保険の基礎知識
公的医療保険と公的介護保険の違いとは?内容の比較と併用できる例

公的医療保険と公的介護保険の違いとは?内容の比較と併用できる例

保険には民間や公的なものなどいろいろな種類がありますが、今回は公的な医療保険と介護保険の違いを説明します。医療保険のことについてはなんとなく知っている人もいるかもしれませんが、介護保険については実際にどんな保障内容なのかあまり詳しくない人もいると思います。

医療保険は幅広い年代で利用されるものですが、介護保険は一定の年齢にならないと利用する機会がありません。どんな人でも年を重ねると利用する機会があるかもしれないのでしっかりと覚えておきましょう。

介護保険と医療保険とは?公的保険の仕組み・内容について

公的介護保険と公的医療保険にはいくつか違いがあります。まずはそれぞれの特徴や仕組みを確認してみましょう。

公的な介護保険の仕組みと特徴

介護保険は所定の要介護状態(要介護2〜5・重度要介護)によって支給限度額が異なります。要介護状態とは以下のような状態となります。この介護保険は40歳未満の人は利用できません。

要介護認定等基準時間
要介護2 50分〜70分
要介護3 70分〜90分
要介護4 90分〜110分
要介護5 110分以上
重度要介護 常時寝たきり状態であり、自力では歩行や着替え・入浴ができない状態
要介護認定等基準時間とは
福祉・介護施設に入所している高齢者3,500人が48時間でどのくらい介護サービスを受けているか調べた結果である「1分間タイムスタディ・データ」の中からコンピューターを利用して介護時間を算出したものです。

介護保険の加入者は「第1号被保険者」「第2号被保険者」で分かれています。

第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳から64歳の人が対象となります。第1号被保険者がサービスの対象となりますが、第2号被保険者は以下の疾病で介護認定を受けた時に介護保険を利用することができます。

  • 末期ガン
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺
  • 脊髄小脳変性症、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

公的介護保険については次の記事でも詳しく解説しています。

公的な医療保険の仕組みと特徴

続いて医療保険の仕組みや特徴について説明していきます。

公的な医療保険は基本的に産まれた時から全員加入しているものです。

この保険は亡くなるまで続きます。公的医療保険の種類には「協会けんぽ」や「国民健康保険」があります。

協会けんぽ 国民健康保険
加入者 会社員 自営業、フリーランス、専業主婦
医療費自己負担分 6歳未満・70歳以上2割、
6歳〜70歳未満3割
6歳未満・70歳以上2割、
6歳〜70歳未満3割
傷病手当金 3日の待機期間を含む4日以上連続で仕事に就けなかった時
「報酬比例日額×3分の2」が支給される
なし
高額療養費 1ヶ月の医療費の超過分が還付される 1ヶ月の医療費の超過分が還付される
出産育児一時金 あり(42万円) あり(42万円)
出産手当金 出産のために会社を休み給与が受け取れない場合に支給される なし

上記の表でわかる通り、同じ医療保険でも協会けんぽなのか国民健康保険なのかによって保障される部分・もらえる給付金は異なります。

介護保険と医療保険の違いとは?給付金はどのくらい?

介護保険と医療保険は年齢も保障となるものも違います。

介護保険 医療保険
加入対象 40歳以上 原則として全国民
給付金がもらえるサービス 介護予防給付・介護給付 傷病手当金・出産一時金
自己負担割合 1割〜2割 2割〜3割

介護保険は介護状態になった場合に利用し、医療保険には基本的に利用条件はありません。

要介護認定された第1号被保険者は介護保険のサービスを受けることができます。掃除や買い物、洗濯などの訪問型家事支援や入浴や排泄のお世話もサービスとして受けることができます。また、介護ベッドや車椅子などの介護用品のレンタルもできます。

では介護保険と医療保険は金額的にどのくらい保障があるのかを説明します。

介護保険の限度額
給付限度額 1割自己負担 2割自己負担 3割自己負担
要支援1 50,030円 5,003円 10,006円 15,009円
要支援2 104,730円 10,473円 20,946円 31,419円
要介護1 166,920円 16,692円 33,384円 50,076円
要介護2 196,160円 19,616円 39,232円 58,848円
要介護3 269,310円 26,931円 53,862円 80,793円
要介護4 308,060円 30,806円 61,612円 92,418円
要介護5 360,650円 36,065円 72,130円 108,195円
医療保険の限度額
標準報酬月額 限度額
83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
53万~79万円の方 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
28万~50万円の方 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
26万円以下の方 57,600円
低所得者 35,400円

なお、これは70歳未満の限度額です。そして医療費が高額になった時には「高額療養費制度」があります。

「高額療養費制度」を利用することによって医療費の月額上限を超えた分は戻ってきますが、一時的に全額負担しなければいけません。

高額療養費制度については次の記事で詳しく解説しています。

介護保険と医療保険は原則併用できない

原則として介護保険と医療保険の併用はできないことになっています。リハビリに関しては40歳から64歳までは医療保険、65歳からは介護保険を利用してサービスを受けることとなります。

原則ということは2つの公的保険を併用できる場合はあるのですか?
末期ガンの時や利用する時期が異なる場合などいくつか利用できる場合はあります。詳しく確認していきましょう。

末期ガンの場合

難病として認められている病気の場合は介護保険と医療保険の併用が利用できることになっています。

利用する時期が違う場合

同じ診断名であったとしても医療保険利用後、翌月になれば介護保険を利用できる場合はあります。

診断名が違う場合

同じ月であっても診断名がそれぞれ異なればどちらの保険も利用できる場合があります。

介護保険と医療保険どちらを利用するのかは自分では決めることはできません。また、どちらも保険適用内での保障となります。どちらを使用するのか迷う必要はなく、病院で決めてもらえるので相談してみましょう。

介護保険と医療保険、優先して使用されるのはどっち?

どちらも対象となる人が優先して使用される保険は「介護保険」です。

病気の回復目的でリハビリや訪問介護を利用する時に介護保険を使用することができます。基本的に介護保険を優先して使用しますが「訪問介護指示書」がある時には医療保険を使用することになります。

介護保険料と医療保険料はどのように納付するのですか?
給与から天引き、口座振替、納付書での支払いがあります。

介護保険は40歳から支払い義務があり、64歳までは「給与から天引き」「口座振替」「納付書」と決められています。65歳以上の人は「年金から天引き」されます。

医療保険も同様ですが、被扶養者は保険料が免除されます。

公的制度を活用しつつ民間の保険を検討する

公的な介護保険・医療保険で医療費は賄えることもありますが、どうしてもまとまったお金が必要になります。そんな時に民間の医療保険に加入しておくと安心して治療に専念することができます。また、保険適用外の医療費や介護費用、差額ベッド代は公的な保険を利用することができません。

公的な制度で自分や家族がどのくらい保障されるのか確認して、保障が足りないと感じた部分には民間の保険を活用することをおすすめします。

民間の保険に加入することで先進医療の保障や住宅のバリアフリー設備の費用に充てることができます。自分の年齢やライフプランに応じて医療保険や介護保険について考えてみましょう。