国民年金は滞納せず免除・猶予制度を利用!追納して年金額を補おう
国民年金の保険料納付は加入者の義務ですが、経済的な理由により納めるのが難しい人もいます。しかし未納のまま放置していると、最悪の場合は財産差し押さえになることも。
どうしても保険料を払えないなら、保険料免除・猶予制度を利用しましょう。
免除制度 | 被保険者の世帯所得に応じて、保険料を一部または全額免除してもらえる |
---|---|
猶予制度 | 本人や配偶者の所得が基準以内であれば、納付を先延ばしにできる |
国民年金の免除・猶予制度には、次のようなメリットがあります。
- 年金の「受給資格期間※」に含まれる
- 病気、ケガで障害を負った際も、条件を満たせば障害年金を受け取れる
- 被保険者が死亡した場合、遺族年金が支給される
ただしこれらの制度を利用した場合は、老後にもらえる年金額が少なくなるので要注意。
経済的に余裕ができたら、追納することをオススメします。
この記事では、国民年金の保険料免除・猶予制度の利用条件や申請方法について解説。年金額を減らさないための追納について説明します。
国民年金の保険料免除制度の免除額は所得によって決まる
国民年金の保険料免除制度とは、被保険者本人や世帯主・配偶者の所得が一定額以下で、国民年金保険料を納めるのが経済的に難しいとき、申請によって納付が免除される制度です。
免除される金額は「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」の4通りで、加入者の前年所得(前々年所得)により決定されます。
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
免除制度には、次のような注意点も。
- 任意加入期間中は申請できない
- 制度利用中は付加年金・国民年金基金に加入できない
申請前に確認しておくことをオススメします。
国民年金の保険料納付猶予制度の利用条件
「保険料納付猶予制度」とは、被保険者本人や配偶者の所得が一定以下の場合、申請によって保険料の納付期限が延長される制度。
保険料納付猶予制度を利用できるのは、次の条件を満たす場合です。
- 20歳~50歳未満
- 被保険者本人、配偶者の前年所得※が「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」
ただし免除制度と同様、付加年金・国民年金基金との併用はできません。また任意加入者はこの制度を申請できないので注意してください。
国民年金の保険料免除・猶予制度の申請方法
年金事務所や市区役所、町村役場の国民年金担当窓口でも受け取れますよ。
免除・猶予制度の申請に必要な書類は、「国民年金手帳」または「基礎年金番号通知書」。
場合によっては、次の書類の提出も求められます。
- 前年(または前々年)の所得を証明する書類
- 所得の申立書(※1)
- 雇用保険受給資格証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し(※2)
※2:失業などによる申請の場合
また、事業の廃止(廃業)や休止の届出をしている人は、次の1~5のいずれかの書類が必要です。
- 厚生労働省が実施する総合支援資金の貸付決定通知書の写しと、申請時の添付書類の写し
- 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
- 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し※
- 保健所への廃止届出書の控え※
- そのほか公的機関が交付する証明書等(失業の事実が確認できる書類)
2~5の書類を提出する場合は、「失業の状態にあることの申し立て」が別途必要となります。
どれが必要かわからない場合は、事前に近くの年金事務所へ問い合わせてみましょう。
『学生納付特例制度』で学生も納付の猶予を申請できる
「学生納付特例制度」とは、次の条件を満たした学生が、保険料の納付を猶予してもらえる制度のことです。
- 大学、大学院、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校、各種学校※、一部の海外大学の日本分校に在学している
- 本人の本年度所得が「118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」以下、または失業などの理由がある
夜間課程や定時制・通信制でも、利用可能です。
通う学校が制度の対象かどうか分からない場合は、日本年金機構の公式ホームページにある「学生納付特例対象校一覧」から確認しましょう。
学生納付特例制度の申請に必要な書類は、次のとおりです。
- 申請用紙
- 国民年金手帳
- 学生であること(学生であったこと)を証明する書類(※1、2)
- 退職、失業したことを証明する書類(※3)
※2:各種学校の学生で在学証明書を提出できない場合は、修業年限が1年以上の課程であることを証明できる書類
※3:退職・失業した場合のみに必要(雇用保険受給者証、雇用保険被保険者離職票などの写し)
申請用紙は、日本年金機構の公式サイト内「国民年金保険料に関する手続き」からダウンロードできます。
申請手続きは、次のいずれかで行ってください。
- 住民登録をしている市区役所、町村役場の国民年金窓口
- 年金事務所
保険料を払えないときに免除・猶予制度を申請すべき理由
きちんと申請して制度を利用しないと、日本年金機構やその委託業者から督促が届いたり、最悪の場合は財産を差し押さえられたりしてしまうんです。
国民年金の納付義務・未納や滞納によるデメリットについては「国民年金を払わないと財産差し押さえに!制度利用・追納で対処しよう」で詳しくお伝えしているので、確認してみてください。
保険料を払えないときは放置せず、免除・猶予制度を申請してください。これらの制度には、次のようなメリットもありますよ。
- 制度を利用した期間は「受給資格期間」として数えられる
- 制度利用中でも障害年金・遺族年金を受給できる
老齢年金を受けるには、受給資格期間が10年以上必要です。受給資格期間には、次の期間が含まれます。
- 保険料の納付期間
- 保険料の免除・猶予期間
- 合算対象期間(カラ期間)※
免除・猶予制度を利用した場合、その期間は「受給資格期間」として見なされます。
しかし未納・滞納期間は資格期間に含まれないため、加入期間が終わる頃には「資格期間が足りず、年金を受給できない」なんてことになる恐れもあるのです。
また免除・猶予制度を利用している期間でも、条件を満たせば、障害年金遺族年金が支給されます。
国民年金の保険料免除・猶予制度で年金額が減っても追納で補える
国民年金の免除制度を利用すると、免除された金額に応じて老齢年金が減ってしまいます。
保険料免除制度をした場合、年金の受給額は次のとおりです。
免除額 | 支給される年金 |
---|---|
全額免除 | 満額の2分の1 |
4分の3免除 | 満額の8分の5 |
半額免除 | 満額の8分の6 |
4分の1免除 | 満額の8分の7 |
また納付猶予制度を利用した期間は「受給資格期間」として認められるものの、受給できる年金額には反映されません。
次の章で、メリットと申請方法を詳しく見ていきましょう。
国民年金保険料を追納するメリットと注意点
国民年金の保険料免除・猶予制度を利用したあと、経済的に余裕が出てきたら「追納(保持権料の後払い)」をしましょう。
保険料の追納には、次のようなメリットがあります。
- 老齢年金の減額分を補える
- 所得税・住民税が軽減される
免除制度によって減額された分の年金は、追納することで補うことが可能。
また社会保険料控除によって、納めるべき所得税と住民税を減らすことができるのです。
ただし追納する場合は、次の注意事項も確認しておきましょう。
- 追納できるのは、原則「古い期間から」
- 追納できるのは、承認された月の前「10年以内」の免除等期間分のみ
- 保険料の免除・猶予を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、加算額が上乗せされる
なるべく早めに追納できるのが理想的ですね。
口座振替やクレジットカード払いはできません。
国民年金の免除・猶予制度を利用し、追納で年金額を補おう
経済的な理由などで国民年金の保険料を払えないときは、免除・猶予制度を利用しましょう。猶予制度を利用した期間は「受給資格期間」として数えられるため、「保険料の納付期間が足りず、年金を受給できない」となるのを防ぎやすくなります。
ただし免除制度を利用した場合は年金の支給額が減り、猶予制度を利用した期間は受給額には反映されません。
老後資金を少しでも多く準備したいなら、制度利用後は保険料を追納するのがオススメ。
しかし制度利用から追納までの期間が長いと加算額が発生し、保険料が高くなります。経済的に余裕ができたら、早めに追納しましょう。
前年の所得が一定額以上であったとしても、退職や倒産などで失業したときは、失業による特例免除の対象となります。
失業による特例免除の審査対象は、世帯主と配偶者の所得のみで、本人の所得は審査対象となっていません。
したがって単身の方などは認められる可能性が高いので、該当する方は検討してください。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。