正社員じゃなくても住宅ローンは組めるの?
正社員でなければ住宅ローンを組むのは無理だ、と考えている人も多いかもしれません。しかし正社員や公務員であることは、審査で有利になる条件であって、審査通過の絶対条件ではありません。
このページでは、契約社員や派遣社員、アルバイト、パートの人が住宅ローン審査でどう扱われるかについて説明しています。また、そうした人たちが住宅ローンを組むためにどうすべきかについても解説します。
契約社員や派遣社員の住宅ローン審査はどうなる?
契約社員や派遣社員だと、それだけで住宅ローン審査ではじく金融機関があるのは事実です。
企業から見た非正規雇用のメリットは、景気が悪くなった時に、雇用契約を終了して人件費を抑えられる点にあります。
つまり、非正規雇用は正社員よりも仕事にあぶれる危険性が高く、収入の安定性が低くなるというわけです。そのため、非正規雇用を避ける銀行があるのは無理からぬところです。
しかし、正社員以外でも申込みができるという住宅ローンは多くあります。
そもそも日本における正社員の比率は年々低下しており、2018年の非正規雇用者の割合(非農林業)は4割近くにまでなっています。
非正規雇用者のうち、65歳以上だけを抽出すると76.3%という高い割合になるという調査結果が報告されていますが、こちらは定年退職済の従業員も含めた数字です。
実際に働き盛りで住宅ローンの申込者が多いであろうと思われる25歳~44歳の範囲で見てみると25~29%ほどで、この範囲だけで見れば過去10年はほとんど横ばいです。
1990年ごろの非正規雇用者率は2割程度でしたので、ほぼ倍に増えている計算になります。こうした状況下で、正社員だけを対象に住宅ローンの販売をするというのは、現実的ではありません。
つまり審査で正社員よりも不利になるとはいえ、契約社員や派遣社員にも、十分に住宅ローンを組むチャンスはあるということです。
アルバイトやパートで住宅ローンを組むのは無理?
アルバイトやパートで働いている方でも、家を買いたいと思っている人は大勢いるでしょう。
しかし残念なことに、アルバイトやパートの方が住宅ローンを組むのは、非常に難しくなっています。じっさいに、「アルバイト・パートは不可」と明記してある金融機関が多くあります。
そんな中で成功率が高いのが、「フラット35」を利用するという方法です。
フラット35は、住宅金融支援機構という独立行政法人が関わっている、公的な側面がある住宅ローンです。そのため、アルバイトやパートの方でも、問題なく住宅ローンの審査を受けられます。
審査には収入を証明する書類が必要
住宅ローン審査には、源泉徴収票が必要になります。しかしアルバイトやパートの場合、源泉徴収票を渡されていないケースがあります。
そうした場合でも、働いている会社に源泉徴収票を要求すれば、発行してもらうことは可能です。
しかし、源泉徴収票を発行してもらうまでにある程度の時間がかかりますし、複数のアルバイトを掛け持ちしている場合や、アルバイト先を変えた場合などは面倒になります。
このような時に使えるのが「課税証明書」です。
源泉徴収票はあくまで、一社分の収入証明のため、アルバイトを掛け持ちしている場合、すべての職場ものを用意する必要があります。しかし、課税証明書はすべての収入を合計したものが記載されているため、これ1つですみ便利です。
課税証明書には二種類あり、住民税金額だけが記載される「課税額証明」と住民税だけでなく所得金額や扶養家族の人数なども記載される「全項目証明」があります。
どの項目が必要となるかは場合によって異なるため、しっかり確認しておきましょう。また、自治体によりますが、一通につき300円程度の発行料がかかります。
課税証明書は、最寄りの市区町村の役場で発行してもらえます。
正社員以外が住宅ローン審査に通る方法とは?
正社員以外の方が住宅ローン審査に通るためには、以下のような6つの方法を試してみてください。
- フラット35を利用する。
- 派遣や契約でも大丈夫な住宅ローンを利用する。
- 目当ての銀行に口座を作る。
- 収入合算やペアローンを利用する。
- 他の借り入れを完済する。
- 頭金を貯める。
フラット35なら正社員以外でも審査を受け付けている
アルバイトのところでも述べたように、フラット35は雇用形態にかかわらず住宅ローンの審査を受けることが可能です。
当然、契約社員や派遣社員の申込みもできますし、民間の住宅ローンに申し込むよりも、審査に通る可能性が高くなっています。
ただしフラット35は、物件に対する審査が厳しくなっています。フラット35の基準に満たない物件では門前払いされてしまうため、購入する物件の選択肢は狭まってしまいます。
たとえばフラット35が利用できる物件の基準として、間取りや構造になどの様々な基準が多く定められています。
- 居室が2以上あること
- 70㎡以上であること
- 耐火構造や耐久性基準に適合していること
- 配管に点検口が設けられていること
また勤続年数が少なすぎたり、収入が少なすぎる場合は、審査で落とされる可能性が高くなります。
※フラット35の特集記事はコチラです。
派遣社員や契約社員OKの住宅ローンを利用する
「住信SBIネット銀行」や「じぶん銀行」のサイトでは、会社員・公務員・契約社員・派遣社員・個人事業主・自営業の方が住宅ローンの申込みができると明記されています。パート・アルバイト・無職の場合は申込ができません。
また、最低でも勤続3年以上と定められており、個人事業主や自営業などは過去3年分の確定申告書が必要となります。
こうした銀行は、正社員以外もターゲットにしていることが明白ですので、挑戦してみる価値はあるでしょう。
契約社員や派遣社員でも、同じ職場に長期間(5年程度)働いているような人なら、審査に通過することは十分に期待できます。
目当ての銀行に口座を作る
どの銀行に住宅ローンを申し込みたいかが決まっているなら、その銀行に口座をつくり、メインバンクにしておくのが良い方法です。
メインバンクに住宅ローンの申込みをした場合、以下のような効果を期待できます。
- 給料の振込先口座にしておけば、定期収入があることが簡単に証明できる。
- その銀行の預金残高が多ければ、返済能力があると見られ、審査時の評価が上がる。
- 取引期間が長くなるにつれ、その銀行に対する信用が高まる。
収入合算やペアローンの利用
非正規雇用の場合、収入の不安定さに加えて、収入の額自体が問題になることが多くなっています。
そのため、「収入合算」や「ペアローン」で収入面を補えば、住宅ローン審査に通りやすくなります。
「収入合算」は、一人では足りない収入条件に配偶者などのパート・アルバイト分の収入を合算することができます。また、「ペアローン」では夫婦それぞれがローンを契約し、二人分の収入に対して借り入れすることができるというものです。しかし、これらを利用する場合は、返済時に不測の事態があった場合にパートナーの負担も大きくなります。
配偶者や親などに頼めるなら、検討する価値はあるでしょう。
また、アルバイトやパートは住宅ローンを組めないとしている銀行でも、アルバイトをしている人を収入合算に入れる事には応じてくれるケースもあります。妻がパートに出ている場合など、試してみると良いでしょう。
他の借り入れを完済する
自動車ローンやカードローンなど、他の借り入れがあると、ただでさえ厳しい審査がよけいに厳しくなります。
非正規雇用の方が住宅ローンを組む場合は、他のローンは完済してから申し込みたいところです。
厳しいようですが、自動車ローンなどを完済できないような経済状況なら、住宅ローンは少し時期を待ってからの方が無難でしょう。
仮に住宅ローンを組めた場合でも、無理な返済で苦労するのが目に見えています。
頭金を貯める
住宅ローン審査において、頭金の額は多いほうが有利です。
非正規雇用の場合、もともとの不利をカバーするために、物件価格の2割程度の頭金を用意して審査にのぞみたいところです。
ちなみに、頭金を用意することは審査の成否以外に、金利にも影響を及ぼします。たとえば頭金を2割用意している人には、優遇金利で融資するというような設定をしている銀行が多数あるのです。
※頭金の特集記事はコチラ
非正規雇用でも住宅ローンを諦めないで
しかし非正規雇用でも住宅ローンを組めたという人は、たくさんいます。一定以上の収入と勤続年数を積み上げれば、住宅ローン審査に通る可能性は十分にあります。
大切なのは、しっかりと準備をしてから住宅ローンの申込みをする事です。数年先を見据えてプランを立ててみましょう。
非正規雇用であることが、住宅ローンの審査において決定的に不利になるというものではありません。
特に近年は金融機関の選択肢がかなり広がっていますし、しっかり準備・計画すれば十分に審査を通過できます。ただ、これはあくまで住宅ローンの話で、投資用の不動産ローンになると難易度があがりますので、注意が必要です。
4年ほど専任の宅建士として不動産業者に勤務し、現在はマンション管理士・消防設備士として独立。
宅建士としての知識や立場を活かし、不動産売買時の疑問点などの相談を受けている。