないというケースもあります。その場合には、国民年金第3号被保険者関係届のみを提出します。

また、その他には続柄や収入を証明するための書類が必要となりますが、どういった書類が必要なのかは被扶養者のケースによっても異なります。

そのため、必要な書類は事前に確認してから提出するようにしてください。

国民年金には扶養が存在しない!厚生年金なら扶養に入れる可能性あり

ひとことで「夫(妻)の扶養に入る」といっても、年金の制度にいたっては国民年金にはそもそも扶養の概念が存在しません。

そのため配偶者が第1号被保険者の場合は、扶養には入れませんのでご自分で国民年金の第1号被保険者となるなり、厚生年金へ加入(第2号被保険者)となる必要があります。

また、配偶者が第2号被保険者の場合は扶養に入ることが可能です。

しかし、収入が多いなどの理由により、扶養の認定がおりないことも。結婚したから必ず配偶者の扶養に入れるとは言い切れないため、扶養に入る詳しい要件を確認しておきましょう。

当サイトでは、年金や扶養にまつわる詳しい解説記事を用意しています。ぜひ参考にされてみてくださいね。

※掲載の情報は2019年12月現在のものです。
監修者メッセージ

配偶者が第1号被保険者の場合は、自分自身も第1号被保険者となり、国民年金や国民健康保険の保険料を納めなければなりません。

厚生年金に加入すれば、老後の年金が増え、傷病手当金などの制度も利用できます。

パートであっても厚生年金に加入することを検討してもよいでしょう。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFP資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。