
国民年金と厚生年金の違いは?切り替え手続きもわかりやすく解説
国が運営する公的年金には「国民年金」と「厚生年金」があります。どちらも耳にすることが多いものの、その違いがわからない人も多いのではないでしょうか。
この記事では国民年金・厚生年金の違いや、加入先を切り替えるときの手続きについてお伝えします。
国民年金と厚生年金は『2階建て』になっている
「国民年金と厚生年金は全く別物」というイメージがあるかもしれませんが、この2つの年金は「2階建て」になっています。
国民年金が1階部分、厚生年金が2階部分で、そのほか企業年金・任意加入できる個人年金が3・4階部分と、人によって年金が上乗せされる仕組みです。
このことを踏まえたうえで、次の章から「国民年金と厚生年金の違い」を見ていきましょう。
国民年金と厚生年金の違いをわかりやすく解説
ところで厚生年金って、国民年金と何が違うんですか?
国民年金・厚生年金の違い1:加入条件
国民年金の加入者は「第1号被保険者」、厚生年金の加入者は「第2号被保険者」で、それぞれの加入条件は次のとおり。
- 20歳以上60歳未満
- 日本国内在住
- 20歳以上70歳未満
- 厚生年金保険の適用事業所の従業員(ただし、老齢年金の受給権がある65歳以上の人を除く)
条件を満たせば、どちらかの年金制度に強制加入することになるのです。
ちなみに第2号被保険者に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」と呼ばれます。
ただし事業所の所在地が一定しない・1カ月間以内の日雇い労働などの場合は除外です。
厚生年金の加入条件はやや複雑で、例外も多いです。詳しくは次の記事を確認してください。
国民年金・厚生年金の違い2:保険料
国民年金と厚生年金では、保険料額・納め方も異なります。
保険料額 | 納付方法 | |
---|---|---|
国民年金 | 収入にかかわらず一定 (月額16,410円※) |
・全額自己負担 ・各自で支払い |
厚生年金 | 収入に比例 | ・事業主と労使折半 ・給与から天引き |
国民年金は保険料の月額が一律。
それに対し厚生年金は、被保険者の給与・賞与(ボーナスなど)が多いほど、保険料が高く算定される仕組みになっています。
ちなみに国民年金の未納分がある場合は、厚生年金加入後も督促されます。年金保険料の納付は義務なので、きちんと行いましょうね。
国民年金・厚生年金の違い3:年金の支給額
公的年金の被保険者(またはその家族)に支払われるお金は、主に「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3つです。
国民年金と厚生年金とで、給付額の計算方法は異なります。たとえば老齢年金の場合、国民年金・厚生年金はそれぞれ次のような仕組みです。
支給額 | |
---|---|
国民年金 | ・満額は一律(月額65,008円※) ・加入期間が長いほど多くもらえる |
厚生年金 | ・加入期間の長さや、そのあいだの平均給与などにより計算される |
どちらも加入期間が長いほど、年金額が多くなります。
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成30年1月現在)」によると、老齢基礎年金・老齢厚生年金の平均月額は次のようになっています。
年金 | 平均月額 |
---|---|
老齢基礎年金 | 5万5572円※ |
老齢厚生年金 | 14万7240円 |
国民年金の支給額や増額・減額の仕組みについては別記事「【図解付き】国民年金の受給額の計算方法と、増額・減額の仕組み」で解説しています。
厚生年金の計算方法や平均額については「【平成31年度版】厚生年金の支給額の計算方法・平均額」をご覧ください。
次の章では、年金の加入先を変更する手続きについて説明します。
国民年金から厚生年金への切り替えは、会社が手続きを行う
自営業の夫に扶養されていた妻が正社員として就職した場合、パートからフルタイムになった場合などは、国民年金から厚生年金への切り替えが必要です。
厚生年金の加入条件を満たしたら、国民年金から厚生年金への切り替えは会社(勤務先)が行います。
手続きには「基礎年金番号」の確認が必要。そのため入社時に年金手帳の提出を求められます。
厚生年金から国民年金への切り替えは役場で!必要なもの一覧
会社員から個人事業主・無職になった、または正社員からパート・アルバイトになり厚生年金の対象から外れた場合、厚生年金(第2号被保険者)から国民年金(第1号被保険者)へ切り替える必要があります。
厚生年金から国民年金への切り替え手続きは、住んでいる市区町村の年金窓口で行いましょう。
手続きに必要なものは、次のとおり。
- 印鑑
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 年金手帳
- 退職日を証明できる書類(離職票や退職証明書など)
また本人確認書類は「顔写真付きのもの」を求められる可能性も高いので要注意。運転免許証や写真付きマイナンバーカードなどがない人は、複数提出しなければならない場合もあります。
「退職日を証明できる書類」とは勤務先で発行される、次のような書類です。
- 離職票
- 健康保険資格喪失証明書
- 退職証明書
再発行申請方法 | |
---|---|
国民年金 | 自分で市区町村役場に「年金手帳再交付申請書」を提出 |
厚生年金 | 勤務する会社から年金事務所に「年金手帳再交付申請書」を提出 |
国民年金・厚生年金の仕組みを理解し、老後の貯蓄に役立てよう
また国民年金から厚生年金への切り替え手続きは不要ですが、厚生年金から国民年金への切り替えは自分で行うことがあるのも知っておきましょう。
公的年金は制度変更が行われる場合もあるため、あなたが老後を迎えたとき、年金が大幅に減ってしまう可能性もあります。
私的年金(個人年金)の上乗せなどで、老後の収入源を増やすことも検討してみましょう。いまから始めれば、老後資金の貯蓄もしやすくなりますよ。
※記載の情報は2019年4月現在のものです。
国民年金と厚生年金の違いで、特に大きいのが「年金額」です。
老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金の点でも、厚生年金の方が保障が手厚いのが特徴です。
パートの場合、厚生年金に加入すると夫の扶養から外れることになりますが、老後や万が一への備えとしては、厚生年金に加入した方が有利といえるでしょう。

日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。