厚生年金
厚生年金の加入期間は10年に短縮!60歳以上も加入する際の注意点

厚生年金の加入期間は10年に短縮!60歳以上も加入する際の注意点

厚生年金の加入期間は「被保険者になった月」から「加入資格を失った月の前月」までを、月単位で数えた期間です。

厚生年金の場合、加入期間(資格期間)が10年以上あれば、老齢厚生年金を受給できます。資格期間は「保険料を納めた期間」だけでなく、国民年金の保険料納付が免除された期間・合算対象期間も対象です。

厚生年金に加入できるのは、資格期間が足りない場合を除いて70歳まで。早い人は60歳から年金の受け取りが可能ですが、収入によっては年金が減額または支給停止されることもあるのです。

この記事では、老齢厚生年金受給のために必要な期間や、厚生年金にいつからいつまで加入できるのかを解説。また年齢や収入によって年金額が一部(または全額)支給停止になるケースについても説明します。

厚生年金の加入期間(資格期間)は10年に短縮!

まずは年金保険料を納めた期間がどれだけあれば、厚生年金を受け取れるか確認しておきましょう。

老齢厚生年金をもらうために必要な資格期間は、平成29年8月1日から「10年(120月)」に短縮されました。

以前は保険料を25年以上納めないと、年金を受給できなかったのです。しかし資格期間が短くなったことにより、年金の受給資格を得やすくなりました。

厚生年金の加入期間(受給資格期間)は25年から10年に短縮した

資格期間って何ですか?保険料を納めた期間のこと?
それだけではありません。資格期間は、次のすべての期間を合計したものです。
「資格期間」として加算する期間
  • 国民年金保険料を納めた期間
  • 国民年金保険料を免除された期間
  • 厚生年金の加入期間
  • 合算対象期間(カラ期間)※
合算対象期間(カラ期間)とは

専業主婦や学生、海外在住などで年金制度に加入せず、任意加入もしなかった期間のこと。

国民年金の支給額には反映されませんが、年金を受け取るための加入期間として含めることが可能です。

厚生年金の受給資格期間は保険料納付期間と免除期間と合算対象期間(カラ期間)の合計

ただし10年の加入期間で受給できるのは老齢厚生年金のみ。遺族厚生年金障害厚生年金の支給条件に変更はありません。

厚生年金の加入期間はいつからいつまで?

厚生年金の加入条件は主に次の2つで、条件を満たしているあいだは加入義務があります。

厚生年金の加入条件
  • 厚生年金の適用事業所に勤務している
  • 70歳未満である

つまりサラリーマンとして会社に勤務している期間は、原則70歳になるまで厚生年金の加入義務があるということ。

会社を辞めたとき、もしくは70歳になったときに、厚生年金の加入期間は終了します。

定年退職で会社を辞めた場合か70歳になった場合に厚生年金の加入期間が終わる

厚生年金の加入条件について詳しく知りたい方は「厚生年金の加入条件【パート・アルバイトも対象になる場合あり】」で確認してみてください。

年齢の上限はあるけど、下限はないってことですか?国民年金の場合は「原則20歳から」って決まってるのに。
厚生年金の場合、加入期間の開始年齢が明確に決まっているわけではありません。
へぇ~そうなんだ。じゃあ加入期間が一番長くなるのは、どんな場合なの?
15歳から70歳までの54年間加入した場合です。義務教育である中学校を卒業してからすぐ、会社などに勤め始めた人が該当します。

70歳以上で受給資格がなければ『高齢任意加入』で加入期間を延ばす

仕事を続けていても、70歳になったら厚生年金の加入期間は終わるんですよね。
ええ、そうです。
じゃあ70歳になった時点で保険料の納付期間が10年なかったら、年金もらえないってこと?どうすればいいんだよ~!
その場合は「高齢任意加入被保険者」として、引き続き厚生年金に加入することができます。足りない期間分の保険料を納めれば、年金の受給資格が得られますよ。

厚生年金の高齢任意加入被保険者となれるのは、次の条件をすべて満たした場合です。

厚生年金の高齢任意加入条件
  • 70歳以上
  • 在職中
  • 資格期間が10年未満
高齢任意加入の場合、保険料は基本的に、被保険者が全額払わなければなりません。70歳までと同様に労使折半にするには、事業主の同意が必要です。

厚生年金の保険料は労使折半だが、高齢任意加入被保険者は事業主の同意がないと保険料を全額自己負担しなければならない

60歳以上の厚生年金加入は要注意!年金が減額・支給停止の恐れも

厚生年金には原則70歳まで加入するものだとお伝えしました。

しかし60歳になってからも厚生年金に加入し続けることで、収入によって老齢厚生年金が全額または一部、支給停止になる恐れがあります。

老齢厚生年金が支給停止になるのは、次のような場合です。

老齢厚生年金が支給停止になる場合
  1. 働きながら厚生年金を受給する場合
  2. 高年齢雇用継続給付を受けた場合

それぞれのケースについて説明します。

【1】働きながら年金受給する場合は『在職老齢年金』で支給停止

在職老齢年金って何?高齢になっても頑張って働いてると、ご褒美にもらえる年金のことかなー?
全然違います。

名前に「年金」と付いているので紛らわしいですが、在職老齢年金は「もらえるお金」ではありません。逆に年金額が減ってしまうことなんですよ。

60歳以上の場合、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受給することは可能です。

しかし在職老齢年金の仕組みにより、収入によって年金額が一部または全額支給停止されてしまう場合があります。

在職老齢年金って、どんな仕組みなんだろう・・・。
基本月額(1年分の年金額を12で割った数)と総報酬月額相当額(毎月の賃金と1年間の賞与を12で割った数)の合計が一定金額を超えると、支給停止になる仕組みです。

在職老齢年金の支給停止額は基本月額と総報酬月額相当額の合計によって調整される

支給停止が発生するのは、基本月額・総報酬月額相当額の合計が次の上限を超えた場合。被保険者の年齢により、ボーダーラインが異なります。

支給停止が発生する基本月額・総報酬月額相当額の合計額
被保険者の年齢 支給停止が発生する合計額
60歳以上65歳未満 28万円以上
65歳以上 47万円以上
自分の基本月額や総報酬月額相当額なんて、わからないんですけど~!
詳しい計算方法は日本年金機構の公式ホームページに載っています。でも、そもそも年金額が決定していないと計算できませんからね・・・。

自分が該当しそうな場合は、日本年金機構やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみるといいでしょう。

わかりました・・・。

ところで「支給停止」ってことは、退職したら年金が戻ってくるってことですよね?

いいえ。年金はあくまで「退職後はお金に困らないようにするための制度です。そのため働いてお金をもらっている人の年金は、減額されるんですよ。

ちなみに給料やボーナスが高い人ほど、減額される年金が多くなります。

そうなんだ・・・。年金が減るなら、70歳からは働かないほうがいい気がするなー。
そうとはいえません。増えた加入期間の長さによっては、受け取る老齢年金を増やせますよ。

在職老齢年金の仕組みや注意点については、次の記事も参考にしてください。

【2】高年齢雇用継続給付を受給すると、さらに一部が支給停止

60歳以上65歳未満で年金を受けながら厚生年金に加入する場合、「高年齢雇用継続給付※」を受けるとさらに年金額が減ってしまいます。

高年齢雇用継続給付とは

60歳以後に賃金が下がった人への、雇用保険の救済制度のこと。次の条件を満たす人が加入対象者です。

・雇用保険の加入期間が5年以上
・60歳以上65歳未満

60歳以後の賃金が60歳到達時点の賃金の75%未満になった場合に、給付金が支給されます。

高年齢雇用継続給付を受けると老齢厚生年金の支給額が減る

高年齢雇用継続給付による年金の支給停止額は、60歳より前と60歳到達時での賃金の低下率によって異なり、賃金(標準報酬月額)の最も多い人で6%です。

標準報酬月額とは

被保険者が会社から受け取る報酬の月額を、31等級に区分したもの。事業主が提出した届書をもとに、日本年金機構(年金事務所)が決定します。

標準報酬月額の一覧は日本年金機構の公式ホームページにあります。高年齢雇用継続給付を受ける方は、調べておくといいでしょう。

また難しい言葉が出てきた・・・。計算したくないなぁ。
マルピーさんの場合、いま計算する必要はないと思いますよ。まだ20代ですし、そのときのお給料・老齢年金がいくらになっているかも定かではないですからね。

とりあえず「高年齢雇用継続給付をもらうと年金額が減る」ということだけ理解しておきましょう。

老後は公的年金以外の収入も必要!オススメの方法を7つ紹介

厚生年金の加入期間については理解できました!でも・・・俺らの世代が将来もらえる老齢厚生年金がいくらかって、まだハッキリ決まってないんですよね。
そうですね。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」を見れば見込額などが記載されているのですが、収入額や年金制度の変更なども予想されるため、明確な年金額は予測できません。

ちなみに厚生年金の計算方法は複雑なので、自分で算出するのは難しいでしょうね。

やべー、老後が不安になってきた。老後破産なんてしたくないっす・・・。
心配しすぎも良くありませんよ。老後の収入源を増やせば、老後破産になるリスクを軽減できます。
老後は現役世代ほど稼げなくなる上に、医療費や介護費用などの大きな出費が発生する可能性も高くなるもの。公的年金と貯蓄だけで老後生活を送るのは不安ですよね。

老齢厚生年金は老齢基礎年金(国民年金)より支給額が高めですが、それでも生活費に足りるかどうかさえ分かりません。

老後を安心して過ごすために、勤労所得・不労所得で老後の収入源を増やしましょう。

老後の所得を得る方法でオススメなのは、主に次の7つです。

老後の収入源となる勤労所得・不労所得
勤労所得 ・アルバイト
・在宅ワーク
・独立開業
不労所得 不動産投資
個人向け国債
投資信託
個人年金保険

ただし不労所得の場合は、始めてからすぐに利益を得られない場合が多いです。早めに準備をしておくことをオススメします。

老後の収入の増やし方については「老後の収入を得る方法を紹介!貯蓄・公的年金と合わせれば安心」でさらに詳しく紹介しているので、そちらも参考にしてください。

厚生年金に関するお役立ち情報を知りたい方には「意外と知らない厚生年金の仕組みとは?保険料から支給額まで解説!」もオススメです。

厚生年金の加入期間が年金額を左右する!注意点は知っておこう

厚生年金の被保険者が老齢年金を受給するには、資格期間が10年以上必要です。

また60歳になってからも、厚生年金をもらいながら被保険者として働く場合、年金額が一部または全額支給停止される可能性があることも知っておきましょう。

厚生年金の加入期間が短いと、もらえる年金額も少なくなってしまいます。将来の年金制度がどうなるのかも定かではないので、貯蓄と老齢年金だけで老後を過ごせるという保証はないのです。

貯蓄だけでなく、個人年金などで老後の収入を増やし、安心して老後生活を送る準備をしましょう。

※記載の情報は2019年10月現在のものです。

監修者メッセージ

老齢年金の受給要件として加入期間10年に短縮されています。また、それでも要件を満たさない方は任意加入や高齢任意加入といった救済措置もあります。

是非ともご自身の今までの働き方等を見直し、確実に老齢年金を受給できるようにかつ可能であれば老齢基礎年金であれば満額受給できる準備をしておきましょう。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(安達伸伍)
安達 伸伍
社会保険労務士。
ネットワークエンジニアとして活動後、都内社会保険労務士事務所に勤務。
現在は個人事務所(労務・年金相談安達事務所)として活動している。