国民年金
国民年金と厚生年金の違いは?切り替え手続きもわかりやすく解説

国民年金と厚生年金の違いは?切り替え手続きもわかりやすく解説

国が運営する公的年金には「国民年金」と「厚生年金」があります。どちらも耳にすることが多いものの、その違いがわからない人も多いのではないでしょうか。

国民年金は「個人事業主・自営業者などが加入すべきもの」、厚生年金は「会社員などが加入すべきもの」っていうイメージがあります。
ええ、そうですね。ほかにも保険料や年金額など、国民年金と厚生年金には様々な違いがあるんです。

この記事では国民年金・厚生年金の違いや、加入先を切り替えるときの手続きについてお伝えします。

国民年金と厚生年金は『2階建て』になっている

「国民年金と厚生年金は全く別物」というイメージがあるかもしれませんが、この2つの年金は「2階建て」になっています。

国民年金が1階部分、厚生年金が2階部分で、そのほか企業年金・任意加入できる個人年金が3・4階部分と、人によって年金が上乗せされる仕組みです。

国民年金と厚生年金は2階建て

「厚生年金に入っている人は、国民年金にも入っている」ということですか?
はい。ちなみに厚生年金の加入者は「国民年金の第2号被保険者」とも呼ばれます。

このことを踏まえたうえで、次の章から「国民年金と厚生年金の違い」を見ていきましょう。

国民年金と厚生年金の違いをわかりやすく解説

大工仲間がサラリーマンへの転職を考えています。彼は国民年金加入者ですが、転職後は厚生年金に入るみたいです。

ところで厚生年金って、国民年金と何が違うんですか?

では国民年金・厚生年金の違いを整理していきましょう。次の項目に分けて、説明していきます。
国民年金と厚生年金の違い
  1. 加入条件(対象者)
  2. 保険料
  3. 年金の支給額

国民年金・厚生年金の違い1:加入条件

国民年金の加入者は「第1号被保険者」、厚生年金の加入者は「第2号被保険者」で、それぞれの加入条件は次のとおり。

国民年金(第1号被保険者)の条件
  • 20歳以上60歳未満
  • 日本国内在住
厚生年金(第2号被保険者)の条件
  • 20歳以上70歳未満
  • 厚生年金保険の適用事業所の従業員(ただし、老齢年金の受給権がある65歳以上の人を除く)

条件を満たせば、どちらかの年金制度に強制加入することになるのです。

ちなみに第2号被保険者に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」と呼ばれます。

厚生年金は、正社員じゃないと加入対象にならないですか?
いえ、パートタイマーやアルバイトの方も、勤務時間など一定条件を満たせば厚生年金の被保険者となります。

ただし事業所の所在地が一定しない・1カ月間以内の日雇い労働などの場合は除外です。

厚生年金の加入条件はやや複雑で、例外も多いです。詳しくは次の記事を確認してください。

国民年金・厚生年金の違い2:保険料

国民年金と厚生年金では、保険料額・納め方も異なります。

国民年金と厚生年金の違い(保険料)
保険料額 納付方法
国民年金 収入にかかわらず一定
(月額16,410円※)
・全額自己負担
・各自で支払い
厚生年金 収入に比例 ・事業主と労使折半
・給与から天引き
※2019年4月現在

国民年金は保険料の月額が一律。

それに対し厚生年金は、被保険者の給与・賞与(ボーナスなど)が多いほど、保険料が高く算定される仕組みになっています。

俺は最近転職して、厚生年金に切り替わりました。いままで数年間納めた国民年金の保険料は、ムダになっちゃうのかな?
いいえ。国民年金を納めた期間分も、老齢基礎年金に反映されます。

ちなみに国民年金の未納分がある場合は、厚生年金加入後も督促されます。年金保険料の納付は義務なので、きちんと行いましょうね。

国民年金・厚生年金の違い3:年金の支給額

公的年金の被保険者(またはその家族)に支払われるお金は、主に「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つです。

国民年金または厚生年金に加入すると給付される年金

国民年金と厚生年金とで、給付額の計算方法は異なります。たとえば老齢年金の場合、国民年金・厚生年金はそれぞれ次のような仕組みです。

国民年金・厚生年金の支給額の違い
支給額
国民年金 ・満額は一律(月額65,008円※)
・加入期間が長いほど多くもらえる
厚生年金 ・加入期間の長さや、そのあいだの平均給与などにより計算される
※2019年4月現在

どちらも加入期間が長いほど、年金額が多くなります。

年金額は、どちらが多いんですか?
人によって年金額は違いますが、厚生年金のほうが多いです。厚生年金は国民年金と2階建てですから。

厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年1月現在)」によると、老齢基礎年金・老齢厚生年金の平均月額は次のようになっています。

老齢基礎年金・老齢厚生年金の平均月額(平成30年1月末)
年金 平均月額
老齢基礎年金 5万5572円※
老齢厚生年金 14万7240円
※加入期間25年以上

国民年金の支給額や増額・減額の仕組みについては別記事「【図解付き】国民年金の受給額の計算方法と、増額・減額の仕組み」で解説しています。

厚生年金の計算方法や平均額については「【平成31年度版】厚生年金の支給額の計算方法・平均額」をご覧ください。

転職などの場合は、厚生年金から国民年金へ、または国民年金から厚生年金への切り替えが必要なことも。

次の章では、年金の加入先を変更する手続きについて説明します。

国民年金から厚生年金への切り替えは、会社が手続きを行う

自営業の夫に扶養されていた妻が正社員として就職した場合、パートからフルタイムになった場合などは、国民年金から厚生年金への切り替えが必要です。

厚生年金の加入条件を満たしたら、国民年金から厚生年金への切り替えは会社(勤務先)が行います。

手続きには「基礎年金番号」の確認が必要。そのため入社時に年金手帳の提出を求められます。

国民年金から厚生年金への切り替え手続きは、会社が行う

厚生年金から国民年金への切り替えは役場で!必要なもの一覧

会社員から個人事業主・無職になった、または正社員からパート・アルバイトになり厚生年金の対象から外れた場合、厚生年金(第2号被保険者)から国民年金(第1号被保険者)へ切り替える必要があります。

「国民年金→厚生年金」の切り替えは会社がやってくれますが、「厚生年金→国民年金」の切り替えは自分で手続きしなければならないのです。

厚生年金から国民年金への切り替え手続きは、住んでいる市区町村の年金窓口で行いましょう。

手続きに必要なものは、次のとおり。

厚生年金から国民年金への切り替え手続きに必要なもの
  • 印鑑
  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 年金手帳
  • 退職日を証明できる書類(離職票や退職証明書など)

厚生年金から国民年金への切り替え手続きと、必要書類など

市区町村によって、必要なものが異なる場合もあります。

また本人確認書類は「顔写真付きのもの」を求められる可能性も高いので要注意。運転免許証や写真付きマイナンバーカードなどがない人は、複数提出しなければならない場合もあります。

「退職日を証明できる書類」とは勤務先で発行される、次のような書類です。

退職日を証明できる書類(例)
  • 離職票
  • 健康保険資格喪失証明書
  • 退職証明書
夫は厚生年金加入者で、私はその被扶養者です。夫が厚生年金から国民年金へ切り替えを行う場合、私も手続きをする必要がありますか?
厚生年金で扶養している人(第3号被保険者)がいる場合、その人も年金種別の変更手続きを行わなければなりません。
夫が手続きしたからといって、私も自動的に切り替わるわけじゃないのね。
はい。国民年金には「扶養」という考え方はなく、被扶養者だった人も国民年金の第1号となる必要があるのです。
変更手続きは、どうやって行うんですか?
被保険者が切り替え手続きを行う際に、被扶養者の方の年金手帳も持参してください。そうすれば一緒に、年金の切り替えができます。

厚生年金から国民年金への切り替えは、被保険者の扶養に入っている配偶者の年金手帳も必要

げげっ!年金手帳なくしちゃったみたい~!
大丈夫、年金手帳は再交付できますよ。国民年金・厚生年金の場合で方法が違うので、下の表で確認してくださいね。
年金手帳の再発行申請
再発行申請方法
国民年金 自分で市区町村役場に「年金手帳再交付申請書」を提出
厚生年金 勤務する会社から年金事務所に「年金手帳再交付申請書」を提出
会社に依頼するのは楽ですね。でも入社したばかりで「年金手帳なくしちゃいました」って伝えるのは、少し気まずいなー。
できれば入社前に、年金手帳を準備しておいたほうがいいですよ。紛失ではなく「勤めていた会社から返してもらってなかった」という場合もあるので。

国民年金・厚生年金の仕組みを理解し、老後の貯蓄に役立てよう

国民年金と厚生年金では、保険料の納め方や金額、年金の支給額が大きく異なります。

また国民年金から厚生年金への切り替え手続きは不要ですが、厚生年金から国民年金への切り替えは自分で行うことがあるのも知っておきましょう。

公的年金は制度変更が行われる場合もあるため、あなたが老後を迎えたとき、年金が大幅に減ってしまう可能性もあります。

私的年金(個人年金)の上乗せなどで、老後の収入源を増やすことも検討してみましょう。いまから始めれば、老後資金の貯蓄もしやすくなりますよ。

※記載の情報は2019年4月現在のものです。

監修者メッセージ

国民年金と厚生年金の違いで、特に大きいのが「年金額」です。

老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金の点でも、厚生年金の方が保障が手厚いのが特徴です。

パートの場合、厚生年金に加入すると夫の扶養から外れることになりますが、老後や万が一への備えとしては、厚生年金に加入した方が有利といえるでしょう。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFPの資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。