マンションを売るか貸すかは、長所・短所や収支バランスから考えよう
「転勤で引っ越すことになった」「分譲マンションを相続した」などのきっかけにより、マンションを売るか貸すかお悩み中の方も多いのでは。
不動産の売却・賃貸には、それなりの手間や時間、費用がかかるもの。ここの判断で後悔したくはないですよね。
しかしマンションは貸している期間も管理する責任や諸費用がかかります。
また一度でも貸したマンションは色々な理由から、その後売ったときに価格が下がりやすいのです。
売るか貸すかは、慎重に決めましょう。
この記事では、マンションを売る場合・貸す場合に生じるメリットやデメリット、処分方法を決めるポイントについて解説します。
マンションを売る場合のメリット・デメリット
まずはマンションを「売る場合」から、メリット・デメリットを見てみましょう。
マンションを売る場合は金銭面のメリットが多い!
マンションを売る場合は、次のように金銭面でのメリットが多いです。
- まとまった金額の売却益を得られる
- 維持費・管理費などの支払いが不要になる
- 売却価格が高ければローンを完済できる
- 売却時に戻ってくる費用がある
マンションが売れれば売却益が生じるうえ、手放すことで所有中にかかる維持費・管理費などの支払いから解放されます。
また「不動産の条件(立地や築年数など)が良い」「予想より良い条件で売買契約できた」など、高く売れる場合も。売却価格が高ければ、住宅ローンも完済できます。
- 各種の清算金(※1)
- 固定資産税・都市計画税の清算金(※2)
- 火災保険料や地震保険料の解約返戻金
- 住宅ローン保証料の払い戻し
- 譲渡損失による所得税などの還付
※2:すでに払い込んだ日数分が戻ってくることが一般的。起算日は地域や慣習により異なる
各種の清算金とは、売主が買主の分まで前払いした管理費・修繕積立金などのことです。
たとえば7月20日に引き渡す場合、6月末の時点で7月分すべての管理費などを売主が負担した状態になっています。そのため「残りの10日分(7月21日~31日)を日割りで売主に払い戻す」という条件が定められていることが大半です。
不動産売却で戻ってくるお金について、詳しい内容は別記事「不動産売却で戻ってくるお金を知って節税効果を得よう!」をご覧ください。
マンションは高く売れない・なかなか売れない場合にデメリットが生じる
マンションを売るデメリットは、次のとおりです。
- ローンを完済できない恐れがある
- 売却期間が延びるほど売れづらくなる
「住宅ローンの返済が厳しいから、マンションを売りたい」という人もいるでしょう。
しかしマンションが高く売れないと、ローンを完済できない恐れもあります。
ちなみに物件の購入時に、その価格より高い金額で融資を受けることも、同じく「オーバーローン」といいます。
オーバーローンの問題点・注意点については、次の記事を読んでみてください。
またマンションがなかなか売れず売却期間が延びると「売れ残り」という印象がつきやすく、不動産会社の売却活動が消極的になる恐れもあり、ますます売れづらくなってしまうのです。
マンションを貸す場合のメリット・デメリット
では次に、マンションを貸す場合のメリット・デメリットを見てみましょう。
マンションを貸す場合、最大のメリットは『定期的な不労所得』
マンションを貸すと、次のようなメリットが生じます。
- 不労所得が得られる
- 分譲マンションは賃料が高め
- 節税できる
マンションを貸した場合、入居者がいれば定期的に不労所得を得ることが可能。
とくに分譲マンションの場合は、賃貸用のマンションより賃料が高い傾向にあります。
またマンションを貸すと、節税にもつながります。
マンションを貸す場合は、赤字リスク・対応の手間がデメリット
マンションを貸すと、次のようなデメリットも生じます。
- 入居者がいなければ収入が得られない
- クレーム・トラブルに対応する必要がある
- 二重ローンの場合、審査が通らない場合も
当然ですが、入居者がいなければ収入は得られません。
マンションを所有しているだけで費用はかかるため、赤字になる恐れもあるのです。
価格は相場より安くなることが多いですが、無駄な費用を払い続けるよりはいいでしょう。
また貸し出し中は、入居者のクレーム・トラブルに対応しなければなりません。状況によっては手間がかかったり、自分の時間を大幅に削られたりすることもあります。
このような二重ローンの場合は「マンションを貸すこと」が、審査落ちの原因となる可能性もあります。
そもそも住宅ローンは、あくまで「自分が済む住宅」のために借りるもの。その目的のために金利などの条件が設定されていることがほとんどです。
賃貸に出す場合は「自分が住む」という目的から外れ、事業と見なされるケースもあります。そうなれば住宅ローンは利用できず、最悪の場合には一括返済を要求されることもあるのです。
マンションを売る・貸す際の費用【ムリなく行えるか確認しよう】
マンションを売る場合も貸す場合も、収入だけでなく出費が生じます。そのため収入と支出のバランスを考えたうえで、売るか貸すか検討することも大切です。
マンションの売却費用は次のとおりです。
費用 | 内容 |
---|---|
仲介手数料 | 不動産会社に依頼する場合のみ必要 |
登記手続きの費用 | ・抵当権抹消 ・相続登記< ・表題部変更登記※/td> |
売買契約書の印紙税 | (一般的には売主・買主で折半) |
住所変更登記費用 | 住民票と登記簿謄本に記載されている住所が、それぞれ異なる場合に必要 |
引っ越し費用 | - |
一括繰り上げ返済の手数料 | ローンを一括繰上返済する場合に必要 |
その他、場合によってはリフォーム・ハウスクリーニングの費用なども必要になります。
不動産売却にかかる各費用・仲介手数料の計算方法については、次の記事をご覧ください。
ではマンションを貸す場合はどうでしょうか。主な費用は次のとおりです。
費用 | 内容 |
---|---|
管理委託費 | 不動産会社へ次の委託をする場合のみ必要 ・入居者管理 ・建物管理 <金額の相場>家賃の5%程度/月 |
住替え先の住居費 | (例) ・住替え先の賃料 ・新たに家を購入する際にかかる費用 |
メンテナンス費用 修繕費用 |
(例) ・室内設備故障のメンテナンス費用 ・入居者退去時の補修費用 ・クリーニング費用 |
仲介手数料 | 不動産会社に依頼する場合のみ必要 |
その他 | (例) ・損害保険料 ・交通費 ・通信費 |
またマンションを売る場合も貸す場合も、所有しているあいだは次のような費用がかかります。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 管理費
- 修繕積立金
マンションを売却する場合、売って手放せばこれらの費用の支払いが不要になります。
しかしマンションを貸す場合は完全に手放したわけではないため、諸費用の支払いがずっと続くのです。
ちなみに賃料・売却価格の相場は、不動産会社に査定してもらうのが一般的。「まだ相談するのに抵抗がある」という場合は、自分で目安を調べることもできますよ。
マンションを売るか貸すか迷ったときの、5つのポイントを解説!
これまでお伝えしてきた内容も交えつつ、各ポイントについて説明していきます。
【1】また住む予定があれば期限付きの『定期借家契約』を検討
いずれマンションに戻って住む予定があるなら、売るのではなく貸すことを検討している方が多いと思います。
この場合は「定期借家契約※」の形でマンションを貸すのがオススメです。
物件を貸す期間(期限)が設けられる貸借制度のこと。平成12年3月1日に「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」が施行されたことにより導入されました。
マンションを貸す際は「普通借家契約」が行われるのが一般的ですが、この契約形態の場合、貸主は正当な理由がないと契約更新を拒否できません。つまり入居者が退去しない限り、自分がまた住むことは原則できないのです。
しかし定期借家契約なら、貸主が理由なしに契約更新を拒否し、借主に退去を求めることができます。
【2】マンションを貸してから売ると、価格が下がりやすい
「最終的にはマンションを売るつもり」という方は、貸さずに売ることも検討してみましょう。
マンションを貸してから売ると、次のようなデメリットが生じます。
- 貸した後に売却すると価格が下がりやすい
- マンションが古くなると価格が下がりやすい
一度でも貸したマンションは「収益物件」と見なされるため、貸していない場合より査定額が安くなる場合が多いです。
また貸し出した期間が長いほど築年数が古くなるため、売却価格は安くなります。
【3】利益の使い道と収支バランスを見て、売るか貸すか決めよう
マンションを売る、または貸す場合、得た利益をどう使うか決めておきましょう。
住み替え後の住宅ローン返済や、老後資金の貯蓄など、さまざまな目的があると思います。
「利益が出たら何に使いたいのか」「そのためにはどれくらいで売りたい(貸したい)のか」を考え、利益が出た場合の相場と照らし合わせ、売るべきか貸すべきか検討してみてください。
手に入るお金の使いみちをハッキリさせれば、「マンションを売るか貸すか」という悩みを解決する近道となるでしょう。
またマンションを売る場合も貸す場合も、必ず出費が生じます。買主や入居者がいつ見つかるかは、実際に行ってみないとわかりません。
金銭面での負担や収支バランスの面からも、無理なく行える方法を選びましょう。
【4】マンションを貸すあいだは、それなりの手間を覚悟しよう
先ほど「マンションを貸す場合のデメリット」でもお伝えしたように、マンションを貸しているあいだは、入居者対応などの手間がかかります。
「賃貸中の対応・管理を十分に行える自信がある」「マンションを貸すことも、経験としてやってみたい」という場合は、さほど苦にならないでしょう。
しかし「忙しいので対応する時間がない」「何かあったときに対応できるか心配」という場合は、売却して完全に手放すことをオススメします。
【5】貸すのに一番適しているのは、一人暮らし用のマンション
マンションを貸す場合、どんな物件が人気なんですか?
マンションを売るか貸すかの判断は慎重に!
マンションを貸すと、うまくいけば定期的に不労所得を得ることが可能。持っているマンションにまた住みたいのなら、期限付きで貸せる「定期借家契約」も1つの手です。
しかしマンション所有中には費用がかかるうえに、一度貸したマンションは価値が下がりやすいです。
いずれ売却するのなら、貸さずに売却したほうが得な可能性もありますよ。
当記事では、不動産売却の流れやコツ・注意点なども分かりやすく解説しています。
マンションの価格査定は一括査定サイトで、複数の会社に依頼するのもオススメ。おすすめサイトの特徴もお伝えしているので、ぜひ見てみてくださいね。
相場や各種費用などについては専門家に相談することが有効ですが、売りたいor貸したい理由についてはマンション所有者本人がしっかり自分と向き合って考える必要があります。
不動産関連は大きな金額が動く一大イベントになりますから、損や後悔のないように万全の準備をしながら進めていただきたいと思います。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。