厚生年金
厚生年金保険料の計算方法を紹介!必要な納付期間は10年

厚生年金保険料の計算方法を紹介!必要な納付期間は10年

会社などに勤務する人は、毎月の給料から厚生年金保険料が差し引かれていますよね。給与明細にも明記されているその金額は、どのように決められているのでしょうか。

厚生年金保険料は、標準報酬月額(※)に「保険料率」をかけた金額を、事業主と被保険者で半分ずつ負担しているのです。

(※):標準報酬月額とは

会社から被保険者へ支払われる毎月の報酬(給料など)の月額平均を、計算しやすいように等級で区分したもの。毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」に記載されています。

また厚生年金保険料は10年以上納める必要があります。納付期間が10年未満だと、老齢厚生年金をもらうことができないので注意してください。

この記事では、厚生年金保険料の具体的な計算方法について説明します。

厚生年金とは?メリット・デメリットを確認しよう

「厚生年金って何?」と聞かれたとき、なんとなくは理解していても、実際どのようなものなのか説明しづらいですよね。

厚生年金とは、厚生年金保険の適用事業所に勤務する人が「国民年金の上乗せ」という形で加入する公的年金のこと。

そのため厚生年金の保険料には国民年金保険料も含まれ、被保険者は国民年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。

厚生年金には「支給される年金の金額が高い」「遺族年金や障害年金の保障が手厚い」といったメリットがあります。

ただし配偶者の扶養になっていた人が自身の勤務先で厚生年金に加入した場合は、社会保険料が控除されるため、給与の毎月手取り金額が減少します。

人によっては、厚生年金への加入がデメリットになり得るケースも考えられるでしょう。

厚生年金の仕組みについては、「意外と知らない厚生年金の仕組みとは?保険料から支給額まで解説!」でさらに詳しく見ることができます。

厚生年金に入れるのって、どんな人だっけ?
厚生年金の加入資格があるのは、基本的に70歳未満の人です。ただし日雇いや有期雇用、事業所の場所が一定でないなど、被保険者と見なされない場合もあります。

その他の具体的な加入条件については「厚生年金の加入条件【パート・アルバイトも対象になる場合あり】」で解説しているので、読んでみてください。

では厚生年金の加入者が納める保険料は、どのように決まるのでしょうか。次の章で詳しく見ていきましょう。

厚生年金保険料はどのように計算されているのか?給料によって異なる

厚生年金保険料の金額は、毎月の給与明細や賞与の明細で確認可能です。

これらは「給与明細の金額そのもの」からではなく、「標準報酬月額」や「標準賞与額」といった、日本年金機構が定めた基準をもとに算出されています。

国民年金の場合は、基本的に月々の保険料が定額。「給料によって保険料が異なる」というのが厚生年金の特徴ともいえますね。

では厚生年金保険料の計算方法を、もう少し具体的に見ていきましょう。次の2種類にわけて説明します。

厚生年金保険料の計算
  1. 給料明細から控除されている保険料の計算
  2. ボーナスなどの賞与から差し引かれる保険料の計算

【1】給料明細から控除されている保険料の計算

給料明細から控除されている保険料は、次のような式で算出されています。

毎月の給与から控除される厚生年金保険料の計算
「標準報酬月額✕厚生年金保険料率÷2」

標準報酬月額は、計算するタイミングによって「入社時の報酬月額※」「4~6月の報酬月額平均」など、金額が異なります。

※基本給のほか、残業手当、通勤手当などの各手当を加えた1カ月の総支給額のこと(臨時支給や賞与などを除く)。

具体的な金額は、日本年金機構の公式ホームページにある「保険料額表」で調べられます。

自身の給料明細で控除されている保険料から、確認してください。

標準報酬月額がわかったら、その金額に「厚生年金保険料(平成29年9月以降18.300%)」をかけます。

また保険料は企業と被保険者(労働者)で折半して負担するため、さらに2で割りましょう。

ここまでの説明を踏まえて、標準報酬月額が190,000円の場合を例に計算してみますね。
給料明細から控除されている保険料の計算例
<例>標準報酬月額が190,000円の場合

標準報酬月額190,000円✕厚生年金保険料率(18.3%)÷2=17,385円

ボーナスなどの報奨金は、年4回以上であれば「標準報酬月額」に含まれます。しかし年3回以下の場合は「標準賞与額」に該当するため、別途に算出する必要があります。

次の章で、標準賞与額から差し引かれる保険料も計算してみましょう。

【2】標準賞与額(ボーナスなど)から差し引かれる厚生年金保険料の計算

賞与から支払う厚生年金保険料の場合も、計算方法はほとんど同じです。

賞与から差し引かれる保険料の計算方法
「標準賞与額✕厚生年金保険料率÷2」

保険料率に用いる「標準賞与額」は、次のように設定します。

標準賞与額の考え方
  1. 支給された賞与額※から、1,000円未満の金額を切り捨てる
  2. 上限は月間150万円なので、これを超えた場合は「150万円」とする
※3カ月を超える期間ごとに受け取るもの

では支給されたボーナスが210,500円の場合を例に、計算してみましょう。

賞与から差し引かれる保険料の計算例
<例>ボーナスが210,500円の場合(厚生年金基金の加入なし)

1、1,000円未満は切り捨てなので、標準賞与額は「210,000円」
2、210,000円 × 厚生年金保険料率(18.3%)=38,430
3、38,430円 ÷ 2=19,215円

賞与から差し引かれる厚生年金保険料は、19,215円

ちなみに標準報酬月額・標準賞与額の計算には食事や住宅、自社製品などの「現物支給」も含まれていて、厚生労働省が換算額を定めているんですよ。

厚生年金保険料はいつまで払うの?必要な納付期間は10年以上

厚生年金の保険料、「いくら払うか」だけでなく「いつまで払えばいいのか」も気になりますよね。

厚生年金を納めた人は「老齢厚生年金」を受給できます。

老齢厚生年金をもらうために必要な、保険料納付済期間は10年です。

「保険料納付済期間」には、国民年金の保険料納付済期間や厚生年金保険、共済組合などの加入期間も含まれます。

これまでは、保険料納付済期間が25年以上ないと老齢年金をもらうことができませんでした。しかし平成29年8月1日からは「10年以上あれば老齢年金の受給資格がある」と見なされるようになったのです。

ただし年金の受取額は、保険料を納付した期間に応じて決まります。

どういうこと?
40年間納付すれば満額を受け取ることができますが、たとえば10年間の給付では、受給額が4分の1程度となってしまうのです。

厚生年金は、加入条件を満たしていれば原則70歳になるまで加入できます。

厚生年金の加入条件については「厚生年金の加入条件【パート・アルバイトも対象になる場合あり】」を参考にしてください。

厚生年金の加入期間については次の記事で、さらに詳しく説明しています。

厚生年金の保険料は国民年金保険料に上乗せ!10年以上納付しよう

この記事では厚生年金保険料の計算方法や納付期間についてしました。

厚生年金保険料には、国民年金保険料も含まれています。年金も国民年金に上乗せされる形で支給されるので、老後に毎月もらえる金額が多くなり安心です。

また老齢厚生年金をもらうには、厚生年金の保険料を10年以上納める必要があることも覚えておきましょう。

厚生年金には加入条件があり、その条件を満たせば強制的に加入することになります。加入条件について詳しく紹介している記事も、ぜひ読んでみてくださいね。

※記載の情報は2018年4月現在のものです。

監修者メッセージ

あまり良いイメージがない厚生年金保険ですが、将来の年金のための保険料を会社が折半してくれるお得な制度です。

自営業やフリーランスの方にとっては羨ましいものです。

給与明細で手取り額が減っているのを見て落胆することもありますが、同等額を会社が負担していることを考えると愛社精神が向上するかもしれませんね。

プロフィール
年金カテゴリー記事監修(安達伸伍)
安達 伸伍
社会保険労務士。
ネットワークエンジニアとして活動後、都内社会保険労務士事務所に勤務。
現在は個人事務所(労務・年金相談安達事務所)として活動している。