介護生活の悩み

認知症ってどんなもの?介護の仕方はどうする?

歳をとって「物忘れがひどくなった」という状態は要注意です。ただの老化かもしれませんが、もしかしたら認知症の初期症状かもしれません。

日本人の平均寿命が伸びるに従って、認知症になる高齢者も増えてきています。認知性高齢者をどう介護していくか考える時期にきているのでしょう。

このページでは、認知症とはどんなものなのか、認知症の人にどう対応すればよいのかを説明していきます。

認知症とはどんなもの?基礎から学ぼう

勘違いしている人も多くいますが、「認知症」というのは病気の名前ではありません。さまざまな病気によって、「認知機能障害」が起こっている状態を認知症と言います。

認知症の「中核症状」としては以下のようなものがあります。

  • 記憶障害(物忘れがひどくなるなど)。
  • 五感で得た情報を正常に処理できない(失語、失認、失行など)。
  • 理解力、判断力の低下。
  • 見当識障害(年月日や時刻、現在位置などがわからなくなる)。
  • 実行機能障害(料理ができない、服を着れないなど)。
最近物忘れがひどいのじゃが、認知症なんですかのう。
その可能性もなくはありませんが、ただの老化とも考えられます。歳をとって物忘れが増えるのは自然なことですから。
老化と認知症で症状が同じなら、どっちなのか見極めが難しいですなあ。
そうですね。それが認知症の怖いところです。老化の場合は単なる「身体機能の低下」、認知症の場合は病気による「脳神経細胞の破壊」と原因はまったく違うのですが、症状はよく似ているために判断が難しいんです。

認知症の種類

認知症をおこす病気は多数ありますが、特に多いのが以下の3つです。

  1. アルツハイマー型認知症(50%)。
  2. レビー小体型認知症(20%)。
  3. 血管性認知症(15%)。
「アルツハイマー型認知症」は、異常なタンパク質が脳にたまって、神経細胞を殺し、脳を萎縮させるものです。記憶障害、判断力低下、妄想、徘徊などの症状があらわれます。進行は緩やかで、初期は身体的な症状は目立ちません。
「レビー小体型認知症」は、脳にレビー小体という塊ができるものです。アルツハイマー型と違い、脳の萎縮は起こらない場合が多くなっています。幻視や錯視などの症状が出やすく、記憶障害は目立たない事もあります。症状が一定せず、日や時間によって大きく変動するという特徴があります。
「血管性認知症」は、脳梗塞や脳出血によって、脳の神経細胞がダメージを受けて起こります。ダメージを受けた箇所が司っている、一部機能が障害を受けます。手足の麻痺など身体的な症状が出る事もあります。血管性認知症は、脳梗塞などが進行するのにしたがって、症状が重くなっていきます。

認知症が疑われるならすぐに医者の診断を

認知症は、早めに対応することによって、その後の症状に大きな変化が出やすくなります。そのため、中核症状がみられたら、早めに専門医の診察を受けるのが良いでしょう。

先に上げた中核症状が原因になり、以下のような行動、心理症状があらわれることがあります。これらが確認された場合も、検査をしてもらったほうが良いでしょう。

  • 妄想(物を盗られた、いじめられたなど)。
  • 幻想(ありえないものを見たり聞いたりする)。
  • 徘徊(道に迷ったり、自宅を認知できなくなる)。
  • 情緒不安定(興奮したり、暴力的になったりする)。
  • 無気力(うつ状態になったり、趣味の活動をしなくなったりする。)

認知症を治療する方法はあるの?

認知症が治療可能かどうかは、どのタイプの認知症かによります。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などによっておこる認知症の場合、原因となる病気を治療することにより、認知症も治療することが可能です。

しかしアルツハイマー型やレビー小体型の場合、根本的な治療方法はみつかっていません。ただし、これらの病気も「薬物療法」などにより、進行を遅らせることは可能だとされています。

デイケアサービスは認知症に効果があるってホント?

上の項目とは逆に、血管性認知症などでは、デイケアサービスは効果を期待できません。手術などで、脳の病巣自体を取り除く必要があります。

しかしアルツハイマー型認知症などの場合、「認知機能のリハビリテーション」や「生活リハビリテーション」などをおこなう事で、認知症の進行を遅くできる場合もあります。

認知症への接し方のポイントとは?

認知症の人と接するときは、以下の2つのポイントに注意してください。

  1. 認知症患者の世界を尊重する。
  2. 介護は余裕を持っておこなう。

認知症患者の世界を尊重する

認知症になってしまうと、まわりの世界を正常に認識できなくなる事があります。たとえば財布を無くしてしまった時に、家族に盗まれたと妄想したり、自宅を自分の家と認識できずに、「本当の自宅」を探しに出かけてしまったり、などです。

しかし患者本人からすると、その間違った認識が真実なのです。間違いを指摘して訂正しても、良い結果は生まれません。

むやみに「叱ったり」「否定したり」することは、症状を悪化させるだけです。患者のプライドを傷つけないよう、認めてあげることが大事です。その過程で、時には嘘を付くことも必要です。

親父が認知症になっちゃったら、どうしたらいいんですかね……。
仕事を頼んでみたり、何かをうまく出来た時には褒めてあげたり、自分にとって相手が必要な存在だと伝えるのが良いと言われていますね。
仕事を頼むっていうのは意外ですね。なにもやらせない方がいいのかと思ってました。
何かを出来れば達成感を得られますし、お互いの信頼関係も深まります。むしろ何もさせないという方法のほうが、症状を悪化させがちですよ。

介護は余裕を持っておこなう

介護の中でも、認知症の介護は負担が大きいものです。介護する相手との意思疎通がうまくできなくなってしまうため、介護者の精神的なストレスが大きくなりがちです。また、目を離すと大変な事になってしまう危険性があるため、終始気を抜けません。

しかし、介護に集中しすぎると、介護者自身が先にダウンしてしまう可能性があります。家族の助けを求めるなり、訪問介護サービスを利用するなりして、1人だけで抱え込まないようにしましょう。

認知症高齢者を施設に入れるタイミング

大勢で介護をできるなら問題は少ないのですが、少ない人数で介護をしなければいけないという場合もあるでしょう。認知症高齢者は目を離す事が難しいため、1人だけでの介護では無理があります。

もしも介護の負担が大きすぎるようなら、生活が破綻する前に介護施設への入居も考えるべきでしょう。

施設なんかには入りたくない、って言われないかしら。
そういう状況はよくあります。そうした場合は、焦らずに説得していくことが大事です。無理やり施設入居させると、後でトラブルが起きやすくなってしまいます。

認知症高齢者に向いている施設はどれ?

認知症高齢者が入れる施設には、「介護付き有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「グループホーム」などがあります。

介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホームでは似たようなサービスが受けられます。認知症を専門にしているわけではありませんが、一般的に手厚い介護体制が整っています。

しかし一番最初に検討したいのは、グループホームでしょう。グループホームは認知症の人を専門としている施設ですので、認知症に理解があります。



それぞれの施設でかかる費用

施設名 月額費用
介護付き有料老人ホーム 15~35万円
特別養護老人ホーム 10~13万円
グループホーム 15~25万円

認知症介護は無理をしない・させないが大切

認知症になってしまう人は増え、認知症介護は他人事ではなくなってきています。

認知症と疑わしい様子があった場合、早めに診察をしてもらうのがよいでしょう。認知症の種類によっては、早期診断で治療できる場合もあるからです。

認知症で介護が必要になった場合、患者を追い詰めないように配慮してあげるのが大事です。同時に、介護者自身もストレスで追い詰められないよう留意すべきです。