オーバーローンで家を買うとどうなる?不動産屋に勧められた場合は?
一昔前までは、家を買おうと思えば、物件価格の2~3割の自己資金は用意するのが常識でした。しかし今では、どんどん貸してもらえるお金の上限が増え、オーバーローンでの融資まで実施している金融機関もあります。
このページでは、オーバーローンとはどんなものなのか、違法性はないのかについて説明していきます。また、オーバーローンで注意すべき点についても、解説していきます。
オーバーローンってどういう意味?
資産状況をみるときには、物件を売却した時にローンの残債がどうなるかを考えます。
物件の価値よりもローン残高の方が多い場合、「オーバーローン」と呼ばれます。
オーバーローンでは、仮に物件を手放してもローンを完済できず、借金が残ってしまいます。そのため、あまり好ましい状態ではありません。
諸経費まで含めて借りるとオーバーローンになる
最近の住宅ローンは、頭金0の「フルローン」で組む人も増えてきました。それどころか、事務手数料などの諸経費も全部含めて住宅ローンですませている人もいます。
しかし「物件購入費用+諸経費」で住宅ローンを組むと、諸経費の分は必ずオーバーローンになってしまいます。
住宅ローンは金利が安いため、なるべく多く借りたい、という考えもわかります。しかしオーバーローン状態は変化に弱いため、リスクもあるということは知っておいたほうが良いでしょう。
物件購入後にオーバーローンになってしまうことも
最初から諸経費込のオーバーローンを組まなくても、購入後にオーバーローンになってしまうこともあります。
たとえば4000万円の家を、フルローンで購入したとします。この家を買った次の日に売却するとどうなるでしょうか?
もちろん4000万円では売れません。たとえ1日しか住んでいないとしても、「1~2割程度」減った値段でしか売れなくなります。
1割減の3800万円で売れたとしても、ローン残高4000万円に対して、200万円のオーバーローンになってしまいます。
また、建物の価値は年々下落していきます。その下落速度は、一般的にローン残高の減りより早くなります。
オーバーローンで家を買うのは絶対ダメなの?問題点は?
オーバーローンにはリスクがあると言いましたが、絶対にダメというわけではありません。というより、ずっと住むことを前提にするなら、オーバーローンでも特に問題はおきません。
たとえ担保価値よりもローン残高の方が多くなっても、毎月の返済をちゃんとしている限り銀行は何も言いません。
しかし家を売らなければいけない場合、オーバーローンだと厳しい状況に陥ります。
家を売るということは、なんらかのアクシデントが発生しているという事です。それに加えて、オーバーローン分を返済するためのお金を、どこからか工面しなければいけなくなるので大変です。
転勤や転職で自宅を売りたくても売れなくなる
ローンを組んだ物件というのは、銀行の抵当権がついています。そのため、ローンを完済して抵当権を抹消しないかぎり、物件の売却はできません。
つまりオーバーローンの物件は、転職や離婚などで売ろうと思っても、簡単に売ることはできないということです。
任意売却で物件自体は売れることもあるが
オーバーローンの物件でも、銀行と相談して「任意売却」するという方法はあります。
任意売却には銀行の合意が必要になります。また、家が売れても借金が残ってしまいます。
夫婦共同で住宅ローンを組んだ場合離婚時にもめる
ペアローンや連帯債務など、夫婦共同でローンを組むことも増えてきました。しかしそうした物件がオーバーローンだと、離婚するときに非常に面倒なことになります。
家を処分しても負債が残ってしまうため、その返済をどうするのか、そもそも抵当権を抹消するだけの資金を集められるのか、など揉める要素は多数あります。
その点アンダーローンなら、最悪の場合、家を処分してしまえばよいので、問題が少なくなります。
※ペアローンや連帯債務について詳しく知りたい方はコチラの特集記事へ
最初からオーバーローンで家を買ってもよい人とは?
最初からオーバーローンで住宅ローンを組んでも問題が無いのは、高い収入と貯蓄があり、なおかつ、高い収益が見込める投資先がある人となります。
高収入と貯蓄がある人なら、オーバーローンを組んでもリスクはあまりありません。しかし、低金利とはいえ、長期間のローンで利息を取られるので、特にメリットもありません。頭金を多めにして、借入金を減らしたほうがずっと利益が大きくなるでしょう。
ただし、住宅ローンの金利を絶対に上回る投資先がある、という人ならオーバーローンの方がメリットが大きくなります。
頭金についてアドバイスを聞きたい方はコチラへ。
絶対にやってはいけない違法なオーバーローンとは?
ここまでオーバーローンについて説明してきましたが、じつはオーバーローンにもう一つ意味があります。それは、不動産業界でよく使われている違法な「オーバーローン」です。
不動産会社が、物件価格を高くした偽の書類を作り、住宅ローンを多めに借りさせる「かきあげ」という手口があります。
こうした「かきあげ」などもオーバーローンと呼ばれていますが、れっきとした「犯罪行為」です。
どうして違法なオーバーローンをするの?
たとえば、本来3000万円の物件なのに、不動産会社が3500万円と書いて銀行に提出するとします。500万円分、多くローンを借りられるわけですが、このお金を不動産会社が着服するわけではありません。
購入者が頭金として500万円を用意していたという形にしたり、購入者にキャッシュバックされたりします。
- 家を買うと何かと物入りですので、購入者には大きなメリットがあります。しかも住宅ローンの低金利でお金を借りられます。
- 不動産会社としては、資金に余裕ができる客に、物件を購入してもらいやすいというメリットがあります。
双方にメリットがあるため、違法なオーバーローンをやっている不動産会社があるのです。
違法なオーバーローンがバレたらどうなる?
違法なオーバーローンがバレた場合、銀行はローン利用者と不動産会社を詐欺罪で訴えることが可能です。ローンの一括返済が求められることもありえます。
また、水増しした物件価格で「住宅ローン控除」を受けていた場合、国に対しては「脱税」をしたという扱いになります。
じっさいのところ違法なオーバーローンはバレるの?
違法であるのは確かですが、それがじっさいに検挙されるかどうかは別問題となります。
基本的に、違法なオーバーローンをしても、書類などがしっかりしている限り、バレる可能性は低くなっています。
しかしバレる可能性が低いからといって、犯罪行為に手を染めるべきではない事は言うまでもないでしょう。
オーバーローンの借入は避けたほうが無難
最近では、最初から諸経費含めたオーバーローンで住宅ローンを組む場合もあります。しかし何か問題がおこって、家を売りたくなった時に面倒ですので、なるべく避けたほうが無難です。
また、単なる担保割れではなく、水増し申請などもオーバーローンと呼びますが、こうした違法なオーバーローンには手を出すべきではありません。
違法なオーバーローンは借りたご本人苦しむだけです。
ローン返済がむずかしくなった場合、自宅の通常売却ではローンの清算がむずかしく、任意売却による債務整理を選択しなければなりません。
任意売却が成立しない場合は「競売」になることもあり、残債務の返済も迫られます。オーバーローンは禁物です。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。