居宅療養管理指導ってなに?訪問診療や往診との違いをおさえよう
居宅療養管理指導は、在宅療養中で通院が困難な人が受けられるサービスです。
医師、歯科医師、薬剤師などが利用者宅を訪問して指導・助言を行います。
居宅療養管理を利用することで、自宅でも安心して療養でき、介護生活の質向上が見込めます。
居宅療養管理の内容、訪問診療や往診との違い、かかる費用について紹介します。
居宅療養管理指導とは?訪問診療や往診と違って診療は行わない
居宅療養管理指導では、自宅にいながら専門家の助言を受けられます。
往診や訪問診療との違いなど、居宅療養管理指導の仕組みについてご紹介します。
往診や訪問診療との違いは?居宅療養管理指導は指導・助言のみ
往診や訪問診療では、医師が利用者宅で医療行為(診察、治療、検査など)を行います。
一方の居宅療養管理指導では、医師が訪問する場合でも、実際の医療行為は行いません。
往診 | 患者や家族からの依頼を受けて、その都度患者宅を訪問して診療。公的医療保険(健康保険)の対象。 |
---|---|
訪問診療 | 定期的に患者宅を訪問して診療。公的医療保険(健康保険)の対象。 |
居宅療養管理指導 | 利用者宅を訪問して、助言や指導をする。介護保険の対象。 |
また、居宅療養管理指導では、訪問するのは医師だけではありません。歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、薬剤師による居宅療養管理指導もあります。
居宅療養管理指導の対象者は在宅療養中で通院が困難な人
居宅療養管理指導の対象者は、要介護1~5と認定されている人です。
在宅療養中で、通院が困難な場合に、医師や歯科医師の指示を受けて利用します。
「在宅」には、自宅のほか、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅なども含みます。
要支援1~2の場合、「介護予防居宅療養管理指導」という、ほぼ同様のサービスを利用できます。
居宅療養管理指導の利用開始には主治医の判断が必要
居宅療養管理指導を利用したいと思ったら、担当ケアマネージャーに相談してください。
ケアマネージャーから主治医に連絡し、居宅療養管理指導が必要だと判断されれば、具体的な利用内容を決めます。
職種ごとに違う!居宅療養管理のサービス内容を紹介します
居宅療養管理指導のサービス内容は、訪問する人の職種によって異なります。
例えば、医師と管理栄養士では、助言できる内容が違うことは想像できますよね。
職種によるサービス内容の違いを紹介します。
診療はしません!医師、歯科医師による居宅療養管理指導
医師や歯科医師による居宅療養管理指導では、実際の診療(診察や治療)はおこないません。行うのは指導や助言、ケアマネージャーへの情報提供です。
医師からケアマネージャーへ情報提供することで、より利用者のニーズに合ったケアプランの作成が期待できます。
内容 | ケアマネージャーへの情報提供 介護方法などについての指導、助言 |
---|---|
訪問回数 | 月2回まで |
薬の管理に不安がある人は助かる!薬剤師による居宅療養管理指導
「離れて暮らす親が薬をちゃんと飲めているか心配」といった不安に対応できるのが薬剤師による居宅療養管理指導です。
内容 | 薬の服用歴の管理 服用方法の指導 副作用の説明 薬の服用状況や保管状況の確認 |
---|---|
訪問回数 | (病院や診療所の薬剤師)月2回まで (薬局の薬剤師)月4回まで |
薬剤師が調剤薬局と病院・診療所のどちらに勤務しているかで訪問回数の上限が違います。
薬局勤務の薬剤師なら、利用者が末期がんまたは中心静脈栄養を受けている場合、月8回(週2回)まで利用可能です。
食事に配慮が必要なら利用可能!管理栄養士による居宅療養管理指導
管理栄養士による居宅療養管理指導は、糖尿病や低栄養状態など、特別な食事管理が必要な人が利用できます。
内容 | 医師などと連携して「栄養ケア計画」を作成 食事や栄養管理についての情報提供、相談、助言 栄養状態を定期的に記録 |
---|---|
訪問回数 | 月2回まで |
歯科医の指示で行う歯科衛生士による居宅療養管理指導
歯科衛生士の居宅療養管理指導では歯磨きの指導などをしてくれますが、「単に歯磨きをしてもらうだけ」という場合は利用できません。
内容 | 歯磨きや入れ歯の手入れについての指導 嚥下機能維持・回復のための助言 |
---|---|
訪問回数 | 月4回まで |
居宅療養管理指導の利用料金は手ごろ!支給限度額の対象外です
居宅療養管理指導は介護保険の対象なので、自己負担割合に応じて1~3割の負担で利用することができます。
訪問介護などは地域によって利用料金に差がありますが、居宅療養管理指導はどの地域でも同じ料金です。
また、居宅療養管理指導には、介護保険の支給限度額の対象外であるという特徴があります。
居宅療養管理指導に適用されるのは医療保険ではなく介護保険
居宅療養管理指導は介護保険の対象なので、自己負担割合に応じて1~3割の料金で利用できます。
また、医療保険でも居宅療養管理指導と同様のサービスが提供されています。
例えば、薬剤師による居宅療養管理指導は、医療保険では「在宅患者訪問薬剤管理指導」という名前で、ほぼ同じサービス内容が行われています。
要介護認定を受けていない場合には、医療保険での利用を検討してみてはいかがでしょうか。
地域差はありません!居宅療養管理指導の自己負担額を紹介します
居宅療養管理指導の利用料金は、訪問する職種によって変わります。
自己負担1割で利用する場合の自己負担額は以下の通りです。別途交通費がかかります。
職種 | 自己負担額 |
---|---|
医師・歯科医師 | 単一建物居住者が1人 507円 単一建物居住者が2~9人 483円 単一建物居住者が10人以上 442円 |
薬剤師(病院・診療所) | 単一建物居住者が1人 558円 単一建物居住者が2~9人 414円 単一建物居住者が10人以上 378円 |
薬剤師(薬局) | 単一建物居住者が1人 507円 単一建物居住者が2~9人 376円 単一建物居住者が10人以上 344円 |
管理栄養士 | 単一建物居住者が1人 537円 単一建物居住者が2~9人 483円 単一建物居住者が10人以上 442円 |
歯科衛生士 | 単一建物居住者が1人 355円 単一建物居住者が2~9人 323円 単一建物居住者が10人以上 295円 |
(2018年11月6日現在)
要介護認定を受けた人が訪問診療を受ける場合には、「居宅療養管理指導(2)」の利用料金が適用されます。
職種 | 自己負担額 |
---|---|
医師 | 単一建物居住者が1人 294円 単一建物居住者が2~9人 284円 単一建物居住者が10人以上 260円 |
(2018年11月6日現在)
居宅療養管理指導の利用料金は支給限度額の対象外!
居宅療養管理指導は、医師や歯科医師の判断によって実施されるので、介護保険の支給限度額の対象ではありません。
すでに支給限度額いっぱいに介護保険サービスを利用していても、訪問回数の上限を超えないなら、1~3割の負担額で利用することができます。
「介護保険の支給限度額ってなに?」と思った方はコチラの記事をご覧ください。
手ごろな利用料金で介護生活の質向上が期待できる居宅療養管理指導
訪問診療や往診と違って、実際の診療は行われませんが、医師、歯科医師、薬剤師などによる指導や助言を受けることができるので、介護生活の質の向上が期待できます。
介護保険の対象ですが、支給限度額の対象にはならないので、訪問回数の上限を超えない限り、1~3割の自己負担で利用できるのも助かりますね。
利用するにあたっては、利用者の希望だけではなくて、主治医が「居宅療養管理指導が必要」を認めることが必要です。