個人での土地売買は仲介よりもお得!?欠点や手順、費用を詳しく解説
土地売買では、多くの売主が「売却費用を抑えたい」と考えるでしょう。不動産会社の仲介手数料も、多額な売却費用のひとつ。
この記事では、「個人で土地を売買するメリット・デメリット」をおさえ、「個人売買でのトラブル例」や「売買の手順」、「仲介手数料以外の売却費用と税金」についてもまとめました。
個人で土地を売買するメリット:不動産会社の仲介手数料がかからない
個人での土地売買では、不動産会社の仲介手数料を節約することができます。
不動産会社の仲介では、売主・買主ともに仲介手数料を業者へ支払います。計算方法は、次のとおり。
仲介業者は、この金額を上限に仲介手数料を設定します。
不動産会社の仲介手数料については、次の記事でも詳しく紹介していますので、読んでみてくださいね。
個人で土地を売買するデメリット:時間・労力がかかりリスクも増える
個人での土地売買には、次のようなデメリットがあります。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
個人で土地を売買すると、自分で買主を探す手間と費用がかかる
仲介の場合、販売活動は不動産会社が行います。なかでも、「レインズを利用できる」というのが、不動産会社の強みのひとつ。
レインズに登録された物件情報は全国すべての不動産会社に共有されるため、広範囲で買主を探すことができます。
しかしレインズは、個人では利用できません。
そのため個人で土地を売買する売主は、次のような方法で買主を探す必要があります。
- 近隣、親族など身近な人に声をかける
- 折り込みチラシを使う
- 不動産ポータルサイトに登録する
もし自分で広告を出す場合、折り込みチラシや不動産ポータルサイトのどちらも、掲載料が必要です。掲載方法にもよりますが、1回につき数万円はかかると言われています。
掲載の期間延長や回数追加が重なると、広告掲載料が仲介手数料より高額となる可能性もあります。
ちなみに、電柱やガードレールなどへの広告の貼り付けは、それぞれを管理する電力会社や自治体への許可が必要です。
個人で土地を売買すると、契約書などの書類作成を自分で行う必要がある
個人での土地売買では、土地売買に必要な種類を準備するために、かなりの手間と労力を要します。
土地売買で扱う書類には、主に次のようなものがあります。
売却価格・契約日・契約者名・手付金など、土地の売却において重要な項目をまとめる。
不動産の所有権を、買主に移転させる。
登記申請で利用する。
登記上の住所と、売主の現住所が異なる場合に必要。
商談相手が本人であるかを確認する。
固定資産税の納税額や、不動産登記に必要な税金の計算元となる課税標準額の確認に利用する。
売買する土地の、広さ・形状・隣地との境界を明確にする。
必須ではないが、買主が土地を買うか判断する上で利用する。
必須ではないが、買主が土地を買うか判断する上で利用する。
土地の代金を振り込むために利用。
土地のローンが残っていることによる、抵当権の有無を確認する。
仲介では、これらの用意や書類提出のスケジュール管理を仲介業者が行います。個人での土地売買の場合では、書類作成を司法書士など専門家へ依頼もできますが、自分から連絡・管理をしなければいけません。
ちなみに仲介では、不動産会社が「重要事項説明書」という書類を作成します。
買主がローンを組む場合、重要事項説明書が無いと金融機関は審査ができず、ローンの申込を断られることもあります。
これは買主が土地購入にローンを組む際に、銀行から求められることがあります。しかし「宅地建物取引士」の有資格者でなければ、重要事項説明書の作成はもちろん、実際の買主への説明もできません。
どんな書類が必要か、売主がしっかり把握しておきましょう。
個人で土地を売買すると、問い合わせ等の対応を自分でする必要がある
一般的に仲介では、買主からの土地に関する問い合わせや価格交渉・トラブルなどの対応をするのは、不動産会社など仲介業者です。業者がすぐに対応できないものに関しては、業者から売主へ「どんな対応をするか」を相談する連絡が入ります。
しかし個人での土地売買では、売主に「売却に関わるすべての対応を行う手間」がかかります。
個人で土地を売買するときは、瑕疵の有無をしっかり確認・説明しよう
購入後に瑕疵(かし)がみつかると、契約破棄や損害賠償につながる恐れがあります。
土地の瑕疵では、次のようなものがあります。
法律上の建築制限があり、自由に利用できない土地など。
軟弱地盤、土壌汚染、過去の浸水などの被害、地中埋設物など。
近隣の嫌悪施設や事故物件など。
これらの瑕疵が「瑕疵担保責任」が定める期間内に発覚した場合、買主は売主に対し損害賠償請求をすることができます。
契約時に買主が気づかなかった欠陥(瑕疵)に対し、売主が責任を負う期間と範囲を定めたもの。民法では「買主は瑕疵を知ったときから1年間、売主に責任追及ができる」としています。
瑕疵担保責任は売主にとってとても重いルールなので、特約をつけて「担保責任の免除」や「担保期間の短縮」をすることが一般的。
売却後の瑕疵トラブルを避けるためには、事前の説明と売買契約書への明記を行い、買主にきちんと理解してもらうことが重要です。
瑕疵の有無が不明な場合は、地盤調査をしたり市区町村のホームページで古地図を調べたりして、売却前に調査をするのがオススメ。もし瑕疵があるのなら、買主にきちんと説明をし、売買契約書にも明記をしましょう。
個人での土地売買は、一つひとつの手順を丁寧に進めることが大切
個人で土地を売る手順は、次のとおり。
土地売買では、確認もれなどの小さなミスが大きなトラブルになりかねません。
そのため個人の土地売買では、書類作成や確認など一つひとつの事柄を、売主自身が丁寧に進める必要があります。
個人で土地を売る手順1:物件の相場調査
まずは、土地の価格相場を調べます。インターネットでいつでも調べることが可能ですし、不動産会社の一括査定サービスを利用するのもオススメ。
売却前の事前調査をしっかり行うことで、後のトラブルを回避することができます。
土地の相場を調べる方法や不動産の一括査定については、次の記事でも詳しく紹介していますので、読んでみてくださいね。
個人で土地を売る手順2:図面・書類作成
測量図や固定資産評価額証明書など、土地の売却に必要な図面・書類を準備します。
測量や書類の作成には時間がかかる場合があるため、早めの準備がオススメです。
個人で土地を売る手順3:土地の売出し価格決定
土地の売出し価格を決定するには、複数の不動産会社に査定依頼すると、参考になり便利です。
実際には購入希望者から「購入希望価格」が提示される、ということを考慮しながら決定しましょう。
個人で土地を売る手順4:広告・販売活動
さきほど「個人で土地を売買すると、自分で買主を探す手間と費用がかかる」でお話ししたような手段を用いて、買主を探します。
長期の広告掲載は費用がかさむため、数ヶ月たっても購入希望者が見つからない場合は、「個人での売買」ではなく「不動産会社の仲介による売買」を検討しましょう。
個人で土地を売る手順5:契約交渉
契約条件について、購入希望者と交渉・調整をします。購入希望者は少しでも安く、また条件を良くしようと交渉してくるのが通常です。
しかし交渉を受け入れすぎると、売値が土地の適正価格から大幅に下がったり、土地のローンの不足金を自費で補ったりすることに繋がります。
売り出し前に、値引きの境界線をきちんと決めておきましょう。
個人で土地を売る手順6:売買契約の締結
売買契約書や登記権利書などを用意し、売買契約を締結します。
もし口約束で進めてしまうと、契約内容の証明がないため、紛争となった場合に解決ができません。
口約束でも、売買契約としては法律的に有効です。ただし紛争になった場合、裁判などで契約内容を証明できません。そのため宅建業法では、必ず書面にすることを義務づけています。
仲介では、確認・説明不足によるトラブルの責任を仲介業者が負うこともありますが、個人での土地売却の場合は、売主が責任を負います。しっかり書面に明記した上で確認を行い、売主・買主ともに把握内容の食い違いがないようにしましょう。
個人で土地を売る手順7:決済・引き渡し
無事に契約が済めば、土地の引き渡しです。
さきほど「個人で土地を売買するときは、瑕疵の有無をしっかり確認・説明しよう」でお伝えしたとおり、引き渡し後に瑕疵が見つかると、賠償金の支払いなどをする可能性があります。
仲介業者は、公正な取引と紛争防止に最大の注意を払って業務を進めます。後に売主が瑕疵担保責任を負うことの無いように、売買物件の状況によって、瑕疵の可能性のある点については充分な説明をするのです。
しかし個人での売買の場合は、売主が対応しなければなりません。引き渡し前に、しっかりと説明をし、売買契約書に明記をしましょう。
仲介手数料を節約しても、個人での土地売買には他にも費用がかかる
不動産会社の仲介手数料を節約できることは嬉しいことですが、個人の土地売買では、その他にも次のような費用がかかります。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
仲介手数料を節約することで、書類作成費など別途発生する費用もあり
専門家に土地の測量や売買契約書の作成などを依頼する場合、次のような費用がかかります。
土地家屋調査士などに測量を依頼する場合にかかる。
<金額相場>
35~80万円
不動産の名義変更や、売買契約書を依頼する場合にかかる。
<金額相場>
不動産名義変更:3~15万円
売買契約書作成:5~10万円
測量費用は、測量方法や土地の形状などにより変動します。費用は、仲介では売主が負担するのが一般的ですが、個人間での売買では売主・買主で折半することも。この場合は、両者できちんと話し合いましょう。
土地の測量費用や測量をしないリスクについては、次の記事でも詳しく紹介していますので、確認してみてくださいね。
また売買契約書は、自分で作成することもできます。しかし手付金や特約など重要事項を明記する書類のため、不備がないようにしなければいけません。
別途費用がかかりますが、司法書士など専門家へ作成を依頼するのがオススメです。
ちなみに仲介では、不動産会社が売買契約書を作成するため、作成費用は仲介手数料に含まれます。
このように、「仲介手数料を節約したために発生する費用」もあるということをチェックしておきましょう。
個人の土地売買でも、税金の支払いは必要!忘れずにチェックしよう
不動産会社の仲介手数料には、消費税がかかります。仲介手数料を節約することで、その分の消費税も節約可能です。
しかし個人での土地売買では、次のような税金を支払う必要があります。
売却益が出た場合の、譲渡所得による税金。
<金額相場>
売却益の約20%※
売買契約書への貼付が義務付けられている、収入印紙の代金。
<金額相場>
200円~48万円
印紙税は、売買代金によって税額が決まります。たとえば、土地が3000万円で売れた場合、印紙税は1万円です。具体的な税額については、国税庁のホームページで確認をしてみましょう。
そのため仲介手数料の消費税以外は、税金の支払いに関して仲介と個人売買との違いはないのです。
ちなみに建物付きの土地を売却する場合も、売り主が個人の場合は消費税はほとんどかかりません。ただし売主が法人の場合は、建物代金分に消費税がかかります。
不動産売却にかかる費用については、次の記事でも詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
また不動産売却にかかる税金については、次の記事も参考にしてみてください。
土地売買は個人より仲介を選んで、できるだけトラブルを避けよう!
しかし個人で土地売買を進めると、確認・説明不足によるトラブルや、売却後に発覚する瑕疵によるトラブルなどのリスクをともなう恐れが。さらに広告費や専門家への依頼費がかかりますし、購入希望者への問い合わせ対応などもいります。
後になって、実は仲介を選んだほうが良かったということもあるのです。
土地の売買では、高額なお金をやりとりします。売主・買主ともに納得がいくようしっかりと説明をし、書面に明記しておくことが大切。もしこれらを負担に感じる場合は、たとえ家族間の売買だとしても仲介を選ぶのがオススメです。
後に後悔をしないよう、土地の売買は慎重に進めていきましょう。
宅建業者が媒介しない個人間の直接契約であっても、有効性は同じですが、過去には個人間取引によるトラブルが多くあり、宅建業法や宅建取引士の法整備が進められてきたという歴史的な背景があります。
大切な財産の取引を慎重に進める為にも、宅建業者に媒介を依頼することをお勧めします。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。