遺族年金

知らないと損!離婚したら妻(夫)や子は遺族年金をもらえるのか?

万が一のことが起きた場合、残された家族の生活を支えるための年金。それが遺族年金です。

別れた元妻(夫)やその子供は、果たして遺族年金を受給できるのでしょうか?

自分のことならともかく、もし子供が遺族年金をもらえないとなると今後支払われるべき養育費を受け取れない可能性も出てきます。そうすると、ちょっと困ってしまいますよね。

子供であれば、遺族年金をもらえる可能性があります。

ただ遺族年金というのは、受給資格や支給条件などが細かく規定されており、正直なかなかわかりづらい部分があるのも事実。

そこで今回は、離婚した場合の遺族年金について、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。

意外ともらえる?遺族の生活を支える「遺族年金」を解説します

そもそも、遺族年金って何?という方もいるかもしれません。そこで、遺族年金についておさらいしていきましょう。

遺族年金の種類は、この2種類に分けられます。

遺族年金の種類

それぞれ詳しくみていきましょう。

遺族基礎年金

まず遺族基礎年金について説明します。

こちらは国民年金の被保険者が亡くなった場合、亡くなった方の「子のある配偶者」または「子」が受給できる年金のこと。

以前は子のある「妻」に限られていましたが、現在では男女の区別はなく「配偶者」に対象が拡大されて適用されています。

そして気になる年金額ですが、780,100円+子の加算となります。

子の加算額は、次のとおりです。

第1子・第2子の場合:各224,500円
第3子以降の場合:74,800円
結構もらえるのね!
ただし、子といっても18歳到達年度の3月末日まで(つまり高校卒業まで)となるので注意してくださいね。

ちなみに子がいない配偶者は、遺族基礎年金を受給できないので注意してください。

遺族厚生年金

次に遺族厚生年金について、説明します。

こちらは妻や子、孫、そして夫や父母、祖父母が受給できる年金です。

気になる年金額ですが、厚生年金の被保険者であった亡くなった方の収入によって金額が変わるので一概にいくらとはなりませんが、ざっくり説明すると将来受け取れる厚生年金の4分の3を受け取れるとされています。

詳しく計算してみたい方は、毎年誕生日頃に送られてくる「ねんきん定期便」で大体の計算ができるので、チェックしてみましょう。

そして、ひとことで「遺族年金」といっても受給できる人の要件や受け取る年金額、そして受給期間など違いがあり、要件はかなり複雑になっています。

「うちの場合はどうなのかな?」と疑問に思ったら、こちらの記事で詳しく解説していますので、よければ参考にしてみてくださいね。

離婚時の年金分割とは違う?元夫(元妻)の遺族年金はもらえない

では離婚すると、遺族年金はどうなるのでしょうか?

実は老後にもらえる年金の分割とは異なり、離婚した際には遺族年金を受給できません。

それでは詳しい内容をみていきましょう。

離婚したら遺族年金はもらえない!老後の年金分割とは違う点に注意

結論から申し上げますと、離婚した元夫婦だと遺族年金を受給することはできません。

というのも遺族年金というのは、(生計維持関係にある)遺族の生活を保証するための年金だからです。

もし離婚した元夫婦だった人が遺族年金を受け取れるとしたら、何のために離婚したのかわからないッスね~。
そうですね、ただ離婚時に分割できる年金もあるんですよ。

それは、老後にもらえる老齢厚生年金のこと。

離婚時に合意がある場合(または裁判所へ請求して認められた場合)に、婚姻期間中の厚生年金記録を当事者間で分割できるという制度があるのです。

特に専業主婦(主夫)だった期間があった場合、婚姻期間中の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できるという制度もあります。(3号分割)

年金の分割に関しては、請求期限があります。

離婚してから2年以内に請求しなければなりませんので、早めに請求するようにしましょう。

このように老後に受け取る年金には「離婚時に分割できる」という制度がありますが、遺族年金は遺族の生活を保証するという仕組みから、分割という制度は存在しないのです。

そのため「離婚時の年金分割」と「遺族年金の受給」は、別のものと考えてくださいね。

離婚した元夫(妻)が再婚しなかった場合でも遺族年金はもらえない

離婚した元夫(妻)が遺族年金を受給できないことはわかったけれど、もし元夫(妻)が再婚せずに独身のまま亡くなったとしたら、その年金は誰がもらうの?と思いませんか。

元夫婦だった人が、遺族年金をもらうということはありません。

では、誰が代わりに受け取るのでしょうか?

遺族年金を受給できる権利は、子や(亡くなった方の)孫、父母、祖父母など要件を満たす方に受給する権利が移っていきます。

次の章では、離婚後に子供がもらえる遺族年金について詳しく解説しますので、確認してみてください。

離婚後も子供なら遺族年金をもらえるかも!生計維持関係の有無がカギ

離婚した元夫婦が遺族年金をもらえないということは、なんとなくわかる気もします。

それでは離婚した夫婦の子供はどうでしょうか?

ここでは、遺族基礎年金と遺族厚生年金に分けて解説していきます。

詳しくみていきましょう。

【ケース①】遺族基礎年金の場合、子供がもらえる可能性は低い

そもそも遺族基礎年金は、18歳に到達する年度の3月末日までの子供、つまり高校生以下であることが受給資格となるので、その要件を満たしていると仮定します。

遺族基礎年金を子供がもらえるのは、ごくまれと言えるでしょう。

先生、どういうことですか??結局もらえる?それとももらえない?
受給資格はあるものの、支給停止になるケースがほとんどなんです。なのでもらえるケースはごくまれということですね。

離婚した夫婦に子供(とくに未成年)がいる場合、母(父)方に引き取られて生計を共にしている場合が多いですよね。

このように母(父)方と一緒に暮らしていると、遺族基礎年金を受給できる資格があっても支給を停止するという決まりになっているのです。
でも、それだと元夫(妻)から受け取るはずだった養育費はどうなるの?と思いませんか。

そこで、遺族厚生年金だと受給できる可能性がありますので、次に詳しくご紹介したいと思います。

【ケース②】遺族厚生年金の場合なら、子供がもらえる可能性がある

厚生年金の被保険者であった方が亡くなった場合、その遺族に支給されるのが「遺族厚生年金」。

遺族厚生年金であれば、離婚後でも子供が受給できる可能性があります。

ただし受給要件を満たす必要があり、無条件で受け取れるというわけではないので注意が必要。

遺族基礎年金の受給要件を満たし、かつ亡くなった被保険者と子供に生計維持関係があったと認められれば、受給可能なのです。

でも、一緒に暮らしていなかったら生計維持関係があったってどうやって証明するの?
次のような関係がつづいていれば、証拠とみなされる可能性があります
生計維持関係の証拠となるもの
  • 養育費の支払いがあるか?
  • 定期的に面会しているか?

子を持つ夫婦が離婚する場合、養育費の取り決めをすることが重要だと言われています。これは子供の権利であり、親の責務であるので当然とはいえば当然のこと。

具体的には、養育費の振込履歴となる通帳のコピーや、手渡しの場合には領収書、そしていつ面会したか?などの記録があれば、生計維持関係を証明できるとされています。

遺族厚生年金は収入や厚生年金への加入月数によって支給額は異なるものの、受け取れるなら子供の生活費や将来の教育費として使えますし、かなりのプラスとなることでしょう。

そのため、離婚時に養育費の取り決めを行う際には必ず支払われるようにしておくことが重要です。

ただし離婚後の養育費の支払いが滞ると、生計維持関係の証明が難しくなってしまうので注意しておきましょう。

離婚後の遺族年金。元妻(夫)ではなく子供は受給できる可能性あり

離婚した元夫婦は、老後もらえる年金分割とは異なり、もう夫婦(生計維持関係)ではないので遺族年金を受け取ることはできません。

子供であれば、「遺族厚生年金」を受給できる可能性があります。

遺族基礎年金も受給できないことはないですが、母(父)と生計を共にしているケースが多いので、こちらは支給停止になることがほとんど。

遺族厚生年金でも、子供なら無条件に受け取れるわけではありません。

遺族基礎年金の受給資格を満たしたうえで、養育費の支払いなど生計維持関係の証明が必要です。

また亡くなった方が自営業など、そもそも厚生年金の被保険者でない場合には遺族厚生年金は受け取れません。

離婚相手が亡くなり、「自分の子供に遺族年金の受給資格かあるのか」「いくらもらえるのか」などは、最寄りの年金事務所などで確認をしてみましょう。

※掲載の情報は2019年10月現在のものです。
監修者メッセージ

子のある妻が夫と離婚した場合、母子ともに遺族基礎年金は受け取れなくても、子が遺族厚生年金を受け取ることができることがあります。

これだけでも複雑ですが、元夫が再婚した場合や元夫が再婚して後妻との間に子をもうけた場合もありますので、判断に迷うときは社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFPの資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。