定年退職・退職金

定年退職で退職金を受け取る前に!知っておきたい制度と手続き

60歳や65歳を迎えるとやってくる「定年退職」は、実際に経験をしてみるまで、どのような準備をしたらよいのか、なにに気をつけたらよいのかわかりませんよね。

国の制度やルールは時代とともに変わり続け、ひと昔前の常識があっという間に古い情報となっているケースも数多あります。定年退職や退職金について、最新の情報をしっかりと取り入れ、正しい知識を身につけて老後に備えておきたいものです。

国の制度や最新データをもとに、定年退職&退職金に関する知っておきたい大切な情報を、わかりやすくまとめて解説します。

定年退職時に気をつけたい!国の制度と手続きチェックポイント

わしゃ、ずっとサラリーマンを続けておったから、税金やら保険やらの支払いは全部会社がやってくれておったんじゃ。先生、定年退職をしたら、自分で全部やらなくちゃいけなくなるんですかのう?
そうですね、定年退職をするとさまざまな手続きの必要性が出てきます。どんな内容かを事前に知っておくだけで、退職時にずいぶんと楽になりますよ。

定年退職年齢は60歳から65歳へ。まずは変わりゆく制度を知ろう

高度経済成長を遂げた日本では、「60歳になったら定年退職」という流れが一般的でした。

しかし、2013年4月の「高年齢者雇用安定法改正」により、企業には従業員の雇用を65歳まで確保する措置をとることが義務付けられるようになりました。

本改正により、企業は以下3つのうちいずれかの対応をする必要があります。

  1. 定年を60歳から65歳まで引き上げる
  2. 定年制度を廃止する
  3. 継続雇用制度を導入する

これらの制度は、年金受給開始年齢が引き上げられたことに伴って導入されました。今まであった「60歳になったらリタイア」というイメージは崩壊し、60歳を超えても働く人やキャリアを変える人が増えています。詳しくは次の記事にて解説しています。

このような国の制度改正を背景に、各企業における定年制度や退職金についても多様性が広がっています。近年では転職市場も活性化しており、定年年齢まで一つの企業に勤め上げるスタイルだけでなく、転職をしてキャリアアップをする働き方も増えています。

企業によっては、定年年齢の引き上げにより増大する人件費を調整するために、任意で退職者を募る「早期退職制度」を導入している場合もあります。

早期退職制度においては次の記事にて詳しく取り上げていますが、定年退職を迎える前に会社を辞めることと引き換えに、割増退職金のような優遇措置を受けられるケースがあります。

このように時代とともに大きく変化を遂げる労働環境において、定年退職や退職金の新しい制度についても正しく理解をすることが大切です。

定年退職をしたら、健康保険や確定申告の必要性を考えよう

定年退職にともない会社を辞めると、税金や保険料などいくつかの忘れてはいけない手続きが出てきます。

その中で、特に検討しておきたいのが「健康保険」の選択です。

サラリーマンであるうちは、給与から天引きをして支払われていた健康保険料ですが、定年退職をするとご自身で健康保険を選び、保険料を納めなければなりません。

健康保険の選び方は、個人の所得や条件に合わせて、以下から選ぶことができます。

  1. 加入していた健康保険を任意継続する
  2. 国民健康保険に加入する
  3. 家族の被扶養者になる
  4. 再就職先の健康保険に加入する

加入条件や保険料は個人によって異なりますので、それぞれの状況に合わせて賢く選びたいところです。健康保険の選び方については、こちらのページで詳しく学ぶことができますよ。

さらに、サラリーマン時代は「年末調整」といって、所得による税額を会社が代わりにおこなってくれていました。しかし、会社を辞めるとご自身の収入に関して申告をするのも自分自身となります。

基本的に「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで確定申告は不要ですが、場合によっては確定申告をした方がお得なケースもあります。

確定申告の必要なケースや手続き方法については、こちらのページをチェックしてみてくださいね。

定年退職をすると、それまで会社が肩代わりをしてくれていた手続きをさまざまに自分でおこなう必要が出てきます。いざというときに焦らないよう、事前にどのような準備が必要か把握しておきましょう。

退職金はどれくらいもらえる?そもそも退職金のある・なしは企業による

うちの主人が定年退職をしたら、きっとたくさんの退職金がもらえるのよね。それを頼りにしていてもいいのでしょうか?
その判断は少々キケンかもしれません。実をいうと、退職金制度はある会社とない会社があるんですよ。

退職金はあくまで企業任意の制度。有無をしっかり確認しよう

「定年退職をしたら退職金がもらえる」と当たり前のように考えてしまうのは尚早です。そもそも退職金とは、国の法律に定められた制度ではなく、企業が任意で設ける給与制度の一つです。退職金の金額や支払い方法、さらに制度の「ある・なし」も、すべて企業に一任されています。

実際のところ、厚生労働省調べの「平成30年就労条件総合調査」によると、調査対象の有効回答数のうち80.5%の企業で退職金制度が設けられていることが報告されています。

つまり、5社に1社は退職金制度がないということです。

すべての会社に退職金があるわけではないことを肝に銘じておきたいですね。ご自身の勤めている企業に退職金制度があるかないかは、各企業で規定している就業規則や人事部・総務部などの担当部署で確認することができます。

退職金の種類は広がっている!従業員が選べる制度も増加中

退職金と聞くと、会社を辞めるときに多額のお金を一括で受け取るイメージをお持ちのかたも多いのではないでしょうか?最近では、働くスタイルの多様化に伴い退職金の支給方法にもさまざまなパターンが現れています。大きく分けて、以下のような支給方法があります。

退職金の支払い方法
退職一時金 退職金の全額を一括して受け取ること
退職年金 退職金を一定期間または終身で分割して受け取ること
併給(退職一時金+年金) 退職金の一部を一時金として受け取り、残りを年金として分割して受け取ること
退職金前払い 退職金を分割して、月の給与や賞与に上乗せして受け取ること

それぞれのもらい方のメリット・デメリットは次の記事で解説しています。

近年ではこれら複数の退職金制度を併用し、従業員が自分で制度を選べる企業も増えています。ご自身の勤め先がどのような制度を導入しているかどうかは、会社の就業規則や給与規定で確認するようにしましょう。

それぞれの制度の特徴や違いについて、詳しく解説した記事をご紹介します。どの記事も大切なポイントが記載されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

退職金の種類の記事一覧

退職金の平均相場を知りたい!最新データをチェック

さて、もし退職金がもらえるとしても、一体いくらくらいのお金を受け取ることができるのでしょうか?中央労働委員会の「賃金事情等総合調査」で、退職金の平均支給額データをみてみましょう。

平均退職金支給額(勤続35年の場合)
調査年/学歴別 大学・院卒 高校卒
平成21年度 2290.2万円 1883.4万円
平成23年度 2646.2万円 1904.9万円
平成25年度 2260.9万円 1850.9万円
平成27年度 1978.1万円 1541.4万円
平成29年度 2212.9万円 1260.2万円

平成27年度調査までは平均して退職金が減少傾向にありましたが、ここ数年退職金の支給方法が多様化したことにより、退職金支給額の減少に歯止めがかかっています。

現状では平均して多くの退職金が支給されていますが、だからといってこの傾向がいつまで続くかはわかりません。

退職金の過去の推移や詳しい平均相場については、こちらのページでさらに詳しく確認することができます。

会社に退職金があればよいですが、もしも退職金の制度自体がない場合はどうしたらよいのでしょうか。退職金がなくても、もしかしたら毎月の給与に将来の退職金に充てる金額が上乗せされているケースもあります。

まずはしっかりと勤務している会社のルールを把握することが大切です。社内での就業規則を確認する方法や、退職金が不当に払われない場合の対処法はこちらのページで確認してみてくださいね。

老後は年金暮らし?継続雇用?広がり続けるミドルシニアの選択肢

定年退職をしたら、やっぱり収入は年金だけになっちまうんスかね。それって正直不安だなぁ。
老後のお金事情には不安がつきまといますよね。定年退職後のお金の考え方についてみていきましょう!

年金はいつから、いくらもらえるの?年金のキホンをおさらい

日本の「年金制度」は、国の社会保険のひとつです。老後働くことができなくなっても自立した生活を営めるように、社会全体で高齢世代を支えています。この年金の受給開始時期が段階的に60歳から65歳へと引き上げられたことによって、60歳で定年を迎えても働き続けるミドルシニアが増えています。

「年金」と一言でいっても、国民年金や厚生年金など種類が複数あり、どの年金に加入しているかは個人によって異なります。また、加入している年金によって支給額が異なるため、老後受け取れるお金の額も変わります。

厚生労働省の『平成29年度の年金額改定について』では、平成29年度における67歳以下の年金額例を見ることができます。

平成 29 年度の新規裁定者(67歳以下の方)の年金額の例(月額)
年金の種類 年金額の例(月額)
国民年金 64,941円(老齢基礎年金1人分)
厚生年金 221,277円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)

※厚生年金は、夫が平均的収入(42.8万円)かつ40年間就業し、妻が専業主婦であった場合の給付水準です。

いくら国から年金がもらえるといっても、しっかりと貯蓄をしておかないと、不安定な老後生活になってしまいそうですね。

なお、実際に各個人が支給される年金額は、毎年の誕生月に送付される「ねんきん定期便」やインターネットの「ねんきんネット」、または「ねんきんダイヤル」から見込額試算を確認することができます。年金に関する詳しく情報は、こちらをご覧ください。

定年退職後も働くチャンスはある。60歳以降の活躍の場は増えている

もちろん、年金を受け取りながら貯蓄で生活をしていくだけでなく、定年退職後も働くという選択肢があります。

近年では、シニア世代が活躍できる就業場所が増えたことで、65歳以上のシニア世代が占める労働力人口総数が12年以上連続で増え続けています。

定年退職後も働く意欲をもつミドルシニアは、資格を取得したり、シニア向け求人サイトなどを活用したりと多彩な働き方を実現しています。シニア世代専用の求人サービスや相談窓口も増えているため、仕事探しのハードルも下がってきています。

定年を迎えても働き続けることができれば、年金以外の収入源を確保でき、暮らしの安心にもつながりますね。

継続雇用制度なら同じ職場で働ける。だけど賃金が下がるかも?

各企業では「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」によって、65歳までの安定した雇用を確保するために、「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のうちいずれかの措置を講ずる義務を負っています。

なかでも『継続雇用制度』は、60歳以上の希望者が同じ企業で職種や雇用形態を変えて働き続けることができる制度です。しかし、場合によっては希望の仕事に就けなかったり、賃金が減ったりしてしまうケースがあります。

そのような場合に応じて、国では定年退職後に下がった給与の一部を補うことのできる「高年齢雇用継続給付」を設けています。

次の記事で詳しく解説する本制度では、原則60歳以降の給料が60歳時点の賃金と比べて75%未満に減少した場合に給付金を受け取ることができます。

また、定年退職まで待たずに早期退職をし、割り増し退職金といった優遇措置を受けながら第二の人生をスタートさせる方もいます。しかし、早期退職をすると退職金の税制優遇措置を受けられない場合があります。選択肢が広がるからこそ、メリット・デメリットをしっかりと検討していきましょう。

働くだけじゃない、資金運用でお金を増やす方法もある

また、貯蓄や退職金を上手に活用して、資産運用でお金を増やしていくという選択肢もあります。一定額以上の資産がある場合は、ただ銀行に寝かせておくだけでなく、運用の知識を学んで賢くお金を増やしていくこともできます。

資産運用をする場合は、まず定年退職後の暮らしにどれだけのお金がかかるかを把握し、資産運用に回せる費用を明確化することが大切です。

退職をすると、保険や税金にかかる費用も自分たちで工面をしなければなりません。まずは直近1年間で必要なお金を洗いだしてみることから始めましょう。

老後資金の分類の仕方
  • 当面の生活資金
  • 税金や保険料にかかる資金
  • すぐではないが今後発生する予定資金(急な医療費や冠婚葬祭にかかる祝い金など)
  • 当面使う予定のない資金

ここで「当面使う予定のない資金」が資金運用に充てることのできるお金となります。資金運用には、銀行の定期預金や株、投資信託などさまざまな種類があります。まずは少しずつ投資の勉強をはじめ、リスクの少ない運用から始めてみるとよいでしょう。

退職金の資産運用については、こちらの記事で詳しく解説しています。

焦りは禁物!事前の準備と正しい知識で悠々自適なセカンドライフを

定年退職をするにあたって、初めてのことが多く戸惑うこともたくさん発生するかもしれません。制度やルールが少し複雑な点もありますが、しっかりと事前準備をしておくことで、知らなかったときよりもたくさんのメリットが得られます。

定年退職前に確認しておきたい大切な項目のチェックリスト「定年前にやっておくことをチェック!定年退職に向けた準備マニュアル」の記事もぜひ参考にしていただき、定年退職後のゆとりある暮らしへ備えてくださいね。

定年退職を経て、また新たな第2の人生がスタートする方も多いのではないでしょうか。情報の溢れる社会だからこそ、正しく冷静な判断をしながらより豊かな人生を開拓していきましょう。

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