厚生年金
厚生年金の加入条件【パート・アルバイトも対象になる場合あり】

厚生年金の加入条件【パート・アルバイトも対象になる場合あり】

厚生年金保険には「将来受け取る年金の金額が高くなる」「保障が手厚くなる」といったメリットがありますが、勤務時間や給与額によっては、手取りが少なくなる場合も。

そのため厚生年金の加入対象者となるかどうかは、将来の長期的な資産計画にも影響します。

厚生年金の大まかな加入条件は次のとおり。これを満たすと、厚生年金への加入義務が生じます。

  • 厚生年金が適用される事業所に勤務している
  • 70歳未満である

ほかにも細かい条件や、被保険者となる例外などが定められているので、詳しく見ていきましょう。

厚生年金の適用事業所は、大きくわけて『強制』と『任意』

厚生年金は事業所単位で適用されます。まずは自分の勤務している(または勤務予定の)事業所で、厚生年金に加入できるかどうか確認しましょう。

厚生年金の適用事業所は、次の2種類です。

厚生年金の適用事業所
  • 強制適用事業所
  • 任意適用事業所

それぞれの事業所について説明します。

【1】厚生年金の強制適用事業所(加入は義務)

「強制適用事業所」とは、事業内容に関係なく厚生年金への加入が義務付けられている事業所のこと。

強制適用事業所と見なされるのは、次の条件を満たす事業所です。

厚生年金の強制適用事業所と見なされる条件
  • 国・地方公共団体・法人※の事業所である
  • 常時5人以上の従業員を使用している適用業種を行う個人の事業所
※株式会社・有限会社など

個人の事業所の場合は、事業内容が決められています。適用業種とは健康保険法の適用業種と同じです。

適用業種(例)
製造業/土木・建築業/鉱業/電気ガス事業/運送業/清掃業/物品販売業/金融保険業/保管賃貸業/媒介周旋業/集金・案内・広告業/教育・研究・調査業/医療・保健業/通信・報道業

農林漁業、サービス業の一部などは例外となり、厚生年金への加入が強制されることはありません。

【2】厚生年金の任意適用事業所(加入は任意)

「強制適用事業所」に該当しない事業所は「任意適用事業所」と見なされます。条件を満たせば、厚生年金に加入することも可能です。

厚生年金に加入する場合、事業主は次の手続きを行う必要があります。

「任意適用事業所」が厚生年金保険へ加入するときの手続き
  1. 従業員の2分の1以上の同意を得る
  2. 必要書類を、事務センターまたは事業所所在地を管轄する年金事務所に提出する
  3. 厚生労働大臣の認可を受ける

なお適用の認可を受けた場合、対象の従業員全員が厚生年金保険に加入することになります。

事業所が厚生年金に加入しているかどうか知りたい場合は、日本年金機構の公式ホームページにある「厚生年金保険・健康保険適用事業所検索システム」を利用しましょう。

事業所の所在地(都道府県名)や事業所名称などを入力するだけで、簡単に調べられます。

転職を考えている企業がある人も、前もって確認しておくといいですよ。

厚生年金の加入条件【試用期間やパート・アルバイトも対象】

では厚生年金の適用事業所に勤務している人のうち、どのような人が厚生年金保険の被保険者となるのでしょうか。

厚生年金に加入できるかどうかのポイントは、次のとおりです。

  1. 被保険者となる年齢は70歳未満
  2. 「試用期間中かどうか」は関係ない
  3. パート・アルバイトでも被保険者となる場合あり

順番に詳しく説明していきます。

厚生年金の加入条件は原則70歳未満(特例あり)

厚生年金の被保険者となるのは70歳未満の労働者です。

ただし次の条件に当てはまれば「高齢任意加入被保険者」となり、その名のとおり任意で厚生年金へ加入できます。

高齢任意加入被保険者の条件
  • 70歳を過ぎても、厚生年金の適用事業所で勤務を続ける
  • 厚生年金加入期間の不足により、老齢年金を受けられない

高齢任意加入被保険者の場合、保険料は全額本人負担です。しかし事業主の同意があれば、労使折半にすることも可能です。

厚生年金は試用期間中でも加入できる

試用期間中は厚生年金に入れないよね?
そんなことはありません!試用期間中の人でも加入条件を満たしていれば、厚生年金に入らなければならないんですよ。

企業側が「試用期間中だから」という理由だけで、労働者を厚生年金に加入させないのは違法です。

厚生年金への加入義務が生じるのは、臨時に使用される人や季節的業務に使用される人を除き、就業規則・労働契約などに定められた一般社員の所定労働時間および所定労働日数の4分の3以上ある従業員です。正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトといった名称や試用期間などは問いません。

1カ月や2カ月の試用期間があったとしても、その後引き続き雇用されることがあらかじめ見込まれている場合は、入社当初から被保険者となるのです。

条件を満たしているのに厚生年金に入れてもらえてなかったら、どうすればいいんだよ~!!!
可能であれば、会社の労務担当者などに相談してみましょう。それでも対応してもらうのが難しいなら、年金事務所や日本年金機構の相談窓口に問い合わせてみてください。

パート・アルバイトも一定条件を満たせば厚生年金に加入できる

以前は「週30時間以上働いている人」しか厚生年金に加入することができませんでした。しかし平成28年10月1日に制度が改正され、勤務時間が週20時間以上の人なども対象になったのです。

そのため正社員やフルタイムパートだけでなく、短時間勤務(正社員などの4分の3未満)のパート・アルバイトでも、次の加入条件を満たせば厚生年金に入ることができます。

厚生年金の加入条件(パート・アルバイト)
  • 従業員が常時501人以上の企業(特定適用事業所)に勤めている
  • 週の所定労働時間が20時間以上ある
  • 1年以上の雇用期間が見込まれる
  • 賃金の月額が8.8万円以上である
  • 学生でない※
※卒業後も引き続き同じ事業所で勤務する場合や、休学中の場合、夜間学部や夜間の定時制の場合は被保険者となる

パート・アルバイトが厚生年金に加入するための条件については次の記事でさらに詳しく説明しているので、参考にしてください。

厚生年金の被保険者と見なされない人も加入できる場合あり

基本的に厚生年金の被保険者とならないのは、次のような人です。

厚生年金の被保険者とならない人
  1. 日々雇い入れられる人
  2. 所在地が一定しない事業所に使用される人
  3. 2カ月以内の期限を定めて使用される人
  4. 4カ月以内の季節的業務に使用される人
  5. 6カ月以内の臨時的事業の事業所に使用される人

しかし上記3~5の場合は、一定期間を超えて雇用されるのであれば「常時使用される」と見なされるため、厚生年金の被保険者となります。

それぞれの項目を選択すると説明部分に移動するので、確認してみてください。

【1】日々雇い入れられる人

「日々雇い入れられる人」とは、日雇いで働く人のことです。

基本的に厚生年金の被保険者とはなりませんが、1カ月を超えてもその事業所で引き続き働く場合は、その日から被保険者となります。

【2】2カ月以内の期限を定めて使用される人

有期雇用のなかでも、「その事業所で2カ月以内の間しか雇用されない」という場合は被保険者となりません。

しかし所定の期間を超えて引き続き使用されるようになれば、その日から被保険者と見なされます。

【3】所在地が一定しない事業所に使用される人

日本中を巡回興行している劇団など、所在地が一定しない事業所で働く場合は、厚生年金に加入できません。

このような人は例外がなく、いかなる場合も厚生年金の加入対象外と見なされます。

【4】4カ月以内の季節的業務を行う人

プールの監視員やスキー場のスタッフなど、職種・業種や業務内容によっては、その仕事をする季節が制限される人もいますよね。

4カ月以内の季節的業務に従事する人も、厚生年金に加入することはできません。

しかし「継続して4カ月を超える予定で使用される」という場合は、雇用された当初から被保険者となります。

【5】6カ月以内の臨時的事業所に使用される人

博覧会などの臨時的な事業(6カ月以内)を行う事業所で使用される人も、厚生年金の対象外。

しかし「継続して6カ月を超える予定で雇用される」という場合は、当初から被保険者と見なされます。

厚生年金の加入条件を確認し、損しない働き方を考えよう

厚生年金の加入条件は、ざっくりいうと70歳未満で週20時間以上働いていることです。さらに細かい条件が定められていたり、例外として被保険者と見なされる場合があったりします。

パート・アルバイトの人は、厚生年金に加入したほうが得なのかどうか検討したうえで働く時間を決めましょう。

厚生年金は、国民年金のみに加入するより年金の支給額が高いです。しかし短時間勤務の人が厚生年金に加入すると、手取りが少なくなるというデメリットも。

厚生年金の対象者は加入が義務付けられているので、今後の働き方を考えるためにも加入条件は確認しておきたいですね。

※記載の情報は2018年4月現在のものです。

監修者メッセージ

加入義務があるのに加入がされていない。このようなケースはパートの方に多く見受けれられます。その一番の原因は法律知識の欠如です。これは意外にも会社側の理解が足りていないケースもあります。今一度ご自身の権利は自分で守ることを念頭に、自身の雇用形態などから正しく扱われているか見直すことが肝要と考えます。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(安達伸伍)
安達 伸伍
社会保険労務士。
ネットワークエンジニアとして活動後、都内社会保険労務士事務所に勤務。
現在は個人事務所(労務・年金相談安達事務所)として活動している。