国民年金
【図解付き】国民年金の受給額の計算方法と、増額・減額の仕組み

【図解付き】国民年金の受給額の計算方法と、増額・減額の仕組み

国民年金の加入者が老後にもらえる年金を「老齢基礎年金」といいます。

義理の父が今年度から国民年金をもらうんです。受給額っていくらなんですかね?
国民年金の受給額は満額で780,100円、月額に換算すると65,008円(平成31年度)です。
「満額で」ってことは、人によって受給額が違うってことですか?
そのとおり。国民年金の受給額は、保険料を納めた月数や免除・猶予制度の利用、それから支給開始時期によって異なるんです。

また月額400円の付加保険料を納めると、納付月数に応じた年金の増額もあるんですよ。

そうなんですね!オイラも国民年金に入ってるので、詳しく知りたいです。
わかりました。今日は国民年金の受給額が決まる仕組みや、もらえる年金が増える方法・減額されるケースについてお話ししましょう。

国民年金の支給開始年齢・受給に必要な加入期間は?

国民年金を受け取れるのは、何歳からでしたっけ?
国民年金は原則65歳から支給開始されます。

ただし「対象年齢になれば誰でも受給できる」というわけではありません。

国民年金(老齢基礎年金)を受給できるのは、保険料納付済期間と保険料免除期間(※1)、合算対象期間(※2)が10年以上ある人です。

※1:保険料免除期間とは

国民年金保険料の納付を、免除または猶予された期間のこと。

保険料の免除・猶予制度の内容は「国民年金は滞納せず免除・猶予制度を利用!追納して年金額を補おう」で詳しく説明しています。

※2:合算対象期間(カラ期間)とは

法改正前の専業主婦や学生、海外在住などで国民年金の加入者とならず、任意加入もしなかった期間のこと。

国民年金を受給するには、受給資格期間(保険料納付期間、保険料免除・猶予期間、合算対象期間の合計)が10年以上あることが条件

では次の章から、国民年金の支給額について詳しく見ていきましょう。

国民年金は満額で月額65,008円!実際の受給額も計算してみよう

国民年金の受給額って、どのように決まるんでしょうか?計算方法を知りたいです。
年金額は、年度ごとに見直されています。2019年4月~2020年3月分の場合の計算方法について、説明しますね。

保険料を免除・猶予された期間があるかどうかで、計算式は次のように異なります。

保険料免除期間がない場合の計算式
老齢基礎年金額=780,100円(平成31年度)× 保険料納付月数 ÷ 480
保険料免除期間がある場合の計算式
老齢基礎年金額=780,100円×(次の5つの金額の合計)÷480

・保険料納付月数
・保険料全額免除月数×8分の4
・保険料4分の1納付月数×8分の5
・保険料半額納付月数×8分の6
・保険料4分の3納付月数×8分の7

※平成21年3月分までの全額免除は「6分の2」、4分の1納付は「6分の3」、半額納付は6分の4、4分の3納付は「6分の5」で計算
「780,100円」って、何の金額でしたっけ?
「780,100円」というのは、国民年金へ加入可能な20歳~60歳未満のあいだ、一度も未納せず保険料を納めた場合の受給額。つまり満額です。
満額をもとに計算するんですね。では「480」という数字は何なんですか?
これは40年(加入可能年数)に12を掛けたものです。
「加入可能年数」とは・・・?
国民年金に加入できる期間(20歳から60歳までの40年)を、月数に変換したものです。

国民年金の受給額の計算方法をわかりやすく図解

カラ期間は、「保険料納付期間」に入れてもいいんですか?
いいえ、それはできません!

合算対象期間は受給資格期間に反映されますが、支給額には加算されないんです。

国民年金の受給額は『付加保険料』で上乗せできる

国民年金は保険料だけでなく「付加保険料」を上乗せして納めると、受給額を増やせます。

平成31年度の場合、保険料・付加保険料の月額は次のとおりです。

国民年金保険料・付加保険料(月額)
国民年金保険料 16,410円
付加保険料 400円
月額400円なら、そんなに負担にはならないですね。付加保険料を払うと、年金はどれだけ増えるんですか?
上乗せされる年金(付加年金額)の計算式は「200円×付加保険料納付月数」です。

たとえば付加保険料を30年間(360月)納めた場合は、老齢基礎年金が72,000円(ひと月あたり6,000円)上乗せされます。

付加保険料で国民年金(老齢基礎年金)が増える仕組み

それは助かるなぁ。
収入が安定しているうちに、年金を多めに積み立てておくことをオススメします。

ただし次に該当する人は、付加保険料の納付ができません。

付加保険料を支払えない人
・第2号被保険者(厚生年金の加入者)
・第3号被保険者(第2号被保険者に扶養される配偶者)
・保険料の未納分がある人
・保険料の免除制度を利用した人

また次のような注意点もあるので、確認しておきましょう。

  • 付加保険料を支払うと国民年金基金へ加入できない
  • 2年以上払わないと元が取れない

国民年金の付加保険料については、次の記事で解説しています。

保険料の免除・猶予による受給額の減額は『追納』で補おう

国民年金保険料の免除・猶予制度を利用した人は、10年以内であれば保険料を後払い(追納)できます。

保険料を追納するメリットは、次のとおりです。

国民年金保険料を追納するメリット
  • 年金受給額の減額分を補える
  • 社会保険料控除によって所得税・住民税が軽減される
年金を補えるだけでなく、節税もできるんですね!
はい。追納分も社会保険料控除の対象になるので、確定申告・年末調整を忘れず行ってくださいね。

ただし免除制度を利用したうえで未納分がある場合は、追納不可です。

『いつ受け取るか』で受給額が変わる!繰下げ受給・繰上げ受給とは

国民年金の受給は原則65歳からですが、受給開始年齢をずらせる制度もあります。それが「繰下げ受給」と「繰上げ受給」。

この2つの受給方法は、年金をもらい始める年齢だけでなく、受給額も違うんです。

繰下げ受給・繰上げ受給の違い
特徴
繰下げ受給 ・受給開始を70歳まで月単位で遅らせる
・年金の受給額が増える
繰上げ受給 ・受給開始を60歳まで月単位で早める
・年金の受給額が減る

国民年金の繰下げ受給・繰上げ受給の違い

繰下げ受給は受給額が増えて得ですね。でも繰上げ受給のほうが、受給期間が長くなる分得な気もするなぁ。
そうですね・・・長い目で見ると、繰上げ受給のほうが受給額が高くなる場合もあるでしょう。

でも受け取りが早いほど減額率は高くなってしまうので、受給期間が延びたところでお得とはいえないんです。

それぞれの受給方法や、増額・減額される仕組みについて解説します。

国民年金の受給額を増やせる!66~70歳の『繰下げ受給』とは

国民年金の受給額を増やしたいなら、「繰下げ受給」をしましょう。

「繰下げ受給」とは、国民年金の受給開始を遅らせること。本来年金は65歳から受け取り可能ですが、申請すれば66歳~70歳未満まで受給開始を遅らせることができます。

70歳になったら、年金が自動的に給付されるってことですか?
いいえ。年金の受け取り手続きが必要です。

繰下げ受給によってどれだけ年金額が増えるかは、次の表を参考にしてください。

繰下げ受給による増額率
繰下げ受給申請時の年齢 増額率
66歳0カ月~66歳11カ月 8.4%~16.1%
67歳0カ月~67歳11カ月 16.8%~24.5%
68歳0カ月~68歳11カ月 25.2%~32.9%
69歳0カ月~69歳11カ月 33.6%~41.3%
70歳0カ月~ 42.0%
※昭和16年4月2日以後に生まれた人の場合
受給開始時期が遅いほど、国民年金の増額率は増えていますね。

ちなみに繰下げた年金は、請求した月の翌月分から支払われます。

繰下げ受給で受給開始を遅らせるほど、もらえる年金は多くなる

ただし繰下げ受給ができるのは、次の条件をすべて満たした人のみです。

繰下げ受給の利用条件
  • 66歳以上70歳未満
  • 65歳に達した日※から66歳に達した日※までに、他年金を受ける権利が発生していない
※達した日=その年齢になる日(誕生日)の前日

「他年金」とは、主に次の年金のことです。

遺族年金/障害基礎年金/厚生年金保険・共済組合などの被用者年金(老齢・退職給付を除く)
繰下げ受給を申請後、これらの年金をもらえるようになった場合はどうなりますか?
66歳の誕生日以降に他年金の受給権が発生したら、すぐに年金の請求手続きをしてください。

その時点で増額率が固定され、次のいずれかを選択できます。

  • 65歳からの老齢年金(増額なし)をさかのぼって請求する
  • 増額された繰下げ支給の老齢年金を請求する
ただし65歳からの分もさかのぼって請求する場合は、必ず70歳到達月(70歳になる前日の月)までに請求してください。
なぜですか?
年金を受ける権利の時効は5年だからです。この月より後に請求すると、時効によって年金を受給できない部分が発生してしまうので注意しましょう。

国民年金の繰上げ受給による減額率【早見表付き】

国民年金は、繰上げ受給※をすると減額されます。

繰上げ受給とは

国民年金の受給開始を早めること。国民年金は原則65歳から受け取れますが、希望すれば60歳~65歳になるまでの間に受給を始められます。

現役引退が早い人などは、年金を早めに受給できると助かりますよね。でも年金額が減ってしまうのは残念だなぁ。
でも、年金の受け取りが早まるということは「年金の受給期間が長くなる」ということ。減額がなければ、誰でも「繰上げ受給したほうが絶対に得」という状況になってしまいますよ。

国民年金を繰上げした場合、減額率は次のように計算されます。年齢ごとの早見表も記載しておくので、参考にしてください。

国民年金を繰上げ受給した場合の減額率
0.5%×「繰上げ請求月」から「65歳到達月(65歳の誕生日前日が属する月)」の前月
減額率の早見表(60歳の場合)
請求時の年齢 減額率
60歳0カ月 30.0%
60歳1カ月 29.5%
60歳2カ月 29.0%
60歳3カ月 28.5%
60歳4カ月 28.0%
60歳5カ月 27.5%
60歳6カ月 27.0%
60歳7カ月 26.5%
60歳8カ月 26.0%
60歳9カ月 25.5%
60歳10カ月 25.0%
60歳11カ月 24.5%
減額率の早見表(61歳の場合)
請求時の年齢 減額率
61歳0カ月 24.0%
61歳1カ月 23.5%
61歳2カ月 23.0%
61歳3カ月 22.5%
61歳4カ月 22.0%
61歳5カ月 21.5%
61歳6カ月 21.0%
61歳7カ月 20.5%
61歳8カ月 20.0%
61歳9カ月 19.5%
61歳10カ月 19.0%
61歳11カ月 18.5%
減額率の早見表(62歳の場合)
請求時の年齢 減額率
62歳0カ月 18.0%
62歳1カ月 17.5%
62歳2カ月 17.0%
62歳3カ月 16.5%
62歳4カ月 16.0%
62歳5カ月 15.5%
62歳6カ月 15.0%
62歳7カ月 14.5%
62歳8カ月 14.0%
62歳9カ月 13.5%
62歳10カ月 13.0%
62歳11カ月 12.5%
減額率の早見表(63歳の場合)
請求時の年齢 減額率
63歳0カ月 12.0%
63歳1カ月 11.5%
63歳2カ月 11.0%
63歳3カ月 10.5%
63歳4カ月 10.0%
63歳5カ月 9.5%
63歳6カ月 9.0%
63歳7カ月 8.5%
63歳8カ月 8.0%
63歳9カ月 7.5%
63歳10カ月 7.0%
63歳11カ月 6.5%
減額率の早見表(64歳の場合)
請求時の年齢 減額率
64歳0カ月 6.0%
64歳1カ月 5.5%
64歳2カ月 5.0%
64歳3カ月 4.5%
64歳4カ月 4.0%
64歳5カ月 3.5%
64歳6カ月 3.0%
64歳7カ月 2.5%
64歳8カ月 2.0%
64歳9カ月 1.5%
64歳10カ月 1.0%
64歳11カ月 0.5%
繰下げ請求月が1カ月早まるごとに、減額率も0.5%上がる仕組みになっています。

国民年金の繰上げ受給による減額率の仕組み

計算方法は簡単なので、繰上げ受給する人は受給額を確認してみてください。

繰上げ受給には、「請求すると追納ができない」「寡婦年金が支給されない」などのデメリットもあります。

すぐに受給が必要な場合のみ、利用しましょう。

国民年金の受給額は少ない!貯蓄や老後の収入も用意しておくべき

ここまで国民年金の計算方法や、年金額が増える・減るケースについて説明してきました。

ところでダイプーさん、国民年金の受給額は、老後生活を送るのに十分な金額だと思いますか?それとも少なすぎると思いますか?
えーっと・・・満額受給できれば、とりあえず安心なのでは?
いいえ。国民年金は満額受給できたとしても、月額に換算すると65,000円ほどしかないんですよ。今後は年金額がもっと減るとも言われています。
現役時代の給料と比べると、かなり収入が減ってしまうんですね!
そうなんです。持ち家ではなくアパート・マンションに住む場合は、家賃や光熱費だけで年金を使い切ってしまう人もいるでしょう。

医療費や介護費用など、急に多額の出費が生じる可能性もありますよね。

今から頑張って老後資金の貯蓄をすれば、なんとかなりますか?
今は「100年生きる時代」と言われる時代。長生きすることで貯蓄が底をつく長生きリスクを考えると、限りある貯蓄と公的年金だけで老後を過ごすのは難しいと思います。

もちろん、貯蓄額や支出には個人差がありますが・・・。

それは困ったな・・・。オイラはどうすればいいんですか?
ほかにも老後の収入源を準備しておくことをオススメします。

公的年金と貯蓄のほかに、老後の収入を得られるのは次の方法です。

老後の収入の増やし方
勤労所得 ・アルバイト
・在宅ワーク
・独立開業
不労所得 不動産投資
個人向け国債
投資信託
個人年金保険

老後の収入の増やし方について、仕組みや注意点などは別記事「老後の収入を得る方法を紹介!貯蓄・公的年金と合わせれば安心」次を参考にしてください。

国民年金の受給額・老後の収入を増やそう

国民年金の受給額は、満額で月額65,008円(平成31年度)。

国民年金の受給額を多くする方法は、次の2つでしたね。

・付加保険料を納める
・66歳~70歳からの「繰下げ受給」をする

ただし国民年金と現役時代の貯蓄だけでは、老後資金が足りない可能性も高いです。

国民年金基金などで年金をさらに積み立てる・定期預金のしかたを見直してみるなど、老後資金の増やし方はさまざま。自分に合った方法を選びましょう。

※記載の情報は2019年4月現在のものです。

監修者メッセージ

繰上げや繰下げを上手に活用すると老後の資産を調節することができますが、「一度繰上げすると、取消したり変更したりできない」「繰下げすると、その間加給年金を受け取れない」などの注意点も数多くあります。

繰上げや繰下げを検討する際は、事前に年金事務所や専門家に相談してみることをオススメします。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(高橋淳也)
高橋 淳也
特定社会保険労務士、AFPの資格を保有。
日本年金機構、社労士法人勤務を経て開業。中小企業の労務管理に従事する一方、年金相談窓口や無料相談会などで年金相談を受けている。