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不動産売却の利益で、ふるさと納税の上限額UP!節税効果や手順解説

各地の特産品がもらえたり、災害などで支援したい自治体を応援できる「ふるさと納税」はとても人気があります。

このふるさと納税による節税効果は、不動産を売却した際の譲渡所得でも得られます。

この記事では、ふるさと納税の仕組みやメリット、不動産の譲渡所得との関係についてご紹介していきます。

最後には手順や注意点もまとめましたので、これからふるさと納税をしようと考えている方はぜひご覧ください。

ふるさと納税の基本的な仕組みについて

ふるさと納税ってよく聞くけど、なんスかコレ?
ふるさと納税とは、自分で選んだ自治体などに寄付をおこなうことで、一定の金額が所得税と住民税から控除されるものです

寄付した金額から自己負担分(適用下限額)となる2,000円を超えた分の全額が、原則として所得税と住民税から控除できます。

例えば、年収600万円の夫が妻と高校生の子1人を扶養しており、ふるさと納税の額が40,000円の場合では、自己負担分の2,000円を超える38,000円が所得税と住民税から控除されることになります。

ふるさと納税の所得税や住民税に対するそれぞれの控除額の計算式は、次のとおりです。

所得税の控除額
(ふるさと納税額 -2,000円)✕所得税率
住民税の控除額
(ふるさと納税額-2,000円)✕住民税率(10%)

なお住民税の控除額(特例分)については、住民税所得割額の2割を限度としてその残り全額となります。

ふるさと納税による控除を受けるには、ふるさと納税をおこなった翌年に確定申告する必要があります。

サラリーマンなどの給与所得者の場合、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば大丈夫です。

自営業者などの場合、自身で確定申告をする必要があります。

ただし不動産売却による譲渡益(譲渡所得)が発生した場合に利用する「ふるさと納税」では、「ワンストップ特例制度の適用条件」を満たさないために同制度は利用できません。

不動産を売却した年にふるさと納税をおこなうメリットとは?

確定申告すれば、不動産の譲渡所得も所得税や住民税の控除が受けられるのが、ふるさと納税です。

不動産売却時にその不動産の取得費や譲渡費用の合計額よりも売却額が大きいと売却益(譲渡益)が発生し、譲渡所得の対象となります。

ふるさと納税をおこなうことで、次のような大きなメリットが受けられます。

不動産を売却した年にふるさと納税をするメリット
  • 譲渡所得の所得税や住民税が控除される
  • 応援したい自治体に寄付できる
  • 返礼品がもらえる

詳しくみていきましょう。

譲渡所得の所得税や住民税が控除される

不動産の譲渡所得は給与などの総合課税ではなく、確定申告して個別に課税される分離課税です。

譲渡所得についてふるさと納税の制度を利用して納税すると、ふるさと納税の全額控除の上限額が高くなるメリットが受けられる場合があります。

不動産の譲渡所得(譲渡益)は売却対象となる不動産の所有期間に応じて、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に分かれ、税率も異なります。

所有開始から売却までが5年未満となる所有期間で得た譲渡益は「短期譲渡所得」、同5年超が「長期譲渡所得」です。

それぞれの譲渡所得についてふるさと納税すると、次のような割合で控除額が増えます。

短期譲渡所得の場合
個人の住民税所得割額✕33.687%+2,000円まで
長期譲渡所得の場合
個人の住民税所得割額✕26.779%+2,000円まで

短期譲渡所得や長期譲渡所得について詳しくは、次の記事をご確認ください。

応援したい自治体に寄付できる

ふるさと納税の制度を利用すれば、自分が応援したい自治体やお世話になった自治体に寄付できます。

まさに、ふるさとの自治体への寄付もできる制度です。

また自治体によっては、公園の整備など寄付金をどのように使うかといった資金使途まで積極的に選べるところもあります。

税金がどのように使われ、役立っているかが実感できる点も魅力といえるでしょう。

各地の名産品をお礼の品としてもらえる

ふるさと納税を受け付けている各自治体は、それぞれの地域での名産品を返礼品として納税者に渡しています。

なかには高級ズワイガニやローストビーフなどの食品から、高級な陶器やインテリア雑貨もあり、返礼品の種類は実に豊富です。

不動産の売却益に対する所得税や住民税を納税する代わりに、お金ではなくモノであるものの、何かしらのお礼がもらえるのがこの制度のいいところでもあります。

不動産売却後にふるさと納税をおこなうとどのくらい節税対策がある?

メリットはわかったけど、イマイチ実感できないな。
それでは節税の具体例を見ていきましょう。

「給与所得(所得控除後)が600万円で、長期譲渡所得が800万円あった場合」の節税額を、実際に計算します。

A.所得控除後の金額から住民税所得割額を計算

所得控除後の給与所得は給与から各種控除を差し引いたもので、申告する年の前年の源泉徴収票や住民税通知書などで確認できます。

給与所得の住民税は総合課税で全国一律10%となっており、この10%を「所得控除後の金額」に掛けて算出します。

事例の給与所得(所得控除後)は600万円なので、単純に「600万円×10%」で60万円となります。

B.不動産譲渡所得から住民税所得割額を計算

長期譲渡所得の住民税率は5%ですので、事例の長期譲渡所得である800万円から、「800万円×5%」で40万円となります。

C.上記の住民税所得割額から合計額を計算

給与所得の住民税所得割額Aと長期譲渡所得の住民税所得割額Bを合計すると、次のような結果になります。

「住民税所得割額合計:60万円(A)+40万円(B)=100万円(C)」

D.控除上限額を計算

ふるさと納税の控除上限額は以下の式から計算できますので、上記AとBの結果を当てはめれば算出可能です。

「控除上限額:(住民税所得割額合計×20%)÷((90%-所得税率)✕1.021)+2,000円」

E.住民税所得割額合計100万円からふるさと納税の控除上限額を計算

以下の計算式から控除上限額は「296,000円」となります。

(住民税所得割額合計100万円✕20%)÷((90%-23%)✕1.021)+2,000円=29.6万円(1千円未満切捨てた場合)

ちなみに所得税の税率は、国税庁ホームページで確認できます。

F.譲渡所得がなかった場合のふるさと納税の控除上限額を計算

次の計算式から譲渡所得がなかった場合の控除上限額は「169,000円」となります。

(住民税所得割額合計60万円×20%)÷((90%-20%)×1.021)+2,000円=16.9万円(1千円未満切捨てた場合)

G.EとFの比較からどれくらいの節税が可能かを計算

EとFの差額から譲渡所得があってふるさと納税の控除を受けた場合の節税メリットが以下のように12.7万円とかなり大きいのがわかります(1千未満切捨てた場合)。

「29.6万円-16.9万円=12.7万円」

不動産売却後にふるさと納税をおこなう手順や方法

どのようにすればふるさと納税できるの?
手順に沿っていけば簡単です。商品選びが楽しいですね。

譲渡所得が発生した場合にふるさと納税制度を利用する具体的な手順は、次のとおりです。

不動産売却後にふるさと納税を行う手順
  1. ふるさと納税の寄付金額上限を算出する
  2. ふるさと納税の対象となる自治体を選ぶ
  3. ふるさと納税(寄付)をおこなう
  4. 返礼品と受領証明書を受ける
  5. ふるさと納税をした翌年に確定申告する

寄付の上限金額は、「さとふる」や「楽天市場」などのふるさと納税を行うサイトで簡単に調べられます。このとき、不動産の譲渡所得以外にも給与など他の所得も対象ですので忘れないようにしましょう。

寄付をおこない、返礼品と受領証明書を受け取ったら、ふるさと納税の翌年3月15日までに住所地を管轄する税務署にて確定申告をおこないましょう。

ふるさと納税は確定申告によりはじめて完結するので、忘れずに受け取った受領証明書を添付して申告してください。

確定申告が済むと納税をおこなった年の所得税の控除、さらに納税した翌年度の住民税の控除が受けられることになります。

不動産売却後にふるさと納税をおこなう注意点を紹介

やった!無事確定申告もしたし、おいしいズワイガニを食べるぞ!
それは良かったですね。それで確定申告の時に受領証明書は忘れずに添付しましたか?
え!してないや。ああ、どうしよう!もう控除が受けられないのかな・・・

あらあら。確定申告は修正ができますから、税務署などに問い合わせてみましょう。

不動産売却後にふるさと納税をする場合、いくつかの注意点があります。

ここでしっかりと確認してみてください。

不動産売却後にふるさと納税をするときの注意点
  • 不動産売却で利益を出すことが必要
  • ふるさと納税ワンストップ特例制度がほとんど使えない
  • 寄付金額の上限を超えないようにする
  • 必要書類紛失や書き漏れなどをしないようにする
  • 寄付はふるさと納税の納税者名義でおこなう

詳しくみていきましょう。

不動産売却で利益を出すことが必要

ふるさと納税のメリットが受けられるのは、あくまで不動産売却時に譲渡益が発生した場合です。

譲渡益が全く無かった場合や譲渡損となった場合には、不動産売却後のふるさと納税には意味がないので注意しましょう。

ふるさと納税ワンストップ特例制度がほとんど使えない

譲渡所得ではほとんどの場合「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が受けられません。

ふるさと納税ワンストップ特例制度には、次のような適用条件があります。

ふるさと納税ワンストップ特例制度の適用条件
  • 寄付した自治体が5団体以内であること
  • もともと確定申告が不要な人
  • 寄付をするときに納税先の自治体に適用の申請書を提出すること
  • 年収が2,000万円以下であること
  • 給料や退職金以外の所得が20万円以下であること

不動産の譲渡所得はほとんどの場合、この適用条件の最後にある「給料や退職金以外の所得が20万円以下であること」という条件に反することになるためにこの制度が使えません。

寄付金額の上限を超えないようにする

既にお伝えしたようにふるさと納税には上限額が決まっています。

上限額を超えてしまうと、超えた分についてはそのまま「自己負担分」として控除対象とならずに損する可能性がありますので注意しましょう。

必要書類紛失や書き漏れなどをしないようにする

サラリーマンの方は年末調整があるため、確定申告の習慣がない人も多いでしょう。

確定申告は、納税した翌年の3月15日までに行う必要があります。

寄付受領証明書を紛失したり、証明書の添付を確定申告時に忘れることがないように注意してください。

不動産売却後の確定申告に必要な書類や申告方法については、次の記事でも詳しく紹介しています。

寄付はふるさと納税の納税者名義でおこなう

ふるさと納税は、あくまで納税者本人の名義でおこなうことが大切です。

例えば、クレジットカードによる寄付が認められている自治体のふるさと納税を納税者本人ではなく、配偶者名義のカードでおこなうと本人の所得税や住民税の控除が受けられません。

寄付をする人と確定申告をする人は同じでなければならないことをよく覚えておいてください。

不動産売却で利益が出たら、ふるさと納税の活用は忘れずに!

ふるさと納税は、自分が生まれ育った故郷の自治体や災害などで大変な思いをしている地域の自治体に寄付ができる、すばらしい制度であることがわかりました。

不動産の売買を通じて得た譲渡益である譲渡所得についても、ふるさと納税のメリットを受けられます。

譲渡所得があった方はぜひ利用してみてください。

ただし利用時には、「寄付金額の上限を守る」「書類を紛失しないようにする」などの注意点などを忘れずに、必ず納税した翌年の確定申告をするようにしてください。

不動産の売却益が多ければ多いほど、ふるさと納税のメリットは大きくなります。

不動産会社の売却査定などを上手く利用して、できるだけ高値での売却を目指すようにするとよいでしょう。

※記載の情報は、2019年12月現在のものです。

監修者メッセージ

譲渡所得があるとふるさと納税の上限額が上がります。毎年のようにふるさと納税をしている方は、譲渡所得のある年は上限額を確認して、ふるさと納税のメリットを活かしたいですね。あまりふるさと納税に関心がない方もおられるでしょう。

不動産を売却し所得が生まれる年だけは、ふるさと納税をしてみるのもおすすめです。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(弘中純一)
弘中 純一
宅地建物取引士、一級建築士の資格を保有。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。