マンション売却

マンションの築年数は売却にどう影響する?価格の変動・注意点を解説

転勤することになったからマンションを売りたいです。でも古い物件だから、どれくらいの価格で売れるか心配だなぁ。
そういえば「マンションは築年数によって売れ方が違う」って聞いたわ。

私はこれから中古マンションを買いたいんだけど、将来売却するなら築何年がいいのかしら?

今回はそんなお二人のために、マンションの築年数と売却の関係性についてお話しします。

マンションは基本的に、築年数が古くなるほど価値が下がる傾向にあります。

しかし需要や地価によっては、購入時より売却価格が高くなる場合も。そのため築年数以外の状況もふまえたうえで、価格相場を把握し、売り時を見極める必要があるということも知っておきましょう。

この記事ではマンションの築年数が売れ方や価格、売却費用にどのような影響を与えるのかを解説。売却のタイミングや注意点についてもお伝えします。

最近ではポータルサイトなどで、マンションの築年数などについての情報を入手することが可能です。しかし実際に売りに出す際には、このような情報を鵜呑みにせずきちんと調べる必要があります。

マンションの築年数の調べ方は、次のとおりです。

・建築基準法による検査済証の交付年月日を確認する
・登記簿謄本か登記事項証明書で新築年月日を確認する

売りたい物件の築年数がわからない方は、事前に調べておくことをオススメします。

マンションの築年数は需要・価格に影響する?最新データを見てみよう

古いマンションって需要あるのかな?買い手が見つかるかどうか不安だわー・・・。
築古のマンションでも、状態がよければ需要はありますよ。

それにマンションの需要を決めるのは、築年数だけではありません。ほかにも立地やシーズンなど、さまざまな要因が影響します。

東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」によると、成約物件(中古マンションのみ、2018年)の築年数は次のような割合になっています。

中古マンション築年帯別構成比率(2018年)
築年数 比率
築0~5年 9.3%
築6~10年 16.0%
築11~15年 17.6%
築16~20年 13.9%
築21~25年 9.5%
築26~30年 8.4%
築31年~ 25.3%
築31年以上の物件も買われているんですね!でも古くなるにつれて、マンションの価値は下がっちゃうんじゃないですか?
たしかにマンションは、築年数に応じて資産価値が下がるものと考えたほうがいいでしょう。

東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」によると、中古マンションの築年帯別平均価格は次のようになっています。

中古マンションの築年帯別平均㎡価格(万円、㎡)
築年数 価格 面積 ㎡単価
~築5年 5,411 66.83 80.96
築6~10年 4,602 67.62 68.06
築11~15年 4,242 70.04 60.56
築16~20年 3,716 70.42 52.77
築21~25年 2,528 65.32 38.70
築26~30年 1,697 57.19 29.68
築31年~ 1,815 57.25 31.70
中古マンションの平均売却価格(東京都、2019年1~3月)
やっぱり築年数が古くなるほど、価格が安くなってますね。
そうですね。ただしこれは、あくまで平均です。需要や地価などによっては、築浅物件でなくても高く売れる場合がありますよ。

ではマンションの築年数が売却に影響する仕組みを、次の章から詳しく見ていきましょう。

マンションの築年数ごとに売れ方の特徴を解説

マンション売却の場合、「所有期間5年を超えると譲渡所得税が安くなる」「築25年以内なら住宅ローン控除の対象になるので、買い手がつきやすい」など、築年数によって売れ方に特徴があります。

そのためマンションの価値だけでなく、費用や売れやすさも考慮し売り時を見極めることが大切です。

ではマンションの築年数が売却時にどう影響するか、次の項目に分けて説明していきます。

築5年以内のマンションは価値が下がりにくい!譲渡所得税には注意

予期せぬ転勤や離婚などで、購入したばかりのマンションを売ることになる人も多いのでは。

築5年以内のマンションは劣化があまり見られないため、価値が下がりにくいのが特徴です。これだけの築浅物件を売る人は少ないので、貴重な物件として需要が高くなることも期待できます。

ただしマンションの所有期間が5年以内(短期譲渡)のうちに売ると、5年超(長期譲渡)で売る場合より譲渡所得税が高くなってしまうことも覚えておきましょう。

所有期間が5年以内のマンションは短期譲渡のため、5年超の長期譲渡より課税譲渡所得税が高くなる

不動産譲渡所得にかかる税金の計算式は、それぞれ次のとおりです。

不動産譲渡所得税
短期譲渡(5年以内※)
課税譲渡所得×(所得税30.63%+住民税9%)

長期譲渡(5年超)
課税譲渡所得×(所得税15.315%+住民税5%)

※5年ちょうどを含む

所得税については、平成37年までの予定で復興特別所得税が2.7%課せられているため、中途半端な数字になっています。

また譲渡損失(購入時より安い値段で売却したことによる損)がある場合、基本的に譲渡所得税は発生しません。

不動産売却にかかる税金については、次の記事で詳しく解説しています。


      

新しいマンションって、買い主側に「買ったばかりなのに、どうして売るんだろう?」と思われそうね・・・。
たしかに買い主のなかには、売却理由を気にする人もいます。不安を乗り除くために、正直に話すことをオススメします。

ちなみに事故物件※などの場合は告知義務があるので、隠してはいけませんよ。告知内容については、売りに出す時点で不動産業者としっかり話し合いましょう。

事故物件とは

自殺・他殺などに限らず、事件や事故など「買い手(借り手)が嫌だと感じること」がある物件。正しくは「心理的瑕疵物件」といいます。

次の記事では、マンションを購入してすぐ売却する際のポイントを説明しています。ぜひ読んでみてください。

築10年ほどのマンションは価格競争・住宅ローンの法定耐用年数に注意

築10年ほどのマンションも、それほど劣化していないため人気があります。

しかし同じくらの築年数でマンションを売却する人は多いため、ライバル物件との価格競争が起きやすいというデメリットも。

状況によっては、大幅な値下げが必要になる可能性もあります。

また築年数が12年を超えると、買い主は35年もの長期ローンを組むのが難しくなってしまいます。
えっ、そうなんですか?詳しく教えてください!
住宅ローンは、購入する不動産を物的担保として組むのが一般的。ローンが返済できなくなった場合は、担保としている物件を手放し返済に当てます。

そして担保価値は法定耐用年数から判断されます。

法定耐用年数とは、国税庁が定めた「減価償却を行う期間」のこと。時間の経過などによって価値が目減りしていく固定資産(減価償却資産)が対象です。

マンション(鉄筋コンクリート造)の法定耐用年数は47年。これを超えると担保価値がないとされ、金融機関からの融資が難しくなります。

単純計算すると、築12年のマンションなら「47年-12年=35年」で35年ローンを組める可能性があるでしょう。しかしこれ以上の築古物件となると、長期間の借り入れは期待できません。

築25年以内のマンションは、買主側にメリットがあり売却しやすい

マンションを築年数25年以内に売ると、買い主側に次のようなメリットがあります。

築25年以内のマンションのメリット(購入者側)
  • 登録免許税(※1)の負担が減る
  • 住宅ローン控除(※2)を適用できる
※築年数以外にも適用条件を満たす必要あり
※1:登録免許税とは

不動産の購入者が所有権の登記手続きをする際に納める税金のことです。

中古マンションの場合、築25年以内であれば、本則は評価額の2.0%のところ0.3%への軽減が受けられます。(2020年3月31日まで)

※2:住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは

住宅ローンを借りると、毎年支払う税金から一定額が控除される制度のこと。次のような条件を満たした物件に適用され、ローン残額の1%を所得税や住民税から控除できます。

・10年以上のローンを組んでいる
・耐震基準をクリアしている
・床面積が50㎡以上

適用期間は原則10年間です。

築25年以内のマンションは登録免許税の軽減や住宅ローン控除の対象になる

築25年以内なら税金面での負担が少なくなるから、買い主が見つかりやすそうですね!
はい、この時期を機に売却を検討するのも1つの手です。

しかし築年数が25年を超えても「現在の耐震基準に適合している」と証明されれば、登録免許税の軽減・住宅ローン控除を受けられる可能性があります。

住宅ローン控除の条件については、別記事「住宅ローン控除で減税されるために必要な5つの条件とは?」を参考にしてください。

築30年・40年以上の物件も需要あり!

築30年・築40年以上といった比較的古いマンションにも、次のようなメリットがあります。

築古物件のメリット
  • 築浅物件より安い傾向にある
  • 価格の下落がゆるやか
  • リノベーションしたい人向き

築年数の古いマンションは、築浅物件より安く買える可能性が高いです。そのため立地や建物の状態などの条件が良ければ、買い手がつきやすくなります。

またマンションは築25年を超えると、価格の下がり方がゆるやかになる場合も多いです。

「マンションの購入価格をなるべく抑えて、自分でリノベーションしたい」という人もいます。築古マンションは、そのような人にも人気があるんですよ。

マンションは修繕積立金の増額前に売るのがオススメ!

マンション売却は修繕積立金が値上げされる前に終わるよう、タイミングを考えて始めるのがオススメです。

修繕積立金って、どんなときに根上がるんすか?
分譲時に安く設定されていた積立金が、大規模修繕の前後で高く設定されたり、計画外の工事が必要になったりなどのタイミングで値上がりします。

値上がり前に売却すると、次のようなメリットがあります。

修繕積立金の値上がり前に売却するメリット
  • 所有中の出費を抑えられる
  • 買い手がつきやすい

修繕積立金は所有期間中ずっと支払わなければならないもの。値上がり前に売却が終われば、出費がかさむのを防げます。

マンション売却を修繕積立金の増額前に行うと、売り主は出費を軽減できる

また修繕積立金が増額すると、買い手側も購入を躊躇してしまう可能性も。そのため増額前のほうが、マンションを売りやすいというメリットもあります。

修繕積立金の値上げ前にマンション売却をすれば、買い手がつきやすい

ただし管理組合の判断で修繕積立金の値上げが決まっている場合は、その旨を買い主に告知しなければなりません。
マンションの修繕積立金は、築年数5年・10年ごとに高くなるのが一般的(ただし新築から5年で値上がりするケースは少ない)と言われています。しかし物件によって値上がりのパターン・時期は異なるため、自分のマンションの場合はどうか、一度確認しておきましょう。

マンションの修繕積立金について詳しく知りたい方は、次の記事も読んでみてください。

築年数が古いマンションは、新耐震基準に適合しているか確認しよう

売りたいマンションの築年数が古いと、買主に「地震が起きたときに不安」と言われてしまうでしょうか?
「築年数が古いほど地震に弱い」というわけではないですが、築古物件の耐震性が気になる売主・買主は多いですよね。

まずは売りたいマンションが新耐震基準で建てられているか、確認してみましょう。

地震に耐えられる建物構造の基準のことを「耐震基準」といいます。1981年には、宮城県沖地震をきっかけとして建築基準法が改正されました。

「新耐震基準」とは1981(昭和56)年6月1日以降適用されているもの。その前日まで適用されていた基準は「旧耐震基準」と呼ばれています。

ってことは、その日以降に建てられたマンションなら「新耐震基準」と考えればいいですか?
ちょっと違いますね。

新耐震基準か旧耐震基準かは、築年月日ではなく建築確認済証※の発行日で判断してください。

建築確認済証とは

建築計画が法に基づいたものであると確認されたとき(建築確認が行われたとき)に交付される書類のことです。

新耐震基準か旧耐震基準か判断するには、築年月日ではなく建築確認済証の発行日が1981年6月1日以降かどうかを見る

旧耐震基準で建てられたマンションを、売ること自体は可能です。

しかし安全面から購入を躊躇する人も多いうえに、次のようなデメリットから売れづらい傾向にあります。

旧耐震基準で建てられたマンションのデメリット
  • 住宅ローン控除の対象外
  • すまい給付金の対象外
  • 贈与の非課税制度の対象外
  • 不動産取得税・登録免許税の優遇の対象外
  • 地震保険が高額
オイラのマンション、旧耐震っぽいなぁ。
旧耐震のマンションでも、実際には新耐震基準を満たしている場合もあります。

建物の状態は耐震診断をすればわかりますよ。売却したいのであれば、まずは不動産会社などに相談してみるのがオススメです。

耐震診断ではマンション全体を診断するため、マンションの規模によっては高額な調査費(基本的に管理組合が負担)が必要な場合も。

しかし市場評価や耐震改修などのことを考えると、耐震診断はいずれ実施しなければならないものといえます。

マンション売却には、一括査定サイトの利用がオススメ!

この記事で何度かお伝えしていますが、マンションの価値は築年数だけで決まるものではありません。

価格の相場は自分で調べることも可能ですが、「売却したいと思っている」「売却について相談したい」という方は、不動産会社に査定依頼し、売却価格の目安を確認してみましょう。

多くの方が、不動産会社に仲介を依頼してマンション売却をすると思います。

実は媒介契約する不動産会社をきちんと選ぶことが、マンションを早く・高く売るコツでもあるんですよ。

不動産会社を選ぶときのポイントは、次のとおりです。

いい不動産会社の選び方
  • マンション売却に強い不動産会社を選ぶ
  • 営業担当者の対応がいい(資格所有者である)ところを選ぶ
  • 会社の規模だけで判断しない

自分に合った不動産会社を見つける方法は、次の記事でさらに詳しく紹介しています。

不動産会社を選ぶ際には、不動産一括査定サイトの利用もオススメです。

一括査定サイトとは、複数の会社へ一度に査定依頼できるサイトのこと。基本的に利用料は無料です。

一括査定サイトを利用するメリットは、次のとおり。

一括査定サイトのメリット
  • 複数の査定結果を比べ、自分に合ったところを選べる
  • 売りたい不動産の相場を把握しやすい
  • 各社に申し込む手間が省ける

一括査定サイトは、それぞれ提携している不動産会社やサービス内容が異なります。詳しくは「おすすめな不動産一括査定サイトを厳選してご紹介!」をご覧ください。

マンションの築年数ごとの売れ方を知って、タイミングを見極めよう

マンションは築年数ごとに価値の変化やメリット・デメリットがあります。それぞれの売れ方の特徴を知っておくことで、売却のタイミングを検討しやすくなりますよ。

まずは査定価格・(売却価格の目安)売却費用を確認したうえで検討してみましょう。

築年数だけでなく、需要が高まる引っ越しシーズンなどの「売り時」も考えたうえで売却時期を決めれば、短い売却期間・高い価格で売れることも期待できます。

また物件の状態だけでなく、売主が売却時のポイント・注意点を知っているかどうかが売却成功のカギとなります。

売却時の流れ・各手順の注意点については、別記事「不動産売却の流れを分かりやすく解説!」を参考にしてください。

監修者メッセージ

「マンションを売った場合の税金が気になる」とか、「買った時のローン控除について知りたい」という声をよく耳にします。

各種税金・控除の計算やあてはめるべき条件は少々複雑であるため、専門家(不動産業者やFPなど)に相談し、できる限りお得に売買できるようにしましょう。

プロフィール
不動産売却カテゴリー記事監修(吉田成志)
吉田成志
宅地建物取引士、マンション管理士、消防設備士などの資格を保有。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。