iDeCo(イデコ)完全ガイド!運用のポイントと注意点を徹底解説
将来に備えてお金を貯めたいと考えた時、まず思い浮かぶ方法といえばやはり銀行での貯蓄でしょう。しかし現在の日本の低金利では、いくら貯蓄をしたところでお金はほとんど増えません。
ですがもし、同じ金額をiDeCo(イデコ)で積み立てた場合、銀行に預金する以上のリターンが見込めます。なぜなら、iDeCoで掛け金を積み立てれば、所得控除を受け、節税することができるからです。
加えてiDeCoを始めてから60歳になるまでの間、続けて節税することができます。
そんな節税効果の高いiDeCoとはどんな制度なのでしょうか?全体的な特徴とポイントをわかりやすく紹介していきます。
iDeCo(イデコ)とはどんな制度か?概要と特徴
iDeCoとは個人型確定拠出年金のこと。原則60歳まで自分で掛け金を積み立て、運用できる制度のことです。
60歳になると、今まで積み立ててきたiDeCoの資金を引き出すことができます。どこまで資産を増やせるかは、通常の投資と同様で運用方法次第となります。元本割れを起こすリスクもあるので注意が必要です。
通常の投資とiDeCoでの投資、一番大きな違いは節税です。
iDeCoで資産運用を始めると掛け金が全額所得控除されるので、掛け金を積み立てている限り、所得税や住民税が安くなります。
iDeCo(イデコ)の利用者数は94万人を突破!
iDeCoの利用者数は年々順調に増えているようです。国民年金基金連合会のデータによると、2018年6月には94万人まで増えています。
税金が安くなるという魅力的なメリットのある制度なだけに、今後もiDeCoに加入する人は増えていくことでしょう。
iDeCo(イデコ)のメリットとデメリット
iDeCoにはどのようなメリットがあるのでしょうか?やはり一番大きなメリットは節税ができることでしょう。
iDeCoで掛け金を積み立てると、その掛け金が全額所得控除されるため、納める税金が安くなります。
他にもiDeCoには次のようなメリットがあります。
- 所得控除を受けられる
- 運用益を非課税にできる
- 受取時に退職所得控除や公的年金等控除が受けられる
- 少額から始められる
- 投資信託が低コスト
運用益に対する税金が非課税になるため、iDeCoで投資信託を購入すれば、分配金などの利益にかかる税金を非課税にできます。つまり普通に購入するよりもコストが安くなります。
それに加え、iDeCoで取り扱われている投資信託は、他と比べて購入手数料や信託報酬が安い銘柄ばかりとなるので、低コストな運用がしやすいなどのメリットがあるんです。
このようなメリットがあるiDeCoですが、デメリットもあります。
- 原則60歳まで引き出せない
- 口座の開設や維持に手数料がかかる
- 自分で運用しなければならない
一旦iDeCoに掛け金を拠出すると、原則60歳までそのお金は引き出せません。そのため、いくら節税効果を高めたいからといって、許容範囲を超えるような掛け金の拠出は避けましょう。
iDeCoを始めるなら、60歳までの運用を見越した上で、投資戦略を練りましょう。iDeCoでは、自分で資産を運用しなければなりません。
不必要なリスクは避け、できるだけ安全な方法で資産を運用しましょう。
iDeCo(イデコ)は原則、途中解約できない
60歳までの利用を前提としているiDeCoは、原則として途中解約はできません。
ただし例外はあります。iDeCoを途中で解約できるケースを見ていきましょう。
- 離職や転職で加入資格を喪失した場合
- 加入者が死亡した場合
- 加入者が障害を負った場合
このようにやむを得ない事情がある場合は、iDeCoを途中解約することが可能です。
iDeCo(イデコ)の加入資格とは?
iDeCoは20歳から60歳までで、加入資格があるのであれば誰でも加入できます。
公務員や専業主婦、自営業者も加入可能
iDeCoの加入資格はどのような職業に就いているかによってそれぞれ異なります。共通する重要な条件は「日本に居住していること」「国民年金保険料を支払っていること」です。
パートやアルバイト、フリーター、派遣社員であってもiDeCoには加入することができますし、会社員であっても条件次第では加入可能です。
2017年1月にiDeCoの加入資格が拡大されて以降、公務員や専業主婦であってもiDeCoに加入できるようになり、20歳から60歳であればほぼすべての人がiDeCoの加入対象になりました。
それぞれの加入者によって異なる注意点は、記事ごとに分けわかりやすく取り上げました。加入を検討している人は、ぜひ自分があてはまる記事を参考にしてくださいね。
iDeCo(イデコ)に加入できないケースとは?
現役世代であればほぼ全ての方が加入資格を持つiDeCoですが、加入できないケースも存在します。
- 20歳未満、60歳以上
- 日本以外の海外に居住
- 公的年金保険料を払っていない
- 勤務先の企業が規約でiDeCoの加入を認めていない場合
特に見落としがちなのが企業型DCに加入している会社員のケース。勤務先の企業がiDeCoの加入を認めない規約を設けている場合、iDeCoには加入できません。
iDeCoの掛け金には上限(限度額)がある
iDeCoでは拠出する掛け金の金額が高ければ高いほど、税金を安くすることができます。
iDeCoで拠出できる掛け金には上限があります。
この上限の範囲内において税制優遇を受けられる。それがiDeCoの仕組みとなります。iDeCoに加入する際には、最大でいくらまで掛け金を拠出できるのか、自分があてはまる上限を調べておきましょう。
掛け金の上限はいくら?人によって異なる限度額
iDeCoの掛け金の上限は、人によってそれぞれ異なります。上限の額は、次のようになります。
属性 | 月額 | 年額 |
---|---|---|
第1号被保険者(自営業者など) | 6.8万円 | 81.6万円 |
第2号被保険者(企業型DCのない会社の会社員) | 2.3万円 | 27.6万円 |
第2号被保険者(企業型DCに加入している会社員) | 2万円 | 24万円 |
第2号被保険者(DB加入者、公務員) | 1.2万円 | 14.4万円 |
第3号被保険者(専業主婦など) | 2.3万円 | 27.6万円 |
同じ会社員でも、企業年金の有無や確定給付企業年金に加入しているかどうかで、上限額が変わりますので注意しましょう。
詳しくは次の記事を参考にしてくださいね。
企業型確定拠出年金とは?iDeCoとの違い
iDeCoと似たような税制優遇制度に「企業型確定拠出年金」があります。企業型確定拠出年金とは、企業が掛け金を拠出してくれる確定拠出年金の制度のことです。
加入者は退職後に拠出した掛け金を受け取ることができます。拠出は企業がするのですが、運用の主体は従業員となりますので、従業員の運用方法次第では、退職後に受け取れる金額を増やすことも可能です。
iDeCoとの大きな違いは掛け金の拠出元、つまり「掛け金を拠出する主体が会社」か、それとも「個人か」の違いとなります。
ほかにも細かいところが異なるので、順に見ていきましょう。
- 加入は任意か強制か
- 掛け金の主な負担者
- 納付方法
- 運用商品
- 口座管理料の負担者
同じ確定拠出年金でも、iDeCoと企業型では違いがあります。
任意加入と強制加入
任意加入が原則であるiDeCoに対し、企業型は会社によっては強制される場合があります。もちろん任意の企業もあるので、これは一概には言えません。
掛け金
自分で掛け金を負担する個人型に対し、企業型では会社が掛け金を負担します。ただし、会社が負担する分を従業員の給料から天引きするケースもあります。
納付方法
iDeCoの納付方法は基本的に自分の口座から振り替えますが、企業型では会社から納付することになります。
運用商品
iDeCoでは自分が契約している金融機関が取り扱っている商品を自由に選択できます。しかし企業型では会社が用意する商品から選択することになるので、自由に選択することができません。
口座管理料の負担者
他にもiDeCoでは口座管理料が自己負担であるのに対し、企業型だと会社側が負担してくれることが多いなどの違いがあります。ただこれに関しても、従業員が負担するケースがあるため、一概に会社が全額負担してくれるとは限りません。
iDeCo(イデコ)の始め方と必要書類
iDeCoを始めるためには、まずiDeCoの口座を開設できる金融機関に登録をする必要があります。ここでは簡単に流れを紹介しましょう。
- 証券会社などの金融機関への登録
- iDeCo口座の開設手続き
- 口座に掛け金を拠出
- 運用商品を選ぶ
- iDeCoで資産運用開始
- 加入申込書
- 本人確認書類(パスポートなど)
加入者が会社員や公務員の場合、事業主の証明書も必要になります。
iDeCoを運用するときの3つのポイント
ここまでiDeCoの仕組みや制度、はじめ方まで説明してきましたが、重要なのがどのようにiDeCoを利用するかという運用の部分です。
さっそくiDeCoを始める前に覚えておきたい3つの運用ポイントを紹介します。実際に自分ならどのように運用していくかをイメージをしながら読んでみてくださいね。
iDeCo(イデコ)で運用できる商品とは?
iDeCoで運用できる商品は、元本確保型と元本変動型とで分類することができます。
特徴 | 商品 | |
---|---|---|
元本確保型 | 元本の価値が確保されている | 定期預金や保険 |
元本変動型 | 元本の価格が変動する | 投資信託 |
「元本確保型」と聞くと元本を保証してくれるように見える人も多いでしょう。しかし「元本確保型」というのはあくまで元本を確保しているのであって、元本を保証しているわけではありません。元本を割るリスクはありますので注意してください。
加えて元本確保型は利息が安いことが多く、口座管理料を利息で補えないこともあります。口座管理料の方が高いと総合的に見て元本が割れてしまうケースも。各種手数料も含めて収支を計算するようにしましょう。
運用商品は見直せる!スイッチングを有効活用しよう
もしも投資した運用商品の成績が悪化し、これ以上保有し続けると損失が拡大する場合、運用商品の見直しはできるのでしょうか?
iDeCoでは、いつでも運用商品を見直し、スイッチングをすることができます。
投資信託などの運用商品を買い換えることで、運用商品の構成を見直すことです。現在、保有している投資信託などの運用商品を売却し、その資金で別の運用商品を購入することで、スイッチングができます。
スイッチングをすることで、いつでもiDeCoの運用商品を見直すことができるんですね。
スイッチングに興味がある人は時に必要となる手数料やタイミングは「iDeCo(イデコ)のスイッチングとは?配分変更と運用の見直し方」の記事をチェックしてみてください。
掛け金の受け取り方法とは?
iDeCoで積み立てた掛け金は、原則として60歳以降より引き出すことができます。この時、受け取り方を選ぶことができます。
iDeCoで積み立てた掛け金の受け取り方というと、分割か、一括かの二種類があります。
- 分割
- 一括
- 分割と一括の併用
分割が年金で、一括が一時金となります。ちなみに、分割と一括を併用するという受け取り方もあるので、より正確に述べるなら受け取り方は三種類となります。
併用というのは掛け金の一部を受け取りつつ、残りは分割にし年金という形式で受け取るという方法です。
分割と一括には、それぞれにメリットとデメリットがありますので、自分にとってもっともメリットの多い受取方法を選択しましょう。
加入前に要チェック!iDeCo(イデコ)の疑問を解決
始めると税金が安くなるなど、色々と役立つ特徴があるiDeCoですが、実際に利用するにあたって、様々な疑問点を解消しておく必要があります。
確定申告はどうなるのか、途中で転職や死亡したらどうなるのかなど、疑問は尽きません。ここではiDeCoに関する疑問についてお答えします。
年末調整や確定申告の手続きは必要!
iDeCoで節税をするためには、年末調整もしくは確定申告の手続きが必要になります。
原則として自分で申告の手続きをしないといけませんが、給与から掛け金が天引きされている方の場合、申告の手続きは不要となります。
会社員の場合は年末調整の手続きで申告の作業ができます。自営業やフリーランスの方の場合は、確定申告で申告の手続きをしましょう。
実際に必要な手順は次の記事で詳しく取り上げています。ぜひ参考にしてください。
転職したらどうなる?ケース別に紹介
iDeCoに加入している方が転職をする場合、変更点について必ず申告する必要があります。
会社員の場合、iDeCoから企業型DCに移管するケースもあるでしょう。企業型DCに移管する場合は、それぞれの手続きに従って申告してください。
移管せずiDeCoを継続する場合は、そのまま利用できます。しかし会社員から公務員になった、住居を変更したなどの情報は報告が必要です。
このように転職先がどのような制度を持っているかによって、正しい対応は異なるので注意が必要です。それぞれのケースごとに手順や流れを次の記事で詳しく紹介しています。
iDeCoの加入者が死亡した場合
もしもiDeCoの加入者が途中で死亡した場合、遺族であれば資金を引き出すことができます。ただし死亡一時金は自動支給ではありません。死亡してから5年以内に、死亡一時金を受け取るための裁定請求の手続きが必要です。
月々数万円の積立であっても、年数によっては多額の資産が運用されているケースもあります。もしものときのためにどのような対応が必要か知っておきましょう。死亡一時金の受け取り申請については次の記事で解説しています。
住宅ローン控除と併用するメリットは?
iDeCoは住宅ローン控除と併用することが可能です。
併用すると、両方の節税効果を受けることができます。一部の例外を除き、iDeCoと住宅ローン控除は併用した方がメリットがあります。
住宅ローン控除を受けている人は次の記事も参考にしてみてくださいね。
iDeCo(イデコ)を始める前に、仕組みと注意点をチェックしよう
iDeCoを始めると掛け金を拠出した分だけ、所得税や住民税を安くすることができます。その他にも運用益に対する税金が非課税になる、投資信託のコストが安くなるなどのメリットがあります。
一方で60年間は資金を引き出せないなどのデメリットもあるため、運用の際には無理のない範囲で掛け金を拠出しましょう。途中解約できる例外に該当したときのみ、iDeCoの資金を引き出すことができます。
iDeCoは60歳までの制度です。この時期を過ぎるともう利用できませんので、注意してくださいね。若いうちから始めることで、今後60歳になるまで税制優遇を受けることができますよ。