負動産の放置はデメリットばかり!特徴や処分方法など詳しく解説
昨今、少子高齢化や出生率の低下によって、人口の減少が不安視されるとともに郊外の不動産へのニーズも急激に減っています。
結果、所有している不動産が価値を持たない「負動産」となってしまうことがあります。
今回は負動産の実態やそのデメリット、さらにどのようにして処分していけばいいのかについて具体的にお伝えしていきます。
負動産とは、所有するだけで資産がマイナスとなる不動産のこと
不動産とは本来、その土地や家に住んだり、人に貸したりして利益を生み出すもの。しかしなかには、だれも利用価値や財産的な価値が無いために所有したがらないような不動産もあります。
そのような不動産は、所有しているだけで固定資産税の支払義務や管理義務が伴い、「負債」となります。
さらにだれも買い手となる人が見つからず、売却自体が困難であるがゆえにマイナスの「不動産」、つまり負債と不動産を掛け合わせた造語である「負動産」となります。
負動産の例には、次のようなものがあります。
- バブル時代に人気のあったリゾートマンションや別荘
- 最寄り駅まで車やバスなどの利用が必要な郊外の住宅
- 需要がなく空き部屋の多い賃貸住宅
- 就農する意思のない人が相続した農地
かつての日本では、不動産価格は上昇し続けるという「土地神話」がありました。「どんな場所でも住宅ローンを組んでマイホームを持つ」というのが、当たり前だと考えられていたのです。
しかし少子高齢化によって世帯数は減り、かつて人気のあった郊外の家や田舎の家は見向きもされずに売れ残るようになりました。
この傾向は、若い世代に特に顕著です。かつては人気だった郊外のベッドタウンよりも、通勤に便利な都市部に住居を構える若者が増えました。
負動産は、少子高齢化でますます売れにくくなっているのです。
売れにくい不動産のある地域では、過疎化が進み、放置された家は空き家となっていきます。
負動産をそのまま放置する3つのデメリット
負動産はなるべく、次世代へ残さずなんとか処分するようにしましょう。
所有する負動産を放置し続けると、次のようなデメリットが生じます。
- 固定資産税を支払わなければいけない
- 管理をしなくてはいけない
- 損害賠償を受けるかもしれない
詳しくみていきましょう。
負動産でも固定資産税の納付は必要!空き家認定されるとより高額に
利用の有無に関わらず、不動産を所有しているだけで固定資産税の支払いが毎年発生します。
固定資産税の評価額が低い田舎の土地でも、都市部よりも敷地が広い場合はそれなりの税金がかかります。
居住用地であれば特例によって固定資産税を抑えることができますが、家が「管理のされていない空き家(特定空家等)」とみなされると、この特例は使えません。
空き家となった負動産を放置すると「固定資産税が最大6倍になる」可能性があるのです。
特定空き家に指定される基準には、次のようなものがあります。
- 倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある
- 著しく衛生上有害となるおそれのある
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である
固定資産税の支払いは毎年必要。所有し続けるほど、資産は減る一方なのです。
特定空き家については、次の記事をご覧ください。
また土地の固定資産税の計算については、次の記事でも詳しく紹介しています。参考にしてみてくださいね。
負動産でも管理は義務!場合によっては費用がかかることも
利用していない負動産でも、所有者は建物や土地を適正に管理しなければいけません。
不動産は相続の際、「相続放棄」をすれば所有権を放棄することが可能。しかしその場合でも、管理義務自体は所有者に残るのです。
不動産の管理には、次のようなものがあります。
- 外壁や屋根のメンテナンス
- 定期的な雑草の除去や植栽の手入れ
- 排水口の清掃
崖地となっている土地であれば、崖崩れが起きないような対策を施す必要があります。これらの作業には危険が伴うため、専門家へ依頼が必要。高額な費用が必要となる可能性があります。
また所有者が遠方の場合、簡単な作業であっても定期的に行うのは難しいもの。空き家管理サービスの利用が便利ですが、やはり持続的な費用の支払いが必要です。
このように、負動産を所有し続けることでさまざまな費用負担が発生する可能性があります。
負動産が原因で損害賠償を受けるリスクも!
所有している負動産が原因で、損害賠償責任が問われるリスクもあります。
- 空き家が倒壊して隣地の人にケガを負わせる
- 空き家が倒壊して隣の家を損傷させる
- 土地の崖崩れで通行人のケガを負わせる
- 雑草が生い茂った土地内で火事が起こり周囲に損傷を与える
損害賠償は多額となる可能性も。また事態が収束するまでの精神的苦痛もあります。
負動産を処分する3つの方法!よく理解して適した方法の選択を
負動産の所有にはデメリットが多く、次の世代に経済的な負担を残さないためにも早めの処分がおすすめです。
負動産の処分方法には、次の3つがあります。
- 売却
- 相続放棄
- 寄付
自分が所有する負動産にはどの方法が適切なのか、しっかり検討してから進めましょう。
それでは、具体的に解説していきます。
【負動産を処分する方法1:売却する】負動産一括査定サイトが便利
たとえ負動産であっても、物件の状態や条件によっては売却できることがあります。
そのためには、少しでも買い手が付きやすいよう、次のような工夫をすることが大切です。
- 売出し価格を相場よりも低い金額にする
- 更地にして利用しやすくする
- 雑草や木々を伐採するなどの整地を行う
建物の解体や整地には費用がかかりますが、今後も続く固定資産税などの支払いを考慮すれば、良策となる可能性があります。整地については次の記事でも詳しく紹介していますので、確認してみてくださいね。
また少しでも売却を成功させるには、仲介してくれる不動産会社選びも重要です。
条件の悪い物件でも、不動産会社の担当者独自のネットワークによって買い手が見つかることがあるのです。
ただし無数にある不動産会社を、一社ずつ探し出すのは困難。そのような場合には、不動産一括査定サイトを利用するといいでしょう。
不動産一括査定サイトは、売却対象となる不動産の基本情報などを入力するだけで査定額を教えてくれる便利なサイトです。
不動産一括査定サイトに関しては、次の記事「おすすめな不動産一括査定サイトを厳選してご紹介!」でも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
なお空き家であれば、「空き家バンク」に登録して少しでも利用したい人の目に触れるような努力も大切です。
自治体やNPO法人などによって運営されている、空き家譲渡のためのサイト。「空き家を売りたい人」と「家を買いたい人」の橋渡しをしてくれる。
都心から地方に移住したい人の利用が考えられます。空き家バンクについては次の記事でも詳しく紹介していますので、確認してみてくださいね。
【負動産を処分する方法2:相続放棄する】放棄しても管理は必要
親の負動産を相続する場合、相続放棄することで所有権を放棄が可能です。
ただし相続放棄では、次の点に注意が必要です。
- 他の資産も相続放棄しなければならない
- 親族などに負動産の相続権がうつる
- 負動産の管理義務は残る
負動産はマイナスの資産と考えられますが、預貯金や有価証券などプラスの資産も相続放棄では手放すこととなります。
また相続放棄をすると、相続する人全員が放棄をするまで負動産の相続権はうつります。
相続放棄は自分ひとりだけの問題ではありません。親族にも相談のうえ、どうすればよいのかを決めましょう。
【負動産を処分する方法3:寄付する】ただし寄付先がない可能性も
負動産の売却が上手くいかない場合や負動産を相続してしまった場合には、寄付するという方法も検討してみましょう。
寄付先には、次のようなものがあります。
- 個人
- 法人
- 自治体
隣地の所有者であれば、自地をより効率的な土地活用が可能となる場合があるため寄付を受け入れてくれる可能性があります。
また負動産が別荘地や更地などであれば、法人に寄付することも検討できる可能性も。別荘地であれば社員の保養所建設のための用地、更地なら資材置き場としての利用を目的として寄付を受けてくれる場合が考えられるからです。
ただし個人や法人への寄付では、次のような費用の発生に注意が必要です。
寄付先 | 費用 |
---|---|
個人 | 寄付を受けた個人に贈与税がかかる 所有権移転登記に費用がかかる |
法人 | 寄付をした側に所得税と住民税がかかる※ 所有権移転登記に費用がかかる |
また自治体への寄付は、かなり難しいものと考えましょう。タダで寄付するからといって、自治体が無条件で引き取ってくれるわけではないのです。
自治体で設定した要件を満たす利用価値のある不動産でないと、基本的には受け付けてもらえないのが一般的。寄付を受け付ければ自治体は不動産の管理をしなくてはならず、また収入源として期待できたはずの固定資産税が入らなくなってしまうからです。
自治体への寄付を考える場合、次のような手順で進めます。
- 自治体の窓口に相談する
- 自治体が不動産の審査をする
- 問題がなければ、必要書類を提出して寄付をする
土地の寄付については、次の記事「【いらない土地の処分方法1:寄付】贈与税など税金の支払いに注意」でも詳しく紹介しています。寄付を考える場合は、こちらも確認しておきましょう。
負動産は後の世代に残さず、速やかな売却処分が重要!
負動産は利用価値の低いものがほとんどであり、できるだけ持ち主の代で処分を済ませておきたいところ。所有し続けても、固定資産税や管理義務の負担、さらに近隣の住民や隣地に被害を及ぼし損害賠償責任に問われるリスクも考慮しなければなりません。
負動産を処分するには売却や寄付、さらに相続放棄などの方法があります。
いずれの場合も、不動産を処分する前に信用できる専門家に相談してみるのが得策。
不動産会社や不動産鑑定士、不動産コンサルタントなどに相談し、自分だけで悩まず適した方法をみつけましょう。
面積が少なく評価額が低い市街化調整区域の土地で、以前「原野商法」により購入してしまった土地などは、相続の対象になっている物件がかなりあると思われます。
納税は免れても「管理責任」は逃れようがありません。
これも負動産の一種です。そのような土地を相続されるかたは専門家に相談することをおすすめします。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。