国民年金の繰り下げで受給金額が増える!デメリットや手続方法も解説
65歳からもらえるという国民年金。
実は「繰り下げ受給」すると、受給金額が増えるって知っていましたか?
近年では平均寿命も延びているので、もらえる年金が少しでも増えるなら嬉しいですよね!
ただ、本当に繰り下げ受給した方がお得なのか?むしろ繰り下げ受給のための待機期間中に亡くなってしまったら損なのではないか?と不安に思っている方もいるかもしれません。
そこで、将来もらえる年金を増やしたいけれど「本当にお得なのか知りたい!」という方に向けて、国民年金の繰り下げ受給についてわかりやすく解説していきたいと思います。
国民年金の繰り下げで受給金額が最大142%にUP?仕組みを解説
本来ならば、65歳からもらえる国民年金。
65歳では受け取らず、もっと遅い時期から受け取るという選択もでき、これを「繰り下げ受給」といいます。
繰り下げ受給をした場合、年金額は1ヶ月当たり0.7%UPします。
年齢別の増加率は、次のとおりです。
65歳0ヶ月 | 0% |
---|---|
66歳0ヶ月 | 8.4% |
67歳0ヶ月 | 16.8% |
68歳0ヶ月 | 25.2% |
69歳0ヶ月 | 33.6% |
70歳0ヶ月 | 42.0%(最大) |
次の表では、平成31年(令和元年)度(4月分以降)における老齢基礎年金の年金額780,100円(満額)に当てはめて計算しています(※金額は四捨五入)。
65歳0ヶ月 | 780,100円 |
---|---|
66歳0ヶ月 | 845,628円 |
67歳0ヶ月 | 911,157円 |
68歳0ヶ月 | 976,685円 |
69歳0ヶ月 | 1,042,214円 |
70歳0ヶ月 | 1,107,742円 |
国民年金の受給を70歳まで繰り下げると、老齢基礎年金の金額は1,107,742円に。月額に直すと、なんと約92,312円にもなります。
ここではキリの良い年齢の増加率のみをご紹介しましたが、繰り下げる期間は1ヶ月単位で設定できます(実際の支給は66歳以降)。
したがって、さすがに70歳までは待機できないという人でも少しは受け取り時期を延ばせるかも?と検討しやすいですね。
会社員の方は検討を!基礎年金と厚生年金それぞれで繰り下げ受給可能
実は繰り下げ受給できるのは、何も老齢基礎年金だけではありません。
もちろん老齢厚生年金も繰り下げ受給することができます。
気になる増加率ですが、老齢基礎年金と同様に1ヶ月あたり0.7%増。最大で42%まで増やすことができます。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金はそれぞれ別々に繰り下げることも可能。
年金収入が0円になるのは嫌だけど、将来のことも考えて少しでももらえる年金額を増やしたい!という方は、老後資金の状況に応じて「どちらか一方のみを繰り下げ受給する」ということもできますね。
老齢厚生年金の繰り下げ受給に関しては、こちらの記事でも解説しております。
国民年金を繰り下げるメリットって?繰り下げ受給の損益分岐点を解説
国民年金の繰り下げ受給するメリットは、なんといっても将来もらえる年金額が増える点です。
ただ、年金を受給できない期間=待機する期間があるから、繰り下げ受給することに本当にメリットはあるの?と思われるかもしれません。
そこで、国民年金を繰り下げ受給するメリットを、もう少し詳しくみていきましょう。
何歳まで生きればお得?繰り下げ受給でもとが取れる損益分岐点
国民年金を繰り下げ受給することで「本当にお得になるの?」という疑問に対しては、いわゆる「もと」が取れる損益分岐点を考えてみるとわかります。
例えば、65歳0ヶ月で受給を開始した場合と70歳まで繰り下げ受給してみたケースを考えてみましょう。
70歳 | 390万円 |
---|---|
75歳 | 780万円 |
80歳 | 1,170万円 |
80歳以降はこちらです。
81歳 | 1,248万円 |
---|---|
82歳 | 1,326万円 |
83歳 | 1,404万円 |
次に、70歳まで繰り下げ受給した場合を考えてみます。
70歳 | 0万円(受給開始) |
---|---|
75歳 | 550万円 |
80歳 | 1,100万円 |
80歳以降はこちらです。
81歳 | 1,210万円 |
---|---|
82歳 | 1,320万円 |
83歳 | 1,430万円 |
このことから、82歳~83歳のあたりでもらえる年金総額が逆転することがわかりましたね。
平均寿命が男女ともに80歳を超えている今、年金の繰り下げ受給はまさに「長生きするリスク」に備えられるといっても過言ではありません。
付加年金の加入者限定のメリット!繰り下げ受給で支給額アップ
国民年金の加入者が将来もらえる年金額を増やせる制度、それが付加年金です。
- 付加保険料は毎月400円
- 支給額は200円×納付済月数
- 国民年金第1号被保険者(もしくは任意加入被保険者)のみが対象
国民年金を繰り下げ受給すると、付加年金で増えた分も繰り下げ受給することになるため、受給総額が増えます。
国民年金が支給停止に?繰り下げ受給による4つのデメリット
国民年金を繰り下げ受給する場合のデメリットは、次のとおりです。
- 待機期間中は受給できない
- 長生きできなければ損をする可能性がある
- 他の年金をもらえる権利が発生すると、繰り下げできない
- 振替加算が受給できなくなる
- 待機中に亡くなった場合、遺族へ支給される金額は本来の支給額になる
繰り下げ受給すると、当然ですがその期間の年金は支給されません。そこで、働いて収入を得るor貯蓄を切り崩して生活を成り立たせる必要があります。
平均寿命が延びているとはいえ、長生きできるかどうかは誰にもわかりません。亡くなる年齢によっては、繰り下げ受給せずに65歳から年金を受給しておく方がもらえた総額が多かった、という可能性もあります。
そして他の年金を受給する権利が発生した場合、その時点で増額率が固定されます。
その後は繰り下げ受給しても年金は増えません、老齢基礎年金に加算される振替加算も受給できないので、注意してください。
最後に、もし待機中に亡くなってしまったらどうなるの?ということですが…
せっかく年金をもらわずに待機したとしても、途中で亡くなってしまったら待機した意味がなくなってしまいます。
国民年金の繰り下げ受給を考えている場合は、以上4点のデメリットは頭に入れておいた方が良いでしょう。
厚生年金の場合、振替加算や在職老齢年金の支給停止分は増えない
次に厚生年金加入の方が注意しなければならない点を、2点ご紹介しましょう。
- 加給年金が受給できなくなる
- 在職老齢年金の支給停止分は繰り下げ受給しても増えない
まず、厚生年金の配偶者手当ともいわれている加給年金について。
加給年金とは、65歳未満の配偶者や18歳未満の子がいると年間224,500円以上の加算がもらえる年金のこと。
加給年金は繰り下げ受給の待機期間中もらえないのはもちろん、もらえなかった分を後で受け取ることもできません。
ちなみに配偶者の生年月日や子の人数によって、加算額も変わってきます。詳しくは次の記事を確認ください。
働きながら年金を受け取る「在職老齢年金」についても、支給停止となっている部分は繰り下げ受給しても増えませんのでご注意ください。
なお老齢厚生年金の繰り下げ受給については、次の記事でも詳しく紹介しています。
国民年金を繰り下げ受給できる条件ってあるの?手続きについても解説
国民年金を繰り下げ受給するには、当然ながら65歳に達した日以後に受け取りに必要な加入期間を満たしていることが条件となります。
また繰り下げ受給の申請後、年金を請求できるまで1年間は待たなければなりません。
手続きは、「老齢基礎年金・老齢厚生年金支給額繰下げ請求書」を管轄の年金事務所または年金相談センターへ提出してください。
国民年金基金に加入している場合は注意!請求手続きを忘れずに
国民年金基金に加入されている場合、国民年金を繰り下げ受給しても国民年金基金は65歳からの支給となります。
国民年金の繰り下げ受給はお得になるラインの見極めが重要!
ただ老後に必要な資金をすべて貯蓄に頼るのは、正直厳しいという方もいるでしょう。そこで頼りになるのは、やはり年金です。
その年金も、65歳から受給せずに66歳以降に繰り下げ受給することによってもらえる金額がぐっと増えます。
しかし、万が一長生きできなかった場合や加給年金・振替加算などを受給している場合は支給停止となってしまうなどのデメリットもありました。
そういったメリット・デメリットをふまえて繰り下げ受給することで、本当にお得となるラインを見極めることが重要といえるでしょう。
繰下げ受給については、現在は原則として最大70歳まで年金の受給を遅らせることができますが、繰下げによる受給開始年齢を75歳まで遅らせる新しいルール作りが検討されているようです。
75歳まで遅らせれば、その分だけ増額率もアップするのでしょうが、今後の動向には注意しておいた方がよいでしょう。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。