土地を売る注意点をおさえて、トラブル回避!売却手順別に詳しく紹介
もしトラブルが発生すると、売買が取り消されるだけでなく、予想外の修繕費支払いが必要になったり、損害賠償請求を受けたりする可能性があります。
土地を売るときには、手順と注意点を自分でもしっかり把握しよう
慣れない土地売却は、つい業者に頼ってしまいがち。しかし売主が何も知らないままでは、適正に査定できなかったり、売却後に損害賠償責任が生じてしまったりするなどの、トラブルが起こることもあります。
しっかりと土地売却の手順をおさえ、それぞれの工程で何に気をつけるべきかを把握しておくことが大切です。
土地の売却は、大きく分けて次のような手順で進みます。
- 土地調査(土地価格の相場調査、測量など)
- 不動産会社の決定・契約(査定、媒介契約)
- 販売開始・交渉
- 締結(契約)・決済
- 引き渡し
不動産会社の決定は売主自らが行いますが、その他の工程は、自分で進めることも、一部やすべての工程を不動産会社などの専門家に依頼することもできます。また次に、手順ごとの注意点をまとめました。
土地を売る手順 | 注意点 |
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1.売る土地の調査 |
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2.不動産会社の決定・契約 |
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3.販売開始・交渉 |
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4.締結(契約)・決済 |
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5.引き渡し後 |
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【1.売る土地の調査】後のトラブル防止のために確認したいこと3点
まずは土地の価格相場の調査や測量などを行い、自分の売りたい土地がどんな土地か調べます。
売却の前に土地の調査をしっかりすることで、後々のトラブルの発生を防ぐことができるのです。
ここでは、次の3点に注意してください。
土地を売る前に、隣地との境界をしっかり確認し近隣トラブルを防ごう
土地の測量は、土地家屋調査士への依頼がスムーズです。費用がかかるため、たとえば境界を示す杭があるなど、境界がはっきりしている場合は行わないことも。
行う場合は、「確定測量」がトラブル防止には最適です。確定測量は、隣地の地主の方と立ち会い・合意のうえで書面に署名捺印をする測量。もし測量をしても合意してもらえない場合(現況測量)、隣人とのトラブル防止策としての効力は弱いでしょう。
土地の測量費用や測量をしないリスクについては、次の記事でも詳しく紹介していますので、確認してみてくださいね。
相続した土地は相続登記を忘れずに!登記は早めの手続きがオススメ
相続登記とは、いわゆる「不動産の名義変更」のこと。
土地を売却するには、「土地の名義が売主となっている」ことが必要です。
しかし相続登記には期限がないため、以前の名義のままになっていることがあります。
土地のローンが残っていると売れない!?残高はしっかり確認しよう
売却予定地のローンが残っていると、次のような可能性があります。
- 抵当権が抹消できず、土地売却ができない
- 土地の売却値がローン残高を下回る場合、不足分の出費が発生する
住宅ローンなどでお金を借りた際に、金融機関など債権者(=抵当権者)が、対象の不動産をその返済の担保とする権利のこと。
ローン未払いの場合、その不動産は競売により売却され、代金が優先的に抵当権者へ支払われてしまうため、買主は土地を得ることができません。
土地を売る前にローン完済が出来ない場合は、買主が土地代金を支払うと同時に、ローンを完済することも可能です。その場合、土地の売却値がローン残高を下回ると、不足分の出費が発生します。
【2.不動産会社の決定・契約】信頼できる会社と適した契約を結ぼう
土地売却を個人で行うことは可能です。ですが、民法などの法律やさまざまなルールがあり、買主・近隣住民とのトラブルも発生しやすいため、不動産会社などの専門家を介すのがオススメ。
信頼できる不動産会社を選択し、売りたい土地に合った契約をすることが大切です。
「土地売却に強い信頼できる業者」を選ぼう!高額な査定額に注意
- 土地売却に強いか
- 適正な査定額か
不動産会社にも、得意・不得意の分野があります。これは不動産会社のホームページや不動産ポータルサイトなどで調べることができるので、ぜひ土地売却に強い会社を選びましょう。
- 自分で土地の相場価格を調べてみる
- 複数の不動産会社に査定を依頼する
土地の相場価格を自分で調べることで、不動産会社が提示する査定額が高いか安いかの基準をつくることができます。
こちらも不動産ポータルサイトや国土交通省などのホームページなどから、いつでも調べることができます。別記事「不動産の相場を自分で調べたい!売却を始める前にできる4つの方法」でも詳しく紹介していますので、確認してみてください。
また、複数の不動産会社へ査定依頼をすることも大切です。
業者の中には、きちんと売却を手伝うつもりがないのに、契約だけ欲しくて高い査定額を提示する悪質なものもあります。
査定額=売却額でないため、高すぎる査定額を提示する業者には注意が必要です。
土地売却の査定で売り主が知っておきたいポイントに関しては、別記事「不動産売却の査定方法を紹介!売主が知っておきたい3つのポイント」でも詳しく紹介しています。
ちなみに不動産会社の信頼性に、大手や中小といった不動産会社の企業規模は関係しません。メリット・デメリットを把握し、慎重に選びましょう。
不動産会社の選び方については、別記事「かしこい不動産屋の選び方!売却前に知りたい3つの判断ポイント」でも詳しく紹介していますので、確認してみてくださいね。
不動産会社と契約する時の注意点!仲介の場合は適した媒介契約を選択
不動産会社の候補が決まって査定額が大体分かったら、その額によって不動産会社に「仲介してもらうか」「直接買い取りしてもらうか」を選びます。
そうでなければ、地元の不動産会社に仲介してもらうのがオススメです。
仲介で進めるか買取りにするかは、現金化する必要性・緊急性で判断します。判断が難しい場合、不動産会社に相談してみてもよいでしょう。
ただしそれぞれ、次のような点に注意してください。
仲介 |
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直接買取 |
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媒介契約によって「仲介サービスの内容」「仲介手数料」などが明確になり、売主と不動産会社の仲介トラブルを未然に防ぐことができます。
媒介契約は「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類。次の点が異なります。
- 複数社と同時に契約できるかどうか
- レインズの登録義務があるかどうか
- 販売活動の報告義務があるかどうか
具体的な特徴は、それぞれ次のとおり。
専属専任媒介 | 専任媒介 | 一般媒介 | |
---|---|---|---|
契約できる不動産会社 | 1社のみ | 1社のみ | 複数可 |
レインズの登録義務 | 5日以内 | 7日以内 | 任意 |
販売活動の報告義務 | 週1回以上 | 2週に1回以上 | 任意 |
レインズに登録された物件情報は全国すべての不動産会社に共有されるため、広範囲で買主を探すことができます。
オススメの媒介契約は、レインズへの登録や販売活動の報告義務がきちんと決められている「専属専任媒介」または「専任媒介」。ただこれらには、不動産会社を1社に絞らなければならないという、扱いづらい点もあります。
まずは専属専任媒介や専任媒介で3ヶ月程度様子を見て、買い手が見つからなければ、複数の不動産会社に依頼ができる一般媒介を選び直してもよいでしょう。
媒介契約については、次の記事でも詳しく紹介しています。
【3.土地の販売開始・交渉】焦って値引きしすぎないよう注意!
土地の売却が始まると、買主候補とのやりとりも始まります。ここでは、次の点に注意しましょう。
- 値引きの境界点を決めておくこと
買主はできるかぎり、安く土地を買いたいと考えるでしょう。販売中に売主は「この値引き交渉を断ったら買ってもらえないかもしれない・・・」といった、焦りや不安を感じることがあります。そのため値引きの境界点を決めておくことも、大切なポイントです。
値引きをしすぎると、売値が土地の適正価格から大幅に下がったり、土地のローンの不足金を自費で補ったりすることに繋がります。
土地のローンが残っている場合は、残高を境界点にしてもよいでしょう。
【4.締結(契約)・決済】売買契約書は自分でもしっかり内容確認を
土地の買い手が見つかると、誰もが安心しますよね。しかし、引き続き注意は必要です。
締結(契約)内容に不備や漏れがあると、売買が取り消されるだけでなく、最悪の場合、損害賠償を請求されることにもなりかねません。
締結(契約)時・決済時における注意点は、次のとおり。
- 契約書の内容に不足がないか確認すること
- 抵当権抹消、所有権移転を支払いと同時に済ますこと
だから契約書は業者に任せすぎず、内容に漏れがないよう自分でも確認することが大切ですよ。
契約書では、なかでも「特約」に注意しましょう。
その中でも「融資利用特約」や「瑕疵(かし)担保責任」については、きちんと明記しておくことがオススメです。
融資(ローン)の承認が期日までに得られない場合に、買主に手付金など一切の支払いを無しで契約解除することができる権利を与えるための特約。ローン特約ともいう。
ローンは土地の売買契約書を交わしてからでないと、申し込みできません。融資利用特約をつけることで、買主は安心して契約をすることができます。
契約時に買主が気づかなかった欠陥(瑕疵)に対し、売主が責任を負う期間と範囲を定めたもの。民法では「買主は瑕疵を知ったときから1年間、売主に責任追及ができる」としています。
瑕疵担保責任は売主にとってとても重いルールなので、特約をつけて「担保責任の免除」や「担保期間の短縮」をすることが一般的です。
これらの特約を適用させる場合は、契約書に明記しなければいけません。
このように契約書は、後々発生するトラブルを避けるためにとても重要なのです。
どちらの手続きも、売りたい土地を管轄する法務局に申請をします。インターネットで申請することもできますので、事前に申請方法を調べておいてもよいでしょう。不明点は、各法務局へ問い合わせてみてください。
【5.土地の引き渡し後】売却益が出たら、忘れず確定申告をしよう
土地の売却益が出た場合、譲渡による税金(所得税・住民税)を支払う可能性があります。
売却の翌年2月16日~3月15日(その年の曜日によって変動あり)に、確定申告を必ず行いましょう。確定申告は、管轄の税務署またはインターネットで書類作成・申請できます。インターネットでの申請には、マイナンバーカードが必要のため、通知カードしかない場合は前もって発行しておきましょう。
不動産売却後におこなう確定申告について、次の記事で詳しく解説しています。
税額は、土地の価格や売却費用などによりますが、売却益の約20%(保有期間5年以下の場合は約40%)の金額です。
ちなみに相続した土地を売る場合、相続発生から3年10ヶ月以内の売却であれば、支払った相続税の一部を売却益から差し引くことができます。
譲渡による税金を、更に安くすることができるのです。詳しくは、最寄りの税務署に確認してみてください。
不動産売却にかかる税金については、次の記事でも詳しく解説しています。
土地の売却は慎重に!事前確認や十分な説明が、トラブルを防ぎます
しかし土地の売買では高額なお金が動くため、小さな見落としが大きなトラブルにつながる可能性があります。できるかぎり、慎重に進める必要があるのです。
大切なのは、「土地の適正価格や売買契約書の内容などを、自分でしっかり確認すること」と、「買主に十分な説明をして、両者納得の上で売買を進めること」。
もちろん専門知識が必要な調査や手続き、実際の販売などは、専門家に依頼がオススメ。しかし業者に頼り切って売主が何も知らないままでは、トラブルが起きても対応しきれない可能性があります。焦らず慎重に、常に確認を重ねながら進めていきましょう。
不動産売却で、何の問題も無く買主さんに引渡すことは、売主さんの大きな責任です。
媒介は宅建業者が行いますが、業者任せという姿勢はよくありません。本文に書いてあるように、売主さんも積極的にご自分の財産の詳細や、引渡した後にすべきことについて、事前に知っておくことは大事なことだと思います。
中古住宅・中古アパートの媒介業務・調査業務に従事し、現在は札幌市内の宅建業者にて専任の取引士を務めている。
2006年より、住宅に関する無料の相談サイトを開設し、住宅リフォームや中古住宅購入の相談に応じている。