遺族年金
家族が亡くなったときに給付される遺族年金の金額と計算方法

家族が亡くなったときに給付される遺族年金の金額と計算方法

世帯主などが亡くなったとき、遺族に支給される遺族年金。実際いくらもらえるのか知っていますか?

遺族年金の金額は自分で計算することが可能。受け取る遺族年金の種類や受給対象者によって、もらえる金額は変わります。

自分や大切な人が亡くなったときのことなんて、まだ考えたくはないですよね。

でも残された家族が安心して暮らしていくために、将来受け取ることができるお金を把握しておくことが重要なのです。

この記事では、遺族年金の金額を計算する方法について説明します。

遺族基礎年金の金額【一覧表付き】

遺族年金には大きく分けて「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。まずは国民年金の加入者(個人事業主など)が亡くなった場合、遺族に支給される「遺族基礎年金」の金額について見てみましょう。

遺族基礎年金の金額計算は、足し算のみなので簡単です。

遺族基礎年金の計算方法
780,100円+子の加算額※
※平成31年度の金額
なんだ、簡単じゃん!・・・あれ、「子の加算額」って何?
「子の加算額」は次のように考えて、式に当てはめてください。
「子の加算額」の考え方
  • 1人目、2人目の場合は「224,500円×人数」※
  • 3人目以降は「74,800円×人数」
※平成31年度の場合。子が受給する場合、1人目の加算額は除く

これをもとに、子の人数に応じた「子の加算額」と「遺族基礎年金の合計額」を見てみましょう。「子がいる配偶者」が受け取る場合の支給金額は、次のとおりです。

遺族基礎年金の受給額(子がいる配偶者の場合)
子の人数 子の加算額 合計金額
1人 224,500円 1,004,600円
2人 449,000円 1,229,100円
3人 523,800円 1,303,900円

「子」が受給対象者となる場合は「子の加算額」を1人目からではなく、2人目から加算します。

遺族基礎年金の受金額(子の場合)
子の人数 子の加算額 合計金額
1人 なし 780,100円
2人 224,500円 1,004,600円
3人 299,300円 1,079,400円

第3子以降は加算金額が安くなるため、子の人数が多いほど1人当たりの受給額も少なくなります。

次の場合には遺族基礎年金の給付が終了することも、覚えておきましょう。

遺族基礎年金の受給終了時
  • 子が18歳になる年度末を経過したとき
  • 子に1、2級障害がある場合、その子が20歳になったとき

遺族基礎年金の受給条件や受給期間については、次の記事で詳しく解説しています。

遺族厚生年金の金額計算方法

会社員など厚生年金保険に加入していた人が亡くなった場合に支給される「遺族厚生年金」。

支給額は保険加入期間や給料により異なります。具体的には、亡くなった人の老齢厚生年金における報酬比例部分の4分の3です。

また報酬比例部分には計算方法が2通りあり、いずれか高いほうが支給額と見なされます。

次の手順ごとに、金額の計算方法を確認していきましょう。

遺族基礎年金の金額計算手順
  1. 「平均標準報酬月額」を計算する
  2. 「報酬比例部分の年金額(本来水準)」を計算する
  3. 「報酬比例部分の年金額(従前額保障)」を計算する
  4. 手順2と3で計算した金額のうち、高いほうが支給額となる

【1】平均標準報酬月額・平均標準報酬額を計算する

まずは「平均標準報酬月額」と「平均標準報酬額」を計算します。

平均標準報酬月額と平均標準報酬額?何が違うわけ?
この2つの違いは「標準報酬月額に賞与を含めるかどうか」によるもの。平成15年4月以降、給与だけでなく賞与も含めるようになったんです。

これらの数字は、次の手順【2】および【3】を計算するのに必要なものなので、算出したらメモしておきましょう。

それぞれの計算方法は次のとおりです。

平均標準報酬月額の計算方法
  1. 平成15年3月までの標準報酬月額(※1)を合計する
  2. 1で算出した金額を「平成15年3月までの被保険者期間の月数」で割る
平均標準報酬額の計算方法
  1. 平成15年4月以後の標準報酬月額(※1)と、標準賞与額(※2)を合計する
  2. 1で算出した金額を「平成15年4月以後の被保険者期間の月数」で割る
※1:標準報酬月額とは

会社から被保険者へ支払われる毎月の報酬(給料など)の月額を、計算しやすいように等級で区分したもの。毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」に記載されています。

※2:標準賞与額とは

税抜き前の賞与の額から、1,000円未満の金額分を切り捨てたもの。

「標準賞与額」の上限は「1カ月あたり150万円」なので、これを超えた場合は各月「150万円」で計算してください。

【2】報酬比例部分の年金額(本来水準)を計算する

報酬比例部分の年金額(本来水準)は、手順【1】で計算した「平均標準報酬月額」・「平均標準報酬額」を使い、次のように計算します。

報酬比例部分の年金額(本来水準)の計算方法
{平均標準報酬月額×(7.125÷1,000)×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×(5.481÷1,000)×平成15年4月以後の被保険者期間の月数}×4分の3

「被保険者期間の月数」が300月(25年)未満の人は「300月」として計算してください。

【3】報酬比例部分の年金額(従前額保障)を計算する

従前額保障とは、年金制度の見直しなどにより被保険者に不利益が生じないようにする計算方法です。

報酬比例部分の年金額(従前額保障)も、「本来水準」と同様、手順【1】【2】で算出した数字を使って算出しましょう。

平成31年度の場合、計算式は次のとおりです。

報酬比例部分の年金額(従前額保障)
{平均標準報酬月額×(7.5÷1,000)×平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬額×(5.769÷1,000)×平成15年4月以後の被保険者期間の月数)×1.000※}×4分の3
※昭和13年4月2日以降に生まれた人は「0.998」で計算

こちらも「被保険者期間の月数」が300月(25年)に満たない場合は、「300月」と見なして計算します。

【4】「本来水準」と「従前額保障」を比較(金額の高いほうが支給額)

最後に、手順【2】【3】で計算した報酬比例部分の「本来水準」と「従前額保障」を比較しましょう。

金額の高いほうが、遺族年金としてもらえる金額です。

夫が亡くなった当時40歳以上で、生計を維持している子がいない場合は、「中高齢寡婦加算」が適用されます。

中高齢寡婦加算で、妻は40歳から65歳までのあいだ年額585,100円(平成31年度)を受け取ることが可能です。条件に該当する場合は、遺族厚生年金に自動的に加算されます。

当サイトには遺族厚生年金の受給条件や受給期間、打ち切りになる場合などについて説明している記事もあります。ぜひ読んでみてください。

遺族年金の計算は簡単にできる!他の給付金も確認しよう

この記事では遺族年金の金額を計算する方法についてお伝えしました。

遺族基礎年金は、もらえる年齢に制限があります。受給期間も把握しておくといいでしょう。

遺族厚生年金は遺族基礎年金に比べ、少し計算が難しくなります。状況により給付が打ち切られる場合もあるので、日本年金機構の公式ホームページなどで確認してください。

両方の遺族年金を受給する場合は、どちらも計算しておきましょう。

また公的年金をもらっていた人が亡くなった場合、亡くなる直前分などの「未支給年金(まだ受け取っていない年金)」が発生します。生計を同じくしていた3親等内の親族に支給されるので、こちらも忘れず手続きして受け取ってくださいね。

※掲載の情報は2018年4月現在のものです。

監修者メッセージ

遺族基礎年金は定額なので、計算はそれほど難しくないですが、転職歴が多かったり、給料が頻繁に変わっていたりすると、遺族厚生年金の金額を計算することはなかなか大変です。

年金事務所の窓口へ行けば、機械で自動的に計算してくれて、正確な金額を知ることができますので、ぜひ活用してください。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFPの資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。