
知らないと落ちる?住宅ローンは審査金利でチェックされている
今はネット上で、住宅ローンの借入可能額を算出してくれる「シミュレーター」がいくつもあります。こうしたツールは非常に便利なものですが、じつは落とし穴もあります。
ネットのツールを盲信して、返済負担率限界の金額で審査に申し込むと、審査で落とされてしまう危険性が大きいのです。
このページでは、借入可能額にかかわる「審査金利」について解説しています。審査金利とは何か、どのように融資希望額を設定すればよいのかを説明していきます。
審査金利って何?
審査金利とは、住宅ローン審査の融資額を計算するときに使われる「仮の金利」です。
審査金利と貸出金利の違いとは?
「貸出金利」は、じっさいの返済時に使われる金利です。「審査金利」は、審査の時だけに使われる金利です。
貸出金利よりも審査金利の方が高いのが普通ですが、例外もあります。審査金利として使われる金利には、以下の3パターンがあり、それぞれ数値が異なります。
- 独自金利。
- 適用金利。
- 変動金利。
3つのうちどれを使うかは、それぞれの金融機関ごとに違います。
独自金利は高めに設定される
「独自金利」は、各銀行が自分たちで設定した審査用の金利です。
独自金利は公表されていませんが、「4%」程度が一般的だと言われています。
2018年現在の貸出金利(変動金利)は「0.5%」程度ですから、独自金利がかなり高めに設定されているのがわかるかと思います。
今までの住宅ローン金利は、高い時で「9%」程度でした。しかし、何十年もの間9%の金利になり続ける可能性は低いといえます。
そのため、4%程度で試算しておけば概ね大丈夫であろう、ということで独自金利を4%にする銀行が多くなっているのです。
優遇金利とも呼ばれる適用金利
「適用金利」とは、ローンで設定されている金利をそのまま審査金利に当てはめるタイプを言います。つまり、貸出金利と審査金利が同じになるということです。
そのため、審査金利で使われる他の金利タイプよりも、審査時の金利が安くなるのが普通です。そのため、優遇金利とも呼ばれています。
しかし適用金利で審査してくれる銀行は、全体の「3割」程度だとされています。
適用金利が使われるのは、大きくわけて以下の2パターンです。
- 契約を固定金利に確定してから審査をする銀行。
- 一部の地方銀行などが契約を取りやすくするため、審査をゆるくしている場合。
固定金利の場合、金利が変わるリスクがないので、高い金利で試算する必要がありません。
また、新規契約拡大を狙っている銀行の場合は、優遇金利で審査してくれる場合もあるというわけです。
変動金利で審査する銀行も
「変動金利」は、世情の金利変動に合わせて設定される金利です。一部銀行で、審査金利として使われていると言われています。
変動金利タイプは、独自金利よりは安くなり、適用金利よりは高くなるのが普通です。
どの審査金利を使っているかは非公開
審査金利が何%であるのかは公開されていませんし、どのタイプの金利で試算しているかも公表されていません。そのため、優遇金利を当てにして計画を立てるのは、現実的ではありません。
フラット35は貸出金利が審査金利
フラット35を選ぶ場合は、審査金利について悩む必要がありません。なぜなら、貸出金利と審査金利が同じだからです。
フラット35は固定金利しかないので、高い審査金利で審査する必要性がないのです。
※フラット35の特集記事はコチラ。
住宅ローンの借入金額は審査金利で考えておくべき
ここまで、審査時には高い金利で計算されていると説明してきました。これが関係するのは、借入金額を設定する時です。
適用金利基準で、返済負担率ギリギリに借入金額を設定すると、審査金利で増える金利分、返済負担率がオーバーしてしまいます。
たとえば、「年収500万円」の人が「35年」のローンを組む場合を考えてみます。借り入れ可能な返済負担率の上限は、「35%」であるとします。
適用金利「0.5%」で計算すると、この人は「5600万円」ほどの金額が借り入れ上限となります。
しかし実際の審査で使われるであろう、審査金利の「4%」で計算すると、「3300万円」程度が上限になってしまいます。
計算に使う金利の違いによって、借入可能額になんと倍近い差ができてしまいました。
ネット上のシミュレーターで、適用金利を入力して計算すると、審査に落ちる可能性が高いというのがわかってもらえたと思います。
審査金利4%による年収と借り入れ上限額の関係早見表
借入可能額を自分で計算するのは面倒だ、という人もいるかと思います。以下に年収とローン期間ごとの借入可能額を載せておきますので参考にしてみてください。
この表は、審査金利を「4%」、返済負担率を「35%」にした場合の借入上限額をあらわしています。
年収 | 25年ローン | 30年ローン | 35年ローン |
---|---|---|---|
300万円 | 1657万円 | 1832万円 | 1976万円 |
400万円 | 2210万円 | 2443万円 | 2634万円 |
500万円 | 2762万円 | 3054万円 | 3293万円 |
600万円 | 3315万円 | 3665万円 | 3952万円 |
700万円 | 3867万円 | 4276万円 | 4611万円 |
800万円 | 4420万円 | 4887万円 | 5269万円 |
ただし、この表が示しているのは借りられる上限であって、返済可能な金額をあらわしているわけでは無いという点には注意してください。
4%の審査金利で計算しているため、もしも貸出金利が1%平均程度であったなら、じっさいの返済負担率は20~25%程度におさまります。とはいえ、金利はいつ上昇するかわかりません。
ローン審査で使われるのは「額面年収」ですが、借り入れ金額を決める時は、「手取り金額」で計算したほうが安心できます。
上の表を、額面年収で調べれば借り入れ可能な「上限」がわかり、手取り金額で調べれば余裕を持って返済可能な借入金額がわかるというわけです。
返済負担率の計算は独自金利基準でしよう!
審査金利は貸出金利より高いのが普通のため、貸出金利で借り入れ金額を設定してしまうと、返済負担率が高くなりすぎて、審査に落とされてしまう可能性が高まります。
借り入れ金額を決める時は、独自金利の平均値である4%を基準にして計算したほうが良いでしょう。
住宅ローンはいくらまで借りられるの? という質問を受けることがありますが、年収と希望の返済年数をお聞きし「審査金利」で計算すると、簡単に借入上限額をお答えできます。
記事にあるとおり、4%の金利で計算するとほとんどの金融機関の融資限度額以内に納まります。
不動産業者の営業マンならだいたい計算できます。

中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。