
ジモティ―を利用して不動産の個人売却をすることはできる?
不動産を売却する際には一般的に不動産会社に仲介をお願いするケースが大半です。
しかし中には、身の回りで不要なった日用品を売るような個人売買サイト上で不動産を売却するケースも出てきています。
しかし不動産の個人売買はトラブルの元となることが多いため、おすすめできません。
今回は個人売買サイトで有名なジモティーを例に挙げて、不動産の個人売買について詳しくお伝えしていきます。
ジモティーで不動産を売却してみようと考えている方は特に参考にしてみてください。
ジモティーを使った個人での不動産売却は可能!メリットを詳しく説明
「不特定多数の人との売買」や「業として繰り返し行われる売買」でなければ、個人で不動産を売買することは、法的にも何ら問題ありません。
個人売買サイトはオークションも含めれば人気のサイトがいくつもあり、使わなくなった家電品や日用品だけでなく、フェラーリのような高額な高級スポーツカーや不動産についても普通に売買情報が掲載されています。
不動産の個人売買には特別な資格が必要なわけでもありませんので、ジモティ―のような個人売買サイトを利用して売却することは不可能ではありません。
ジモティーを利用して不動産を売却するメリットには、次のようなものがあります。
詳しくみていきましょう。
メリット1:仲介手数料を払わなくて済む
不動産業者を使って普通に売却すると、仲介手数料がかかります。
例えば、不動産を5,000万円で売却した場合の仲介手数料は「(売却価格✕3%)+6万円+消費税」となり、合計で171万6,000円も必要。
手数料0円のジモティーで不動産を売れば、仲介手数料を払わずに済みます。
メリット2:広告費の支払いが不要
不動産を売るときに不動産ポータルサイトやチラシ広告などで宣伝を行えば、広告費がかかります。
ジモティーは掲載料が0円のため、広告費をかけずに物件の宣伝が可能です。
ただしジモティーは地元の方に探してもらいやすいような作りとなっているため、遠方の方へ宣伝するには不向きでしょう。
メリット2:消費税の支払いが不要
土地や事業者以外の個人の建物を売却する際、基本的に消費税は発生しません。
しかし次に挙げる手数料は、サービスの提供に対する対価ということで消費税がかかります。
- 不動産業者への仲介手数料に発生する消費税
- 司法書士に抵当権の抹消登記を依頼する場合の、報酬に発生する消費税
個人売買でこれらの業者のサービスを利用しない場合、これらの手数料に対して発生する消費税についても非課税となり、払う必要がなくなってきます。
たとえば5,000万円で不動産を売却した際の仲介手数料では、156,000円もの消費税が発生します(税率10%)。
また売却時にローンの残債がある場合、完済して抵当権を抹消しなくてはいけません。
住宅ローンを借主が返済できない場合、建物・土地を担保とする権利のこと。
抵当権を抹消するための登記は、自分でも可能。しかし必要書類のなかに有効期限付きのものがあるため、迅速に進めるには司法書士への依頼が安心です。
この場合、司法書士への報酬部分に対する消費税がかかります。金額は1万円前後となることが多いようです。
それでは実際に個人売買をする場合、どのような流れで売却すればいいのでしょうか。
次にジモティ―を使って個人売買する場合の方法について、ご紹介していきましょう。
ジモティーを使って不動産を売却(個人売買)する方法
ジモティーを使った不動産の個人売買は、次のような流れで進みます。
詳しく見ていきましょう。
手順1.権利関係の確認
法務局にて売却対象となる土地や家の登記簿謄本を入手し、権利関係を確認しておきます。
特に相続した土地や家屋などの場合では、所有者が親の名義のままであったり、隣地との境界線があいまいになっているケースも考えられます。
場合によっては境界確定のための測量が必要となる場合もあり、入念に準備しましょう。
また不動産を売却して住宅ローンを完済する場合、銀行に連絡して書類関係の手配をおこないます。
手順2.売却価格の決定とジモティ―で売却開始
不動産の売値を決めるのは、経験がないと難しいですよね。
次のような方法を試して、提示された金額を参考にしてみましょう。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産ポータルサイト内で近隣の物件相場を調べる
不動産会社は近隣を1社1社あたってみてもよいのですが、不動産一括査定サイトの利用が便利です。
ただし査定して提示された金額を、そのまま売値とするのはおすすめできません。
あまりに相場よりも高い売却価格を設定すると、売れ残りリスクになる可能性があるので注意しましょう。
査定結果だけでなく、近隣の物件相場も参考にしておくと妥当な金額を決めやすいですよ。
売却価格が決まれば、いよいよジモティ―に必要な情報を掲載して買主を探し始めることになります。
手順3.買主の内見立会いと条件交渉
内覧の問い合わせがあれば、予約を受けて当日に立会います。
内見者からの質問等を想定し、すぐに答えられるように準備しておきましょう。
当日訪れた内見者に手渡しできるような、図面や売却物件の簡易な書面も用意しておくと便利です。
購入の申し込みを受けたら、価格交渉が始まる場合があります。
最終的な売買価格や引渡し日について、きちんと話し合うようにしましょう。
手順4.売買契約書の作成
ネットなどで入手可能な売買契約書のひな形を参考にして、契約書を作成します。
以下の情報は主な記載事項です。
- 売主と買主の氏名や住所
- 物件基本情報
- 売買金額と支払い時期や方法
- 手付金の金額や受領時期
- 契約解除条項や違約金
- 物件の引渡し日
- 住宅ローン特約(買主側のローンが下りなかった場合の契約解除に関する取り決め)
- 固定資産税の清算
- 瑕疵担保責任
- 災害・天災発生時の損害負担
瑕疵担保責任を売主側に設定する場合は、3カ月以内など期間をはっきりと決めておきましょう。
契約時に買主が気づかなかった欠陥(瑕疵)に対し、売主が責任を負う期間と範囲を定めたもの。民法では「買主は瑕疵を知ったときから1年間、売主に責任追及ができる」としている。
古い物件の場合には、瑕疵担保免除とする場合も多くみられます。ただし買主の同意が必要です。
瑕疵担保責任については、「個人で土地を売買するときは、瑕疵の有無をしっかり確認・説明しよう」でも詳しく説明しています。
また「物件に不具合がないか専門業者が調査するインスペクション」や「瑕疵保険」については、次の記事を参考にしてみてください。
なお契約書に必要な収入印紙の負担割合についてもきちんと買主と話し合い、忘れずに契約書に貼り付けましょう。
不動産売却で必要な書類については、次の記事でも詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
手順5.売買契約の締結と手付金受取り
売主と買主双方で問題なければ、売買契約の締結となります。
契約書は売主と買主双方の2冊分について、署名・捺印の他、印紙を貼って割印します。
同時に、買主と予め決めておいた手付金(一般的には売買代金の10%)を受領します。
手順6.残金清算と物件引渡し、司法書士に依頼する登記手続きの完了
物件の引渡し日には、売買代金を清算します。
手付金を受け取っている場合は、手付分を差し引いた残りの代金について振込を済ませてもらいます。
入金の確認が取れたら、鍵を渡して物件引渡し完了です。
同時に予め依頼しておいた司法書士に登記手続きをおこなってもらえば、全ての売却に関する手続きが完了です。
なお売却する物件に住宅ローンが残っていたり、買主も住宅ローンを組んで購入する場合、一般的には銀行の会議室などの場所を借り、司法書士も立ち会ってもらっての決済となります。
買主が住宅ローンを組む場合には、買主が借入れをおこなう銀行の一室を借りるケースが多いでしょう。
次の章では、ジモティーを使って不動産の個人売買を行うデメリットを説明します。
ジモティーを使った不動産売却で起こりうるデメリットやトラブル
ジモティ―を使った不動産の個人売買には、次のようなデメリットがあります。
それぞれ、みていきましょう。
買主探しや価格交渉、トラブル対応を直接行わなければならない
不動産会社へ売買の仲介を依頼すれば、買主探しも業者が行ってくれます。
しかしジモティ―を利用した個人売買では、自分で買主を探さなければなりません。
ジモティ―に掲載する売却情報も、内見希望者が現れるような工夫が必要です。
また次のような対応も、すべて自分で行わなければいけません。
- 物件の問い合わせ対応
- 内見者希望者への物件案内や質疑応答
- 購入希望者との価格交渉
- トラブル対応
このため、仕事で忙しい方や経験・知識のない方は大変苦労をします。
レインズに登録できない
不動産会社は「レインズ」を使って、幅広く買主を探すことができます。
業者同士で不動産の販売情報を交換できる、ネットワークシステムのこと。
レインズに登録された物件情報は全国すべての不動産会社に共有されるため、広範囲で買主を探せます。
個人ではレインズを利用できないため、ジモティーを使う場合は主に「地元の方向けの情報発信」となるでしょう。
レインズに登録できないということは、限りなく売却のチャンスを狭めてしまうのです。
売買契約書などの必要書類を自分で準備しなければならない
必要な事項は漏らさず明記した契約書などを、予め自分自身で用意しておく必要があります。
特に漏れがあると、後々のトラブルにつながる可能性があります。
また個人では「重要事項説明書」の作成や買主への説明ができません。
登記簿に記載された事項や法令にもとづく制限や、契約解除などの重要事項を記載した書類のこと。これは買主が土地購入にローンを組む際に、銀行から求められることがある。
しかし「宅地建物取引士」の有資格者でなければ、重要事項説明書の作成はもちろん、実際の買主への説明もできません。
個人売買では売買契約書にできるだけ詳細に記載し、トラブルがないよう契約時に売主・買主双方の同意が必要。
不動産取引のプロである仲介業者なら当たり前のことでも、いざ個人で進めるととても大変なのです。
ジモティーではなく不動産会社を通じた売却のメリット
ジモティ―ではなく不動産会社に仲介依頼した場合、次のようなメリットがあります。
- 物件に合った宣伝ができるため、売れる可能性が高まる
- 仲介業者が問い合わせ対応や契約を進めてくれる
- 個人でイチから始めるより早く売れる可能性がある
様々な不動産サイト・広告によって、物件情報を広く他の不動産会社や購入希望者の元へと届けてくれます。また、売却にはもはや必須ともいえるレインズも利用できます。
その結果、売却の成功率が個人で売却する場合に比べるとはるかに高まります。
また買主とのトラブルがあっても、仲介業者が間に入ってくれるため解決しやすくなります。
売買契約書や重要事項説明書といった必要書類もすべて準備してくれますし、売却活動から契約、さらに物件引渡しまで全ての業務を代わりに行ってくれるのです。
一方でジモティ―を利用した個人売買で得られるメリットは、費用負担が軽くなることだけ。
ただし不動産のプロでない素人が売却しようとすれば売却できないリスクや詐欺などのトラブルに遭う可能性もあります。
もし裁判沙汰になり買主から損害賠償が請求されてしまうと、個人売買での節約分よりも多額の費用が必要となるかも知れません。
不動産取引のプロである不動産会社に仲介依頼すれば、そのようなリスクを回避してくれるだけでなく、最大の目的である売却の成功に最短の道のりへと導いてくれるでしょう。
ジモティ―を利用した不動産の個人売買はメリットが少ない
個人売買自体はジモティ―などの売買サイトを利用しておこなうことも可能ですが、そこから得られるメリットよりもデメリットのほうが大きいと言えるでしょう。
確かに個人売買であれば仲介手数料や消費税などを節約できますが、それ以上の面倒な手続きやトラブル発生のリスクがあります。もしトラブルが発生すれば、節約した分より多額の費用がかかってしまう可能性も。
仲介手数料はかかるものの、不動産会社に仲介依頼すると全ての手続きをおこなってくれるだけでなく、何よりも売却が成功する確率がはるかに高まります。
このメリットには時間や労力、安心感など単にお金だけでは計れない価値があります。
個人売買と仲介依頼のどちらにするかで迷ったら、それぞれのメリット・デメリットについてくれぐれもよく検討してから決定するようにしましょう。
ジモティ―での不動産売却やオークションサイトでの不動産売却、物件事例としては見ることがありますが、実際に取引が成立しているかどうかは情報が無いためわかりません。
宅地建物取引業法が制定され、不動産仲介業者の業務に対する法律上の制限は、個人の売主や買主を個人間売買のリスクから保護するためでもあります。

中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。